第4節「街郊外」

29「半熟非英雄」

 ウィルは両手を上げて言う。

 「お前らも手を上げろ。軍の連中だ」

 「ここに薬取りに来た、と言っていたな」

 マイケルは銃口を向けながら言う。

 「ああ。仲間が病気になってな」

 「見たら判ると思うが、俺等は軍の者だ。患者を見せてみろ」

 ウィルは黙ったままだった。

 「おい、どうした」

 しばらくの後、口を開いた。

 「1つ聞いていいか?」

 「何だ?」

 「俺らを殺すことはないか?」

 「お前等が敵意を見せない限りは無い」

 ウィルはその言葉を聞くと、安心したように息を吐いた。

 「申し訳ないが、お前らには嘘をついていた。今、患者を持ってくる」

 ウィルがそう言うと、横に居た2人の男がすぐさま駆け出した。

 数分もしない内に戻ってきた。

 そこに新しく来たのは松葉杖をついたアンだった。

 「アン!?」

 「ああ、あんた達か。まさかあたしがこんなことになるとはね」

 「何があったんですか?なんでこんな所に」

 「それは俺が話そう」

 ウィルはそのまま話し始めた。

 「昨日のことだ。俺達は海に居た。勿論船の上だ。そしたらヘリが陸の方から来てな。それからそのヘリにロケランが飛んで来て、ヘリに当たった。ヘリは落ちて、それから俺らは海上に落ちたアンを回収した。操縦者はもう駄目だった。ここに来たのは一応検査だ」

 「何者だ、お前さん達」

 マルコが聞くが、その時、ガラスを割りってゾンビが大量に侵入した。

 「クソッ、とりあえずここを出るぞ」

 マイケル達は銃を拾い、すぐさまその場を離れる。

 「どこか安全な場所はあるか?」

 「街の郊外に行けばゾンビも追ってこないだろう」

 外に出た。

 「それでいい」

 「よし。あれに乗ろう」

 ウィルは近くに停まっているミニバスを指差す。

 そしてすぐさまそのミニバスに乗り込む。

 キーは挿しっぱなしで燃料も十分にあった。

 ウィルはエンジンをかけ、アクセルを踏む。

 車が走り出すと、ハンセインと男2人は息を整えた。

 「話の続きをしよう。アンは判ると思うが、俺たちはアンとは敵対していたJlUwMジュルームという組織だ」

 「敵対…スタイヤーとか言った奴かしら?」

 ウィルはハンドルを強くを握り、語り始める。

 「そうだ。あいつはその手腕で一番上まで上り詰めたんだ。だが、あいつは俺らの意思とは違った。あいつはただ財宝が欲しかったんだ!革命なんてあいつには関係無かったんだ!」

 ウィルはハンドルのホーンボタンを勢いよく叩く。

 クラクションが鳴り響いた。

 「革命だと?」

 「そうだ。その話は後でしよう。スタイヤーは俺らと、そしてアンと対立した。だがあいつは、戦いに破れた。ありがとう。今はアンとは敵対関係じゃない」

 街を外れた。


 マイケルがふとミラーを見ると、後から2、3台車が付いて来ていた。

 「おい、来てるぞ!」

 「仲間だろう。気にすることはない」

 マルコも後ろを向き、車を確認する。

 すると、人が窓から体を出し、ハンドガンを構えた。

 「おい、銃向けてるぞ」

 車に弾が当たり、金属音が鳴る。

 「撃ってきやがった!」

 カービンは体を出し、銃を構え、撃っていく。

 カービンもその反対から。

 リアガラスからウィルの部下の男も撃つ。

 だが、リアガラスが割れ、そのまま弾丸が男に当たる。

 男は傷跡を抑え、シートにもたれ掛かる。

 カービンが撃ち、1台の車をパンクさせる。

 そして車はバランスを失い、横転した。

 車が1台、ウィル達の横に来る。

 マイケルはすぐさま的確に、相手運転手の頭を撃ち抜いた。

 運転手を失った車はひとまず助手席に居る男が操作をした。

 しかし真っ直ぐ走らず、木に激突してしまった。

 あとの1台も、車内に生きた人が居なくなった。

 マイケル達はそのまま走り続ける。

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