30「ザ・ラスト・オブ・ジュルーム」

 しばらく走り、車を停めて降りる。

 撃たれた男はその場に横になった。

 「大丈夫か!?」

 「1発だけだ。まだ死なない」

 マイケルはウィルの肩に手を置き、そして言う。

 「アンとこいつはこっちで回収しよう。お前等、テロ行為はしたことあるか?」

 ウィルは肩の上の手を退かす。

 「まだない、だが待て。お前らを信用することはできない」 

 「いや、テロ行為をしていないなら。捕まることは無いし、拠点としている場所も割れることはない」

 「本当か?嘘は言ってないな」

 マイケルは「ああ」と言うと、すぐさまヘリを呼んだ。

 「あなた達、私達を信用しすぎじゃないかしら」

 「なに、俺たちは政府を恨んでいるわけではない。自分たちの国を作りたいんだ」

 「国、ですか。どのような?」

 「民主共産主義国家だ。雇用を作り出し、不景気を作らない国家を作る」

 「なるほどね」

 程なくしてマイケルたちの上空にヘリがやってきた。

 マイケルはヘリの扉を開ける。

 「あまり無理するな」

 アンは撃たれた男を脇から腕を回し、ゾラキは足を持ち、ヘリに乗せる。

 「それじゃあ、また会うことはないと願うよ」

 「会うときはパンデミックのときだからな」

 カービンは扉を閉める。

 「あの人、さっきまで松葉杖ついてたはずだけど…」

 ハンセインは小声で言った。

 横でウィルの部下が頷いていた。

 

 ヘリが小さくなったくらい。

 ウィルに無線か繋がる。

 「どうした?」

 「何者かが攻めてきています!」

 その男の声の裏で、銃声が鳴り響いていた。

 「敵を確認しろ!何人だ、どうゆう装備をしている」

 「えっと、な、なんだあれは!?」

 「なんだ!?」

 「ロボットです。マシンガンを載せたロボッ…うがぁ!」

 「おい!おい!」

 その後、機械の向こう側からその男の声は聞こえてこなかった。 

 「なんだ…」

 ウィルは無線機をしまうと、車に乗った。

 マイケル達も車に乗る。

 

 車を急発進させる。

 「おい、俺らの拠点を知らせることはないな?」

 「それはないが、その拠点は使わないほうが良いだろう」

 車が揺れる。

 「おい、何故社会主義国家を作ろうとしているんだ?」

 「決まってる。格差、不景気をなくすためだ」

 「1つ聞いていいか?」

 「なんだ?」

 「お前にとって、自由とはなんだ」

 ウィルはしばらく黙ってから答えた。

 「責任だ」

 「責任?」

 「そうだ。自由には責任。権利には義務が生じる。自由な経済は市場が活性化するが、格差を生む。参政権を有する人は政治に参加しなくてはいけない。俺らがいる社会は一見自由に見えて不自由だ」

 「社会主義は不自由だぞ」

 「人々は自由が欲しいんじゃない。安全と安定が欲しいんだ。フランス革命、アメリカ独立戦争は自由を求めた革命に思われた、だけど違う。フランスは財政難、アメリカは植民地であるがゆえに課税。国は安定していなかったんだ。その最たる例がロシア革命だ」

 「なるほど、これ以上は聞かない。俺は必ず政府の味方というわけじゃない。安心しろ」

 車はまっすぐ進んで行った。

 

 塀の中、建物が数軒建っている中央に、車を止めた。

 「何だこれは」

 ウィルは車を降りる。

 地面には多くの死体。

 その多くが体に穴が空いていた。

 強力な銃で撃ち抜かれた証拠だ。

 ウィルはその場に座り込む。

「終わりだ。全部」

 マイケル達も車を降りて、その様子を見る。

 そんな中、建物の中から4足歩行のロボットが出てくる。

 背中にはガトリング砲、シルバーの機体には傷がいくつかあった。

 そして森の奥から、マイケル達と同じような装備をした1人の男が出てきた。

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