36「戦士達の奇跡」

 ゾラキは服の切れ目の弾丸を見る。

 「逃げてもいいんだぞ。今度こそ、死ぬかもしれないしな」

 「それも良いかもしれませんね。ですが、私はまだ、死ぬ訳にはいかないんです」

 男はナイフを振りかざす。

 「へえ、何か約束でも?」

 ゾラキはそれを避ける。

 「ええ」

 横腹を蹴る。

 ナイフを持つ腕を掴む。

 ゾンビは男を投げようとする。

 しかし、男はナイフを振ろうとする。

 そして男は腹を蹴る。

 それは小さな力だった。

 だが、ゾラキは刹那、力を抜いた。

 その間に、ナイフを振るう。

 ナイフはゾラキの身体に刺らなかった。

 代わりに銃声がした。

 ナイフの先端が勢いよく、実包の雷管に当たった。

 そして弾丸が発射された。

 男はナイフを離し、手を抑える。

 ゾラキは腹を抑えながらナイフを拾う。

 そして男の太ももに突き刺した。

 男はその場に倒れ込む。

 「何だ?何が起きた?」

 震える声を抑えながら微かに言う。

 ゾラキはナイフを捨て、ドアを開ける。


 ハンセインが片隅に消えた後、マルコとウェブリーは見合わす。

 「1ついいか?」

 「ええ」

 「ボスの本当の目的は何だ?」

 「それはボスにしか分かりません」

 「それでいいのか?自分達が何をやっているか知らないのに」

 「構いません。私は命令に従うのみ。行きますよ」

 ウェブリーとマルコは拳を構える。

 マルコは一気に距離を詰める。

 足払い。

 避けられる。

 マルコの胸ぐらを掴む。

 マルコは投げられ、中を舞い、床に叩きつけられる。

 すぐさま起き上がるが、顔面に蹴りを喰らう。

 足で腹を押さえつける。

 「私は他の奴とは違います」

 ウェブリーはそう言って、ハンドガンを取り出す。

 「それはボスの命令か?」

 しかし、ウェブリーは何も言わず、引き金を引こうとする。

 銃声が鳴った。

 ウェブリーとマルコは銃声の鳴った方を向く。

 「ゾラキ!」

 ゾラキがウェブリーに向かって走る。

 ウェブリーはゾラキに銃を向ける。

 だが、間に合わなかった。

 ゾラキはウェブリーの腹めがけ、飛び蹴りをする。

 「ゾラキ!終わったのか?」

 「ええ。死なないでくださいよ。酒を飲むんでしょう」

 「そういやそんな約束してたな。覚えてねえけど」

 ウェブリーは立ち上がる。

 銃はその手に無い。

 「どうやらここまでか」

 ウェブリーはマルコ達とは逆方向に走り出す。

 その先にはガラス。

 ウェブリーはガラスを割り、飛び降りる。

 「何だ!?」

 ゾラキとマルコは駆け寄り、下を覗く。

 そこにウェブリーは居なかった。


 扉が開く音がした。

 「終わったか」

 そこにはカービンが居た。

 「ああ、だがな」

 「ウェブリーが居ないな」

 「いきなりここから飛び降りて、消えました」

 「俺の相手から色々聞いた。マイケルが来たら話す」

 扉が開く音がした。

 ベレッタだ。

 「マイケルはまだかしら?」

 「もうすぐ終わるだろう」

 マルコ達は両開きの扉の方を向く。

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