3「タイタンチェイス」

 着いた場所はレンガのただの家だった。

 だが、ドアや窓が表から塞がれている。

 「これは?」

 「男が暴れているので、私達が…」

 「はぁ…斧か何かあるか?」

 男性は、すぐさま斧を持ってきた。

 マイケルはそれを手に取ると、ドアを抑えている木材を壊す。

 斧を投げ捨てると、銃を構え、ドアを思い切り開けた。

 

 そこには男が1人居た。

 ジーパンに薄汚れた灰色のTシャツを着た黒人だ。

 男は目を見開き、狂った様に話す。

 「人か?ゾンビか?」

 「人だ」

 マイケルは男とは対照的に、落ち着いて話す。

 「あの日と同じだ。15年前と。地獄だ、地獄の再来だ!」

 「マルコ、カービン、どっちがやるか?」

 「俺がやる」

 カービンは手首を回し、マイケルを後ろに下げた。

 「皆死ぬ。俺も、お前も、俺が殺してやる!」

 男はそう言いながらカービンにパンチをした。

 だがカービンは、男を一瞬の内に床に投げ落とし、顔面にパンチをした。

 男はもう1度立ち上がり、今度は近くにある物を投げた。

 ガラスのコップ、ビン、服―

 投げられた物を手で払う。

 しかし、男は服を投げると、もう1度カービンに殴りかかった。

 カービンは、今度はそれを自分の後ろに投げた。

 「成長したな俺達は、良い意味でも悪い意味でも」

 そしてそのまま腕を捻り、脱臼させた。

 「…ベレッタ」

 マイケルは足元を押さえた。

 ベレッタはカービンが脱臼させた腕に応急手当をした。

 外れた腕を無理矢理戻すという方法だ。

 

 マイケルは端末でヘリを呼んだ。

 男を立たせ、外へと連れて行く。

 「んじゃ、あんたらはこの地とは、しばらくおさらばだろう。やり残したことはあるか?」

 「いや、大丈夫です。早く連れて行ってください」

 しばらくしてさっきとは別のヘリがやって来た。

 大きめの、運搬用のヘリだ。

 既に何人か人が乗っている。

 ヘリは男性達を乗せると、すぐさま飛び立って行った。

 

 マイケルはアマンダに無線を繋げる。

 「ただ今最初の町での作業は終わった」

 「ご苦労様。それじゃあ次は西にある民族集落ね。いってらー」

 「…了解」

 無線を切る。

 「全く、軽く言ってくれる。乗れ、行くぞ」

 4人は車に乗り、町を出て西に向かった。

 

 それから少したった頃だろう。

 サバンナの道を走っていた。

 アカシヤの木が少し生えている。

 マイケル達は怪物に追われていた。

 3メートルぐらいある、人形の怪物だ。

 皮膚は異様に白く、赤黒い斑点がまばらにある。

 手には指が無く、ただ丸いだけだった。

 「マイケル!もっと飛ばせ!」

 「これ以上は無理だ!カービン、アマンダに無線!」

 「分かった」

 マルコは無線を繋げる。

 「アマンダ、こちらカービン」

 「はいはーい、どうやら大変なようね」

 「3メートルある人形の怪物に追われている」

 「上手くうなじ狙えない?」

 「無理を言わないでくれ。どう逃げたらいい?」

 アマンダのそれまでの口調が一変、真面目なものになった。

 「川を目指してみて」

 「川?何故だ?」

 アマンダは一言、「勘」とだけ言い、無線を切った。

 「何だって?」

 「川を目指せだとよ」

 「分かった。マルコ!ベレッタ!足を撃て!カービン!このまま行けば川のはずだよな!」

 「そうだ!」

 マルコとベレッタはアサルトライフルで怪物の足を撃ち始めた。

 だが、効いている様子はあまり無かった。

 

 川に近づいてきた。

 谷のようになっており、川は底をなだらかに流れている。

 橋を目指し、その川に沿って走る。

 「あったぞ!」

 木造の、ボロボロで今にも崩れそうな橋だった。

 「渡るぞ!落ちるなよ!」

 木が次々を落ちていき、車が丁度渡った所で橋が完全に壊れ、怪物は川に落ちていった。

 

 マイケル達は一息つくと、民族集落へ向かって行く。

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