12「有るかなハート」

 5人の男達はマイケル達を見ても動じなかった。

 3人の女は目が虚ろで、動く気力も無いようだった。

 『これは酷え…』

 エルドが呟く。

 「こいつら軍か」

 「どうする?こいつら殺して銃でも奪うか?」

 「止めとけ、お前さん方が怪我するだけだ」

 男達はそれでも動じないがその内の1人だけは違った。

 「助けてくれ!もうこんな事をするのは懲り懲りだ!」

 気の小さそうな若者はマイケルに駆け寄った。

 「おめえ、何言ってんだ!俺らとここに居ただけで同罪なんだよ!」

 「マイケルさん、どうするんですか?」

 マイケルは拳を上げようとも、銃を構えようともしない。

 「ハンセイン、こいつ見張っとけ」

 ハンセインはその男性の近くに移動する。

 「俺等の銃が欲しかったら来い。その時は容赦はしない」

 マイケルは男達を睨んで言う。

 「構わねえ、殺ってやれ!」

 『おめえらは生かしちゃおけねえ。マイケル、俺がやる』

 「…分かった」

 男達エルドに向かって行った。

 

 男はエルドに殴り掛かるが、エルドは拳を棒で突く。

 そして続けて棒を上から振り下ろす。

 横から殴り掛かってくるが、溝落ちに突く。

 反対からも蹴りかかられるが、同じように溝落ちに突きをする。

 棒を振り回し、男達の顔面に当てる。

 そして倒れた男達の顔を棒で思いっきり殴った。

 

 あっという間に3人が倒れていた。

 気絶していない1人は急に正気を取り戻した。

 「や、止めてくれ、すまない。殺さないでくれ」

 エルドは槍を振り上げる。

 振り下ろそうとするが、マイケルがそれを止めた。

 『マイケル、何してる?』

 「俺等は生存者を救助しろと言われているだけだ」

 『そうか。それは己が殺して良いっていうことだな』

 エルドは棒で思いっきり男を殴る。

 男は気絶した。

 「駄目だ。お前は俺等と動いている。こっちの指示には従ってもらう」

 マイケルは端末でヘリを呼ぶ。

 『これを見逃せと?』

 「ああそうだ」

 『てめえ!』

 エルドはマイケルの胸倉を掴む。

 「落ち着いて、2人とも。争っていても仕方ないわ。良い?エルド、彼等はちゃんと後で裁判に架けられるわ」

 ベレッタは駆け寄り、2人を離した。

 「それに、彼は昔からそう教育されている」

 『そんなことは無いだろ!』

 「本当だ。俺に人を愛するという感情は無い。仕事に私情は持ち込まず、与えられた任務のみをこなす。そう教えられた」

 『んじゃあ、マイケル以外は?』

 「仕事に私情は出来るだけ持ち込まないようにと言われているだけよ」

 『自由は無いのか?』

 「これが俺達の自由だ」

 エルドはマイケル達から離れた。

 

 マイケルは女性に声をかける。

 「救助に来た。ヘリが到着次第乗ってもらう。安心しろ、奴らとヘリは別だ。ただ1人、やりたくはなかったと言う男が居た、そいつはお前らと一緒だ。分かったな」

 女性は頷く。

 「何か服を持ってこようかしら?」

 ベレッタの問に対し、女性は床を指差した。

 見ると、そこにはおそらく女性達が着ていたであろう服が散乱していた。

 ベレッタはそれを持ってきて着させる。

 だが、変わらずぐったりとしている。

 

 エルドは座っている男性に聞く。

 『おめえは本当にやりたくなかったんのか?』

 「え?」

 「本当にこんな事をしたくなかったのかってよ」

 「ああ、そうだ。でもそうしなきゃ俺は殺されたんだ。あいつ等か、ゾンビに。俺がした事は確かに悪い事だ。だけど、俺は生きたいんだ」

 『それは本当だな』

 「本当だ、信じてくれ」

 エルドはその場を離れた。

 

 2台のヘリが到着した。

 1人の男性を乗せる。

 3人の女性を無理矢理でも立ち上がらせ、ヘリに乗せる。

 扉を閉めると、ヘリは飛んでいった。

 もう1つのヘリには男3人を入れ、扉を閉める。

 ヘリは飛び立って行った。

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