第3節「病院」

25「街へ。」

 次の日、日はまだ出ていない。

 しかし辺りは既に明るかった。

 マイケル達は車に乗り込もうとしていた。

 バンは昨日の戦いでフロントガラス以外のガラスは割れていたが、それ以外は特に損傷はなかった。

 『もう行くのか?』

 予め教えていた時間に、エルドとグレスがやって来た。

 「マルコ、ゴーグル貸してやれ」

 「あいよ」

 マルコはゴーグルを外し、エルドに渡す。

 エルドがゴーグルを着けると、マイケルは話し始めた。

 「1日だけだったが、世話になった」

 エルドが翻訳し、グレスに伝える。

 『いいえ、こちらこそ。あの怪物を倒してくれたことを感謝します』

 『マイケル、自分のやるべきことをしろ。それを間違えるな』

 「分かってる。だが、1つ聞きたい」

 『何だ?』

 「お前にとって、自由とは何だ?」

 エルドはしばらく考える。

 『己が己でいることだ』

 「自分が自分でいる、か、ありがとう」

 マイケルはそう言って、車に乗る。

 『行くのか?』

 「ああ、それじゃあな」

 『達者でな』

 マルコは、エルドからゴーグルを渡され、車に乗る。

 エンジンをかけ、荒野を教えてもらった方向に進む。

 日は出ていたが、清々しいものではなかった。

 車に泥が跳ねる。

 


 村が遠くなり、次第に見えなくなる。

 そして街が見えてくる。

 「ひとまず、ハンセインが言った研究所に行くぞ。どこにある?」

 「それが分かれば楽なんですが」

 一同は言葉を失った。

 「分からないのか?」

 「大体南の方ということ以外分からない」

 「後は探すしかなさそうですね」

 「とりあえず、南に行こう」

 土の道だったのは、もう既に舗装された道になっていた。


 マイケル達は街に入る。

 「ゾンビの数が少ないわね」

 「他の部隊がやってくれたんだろう。今回は広いからな」

 「そう言っても、まだまだ居ますね」

 「それは仕方ない」

 マイケルはゾンビを轢きながら進む。

 フロントガラスに付着した血をワイパーが落としていく。

 

 街の南の方に着いた。

 「さて、どうする。何か、建物の特徴とかあるのか?」

 マイケルは適当に車を走らせる。

 「とりあえず病院ですかね。丁度この先なんで」

 ハンセインは手帳を確認して答えた。

 すぐににそれらしき建物が見える。

 「行くぞ。準備はいいな」

 「ああ、いつでも良い」

 ロータリーに停まっている車の間をすり抜けながら進む。

 マイケル達はドア前に車を停め、素早く病院に入る。

 

 中にはやはりゾンビが多い。

 白い床や壁にも血が飛び散っていた。

 マイケルは壁に掛けてある地図を見る。

 血で読めない部分があるが、何処にも研究室らしきものはない。

 「ハンセイン。本当にここで良いのか?」

 「分かりません。もしかしたらここかもしれないし、違う場所かもしれない」

 「それじゃあ―」

 「ただ、病院であることが多いんです。そうゆうのは」

 マイケルはもう1度地図を見る。

 「だが、ここにはないようだな」

 「いえ、ここにはあります」

 ハンセインは手帳から四つ折りになっている紙を取り出す。

 マイケルはそれを受け取り、広げる。

 その紙には、この病院の地図が描かれていた。

 だが、壁に掛けられている地図とは少し違う。

 マイケルはそこを指差す。

 「ここにあるな、研究室が。従業員用か」

 「そうです。行きましょう。研究室はこの病院の最上階にあります」

 マイケルは地図をポケットに入れる。

 「終わったぞ。聞いていたと思うが」

 ショットガンを構えるカービン達に言う。

 「行くぞ」

 マイケル達はその場を離れ、すぐに移動する。

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