31「仲間の屍を超えてゆけ」

 マイケルは森から出てきた軍人を見る。

 「お前は、ウェブリー!」

 「ウェブリー?知っているのか?」

 「ああ、チームα所属、ウェブリー・テック。何故ここに居る!?ボスはどこだ!?」

 テックは大声で叫ぶ。

 「ボスは港の方にいる!マイケル・パイソン!自由の決心が着いたら来い!」

 テックはそう言うと、ロボットと共に森の奥へと消えてった。

 

 マイケル達はその場に佇む。

 やがて、ウィルが口を開いた。

 「裏切ったな…」

 そしてマイケルに掴みかかった。

 「裏切ったな!」

 マイケルはその場に倒れ、ウィルが馬乗りになる。

 「おい!」

 だが、マルコがウィルの肩を掴んで引き剥がした。

 ウィルは地面に倒れる。

 「やっぱり、信用するのが間違いだった」

 「聞いてくれ…」

 マイケルは立ち上がりそう言うも、ウィルは聞き入れない。

 「うちの奴らもそんなに弱くない、だけど流石にここまでやられるのは心が折れる」

 「ウィルさん、まだ私がいます。この政府に疑いを持つ人がたくさんいます。もう一度、人を集めましょう」

 ウィルの部下の男が倒れているウィルに言った。

 「ウィル、言い訳のように聞こえるが。今俺達も対立している。理由は分からんが、俺達はボスを探さなければならない」

 ウィルは黙ったままでいた。

 

 静寂の中、車のエンジン音が近づいて来る。

 そしてバンが数台、マイケル達の前に停まり、バンの中から男達が出てきた。

 「何だ、死体蹴りにでも来たのか?」

 ウィルは起き上がり、男達を睨みつける。

 男達はその光景とウィルに圧倒されていたが、1人が口を開いた。

 「ウィルさん。あなたが正しかった。俺達は間違っていたんだ」

 男達は持っていた銃を地面に置く。

 「お前ら、何故今更来た。スタイヤーが殺され、どうにもできなくなったから来たのか?だったらそこの軍人にでも拾われ、ヘリでアメリカにでも、ヨーロッパにでも行ってこい」

 「もちろんそうやって行った奴もいる。だが、ここにいるやつは違う。俺らは政府を倒し、独立をしたいんだ!」

 ウィルは立ち上がる。

 「お前ら、初めからやり直しだ!この死体を忘れるな!」

 男達は拳を上げ、雄叫びをあげる。

 

 マイケル達はその場を立ち去る。

 だがただ1人、ハンセインはウィルに近づいた。

 彼はウィルに紙切れを渡す。

 「僕も実は今の政府に疑いの心を持っています」

 ウィルはその紙切れを手に取り、眺める。

 「メールアドレスか」

 「ええ、重要な情報を手に入れました。後でご連絡しましょう」

 そう言って立ち去ろうとした。

 「待ってくれ」

 しかし、ウィルはハンセインを止めた。

 「JlUwM(ジュルーム)に入らないか?」

 「いえ、私は『世界危機』を疑っています。そして、今の世界に不安を抱いているだけです。国を創るのには興味はないです。それでは」

 ハンセインはマイケル達を追い、その場を立ち去った。


 マイケル達は、既にバンに乗っていた。

 マイケルはハンセインが乗り、扉が閉じられるのを確認した。

 そしてアクセルを踏み、発進させた。

 「ハンセイン、何をしていた」

 「いえ、少し、写真を撮っていました」

 「気を付けろ。奴らが何かしでかしたらお前もただじゃ済まないかもしれない」

 「わかってますよ。ところで、これからはやはり港町に?」

 「勿論だ。俺達はボスの思惑を確かめなければいけない。ハンセインはどうする?」

 「僕も行きますよ」 

 「『自由』、についてはいいんでしょうか?」

 ゾラキは窓の外を眺めながら言った。

 「大丈夫だ。俺は『自由』の意味を知った」

 バンを荒野を直線に走る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る