第25話 のみすぎ、あばれん棒忍者に救われる

酒を愛する者にしかわからないだろうが、

飲んだ後というのは全てが面倒でダルくなるものだ。

家まで大した距離は無いが、女子だし夜道は危ないのでタクシーに乗ることにした。


タクシーに乗ろうと繁華街で車を探していると酔っ払い2人組に声をかけられた。

「よぉねぇちゃん、俺らとこれからいいことしない?」

「3Pとか興味ある?あるよね!」

路地裏に引きずり込まれた。

この先はホテル街だ。

ホテル街のネオンの下でお互いの姿がはっきりとする

「なんだBBAかよ!」

「ハァ?ナンパしてきたのに失礼だろ」

「暗がりじゃわかんねーよ。」

「まぁ体は70点くらいだからご休憩でもしていくか。

この際顔さえ見なければいいだろ」

クソ失礼な奴らだ。そう思った瞬間私の手が出ていた。

酔っ払いだから仕方ない。

「てめぇ!」

「女が調子に乗るんじゃねーよ。」

顔面に膝蹴りを食らった。

痛い痛い…!!

私は顔を抑えて道路で転げまわる。

転がり回ったところでもう一人の男に手を掴まれ羽交い絞めにされる。

「このレベルのクソ女に休憩代はもったいないからここで始めちゃおうぜ。

あと何発か殴っておけば大人しくなるだろ。」

「そうだな。雌犬には躾が必要だしな。」

手足をバタバタさせて声をあげようとするが、

もう一人に口を押えられて声が出せない。

こんなことするんじゃなかった!

誰でもいいいから誰か助けて…!


「そこまでだ!」

「誰だ!」

「クズ共に名乗る名など持ち合わせてはいないが

通りすがりの忍者だといっておこう。」

明かりの下に覆面の男がすっと姿を表す。

カッコよく参上したはいいが、相変わらず全裸だった。

「俺の心友に手出しはさせん!」


変態マスクはそう言うと両腕を後ろに組み、高速で反復横跳びするように

左右に細かく動きながら男たちに向かっていった。

「ぐっ」

その瞬間、男たちはその場に崩れ落ちた。

早すぎて何が起こったのかさっぱりわからなかった。

「安心しろ、命までは取らん。」

酔っ払いたちに背を向け、忍者はゆっくりとこっちを振り向き

呆然としている私に声をかけた。

「大丈夫だったか?」

「うん。ありがとう。」

「立てるか?」

「うん。」

安堵して出た涙を見られないようにしつつ、抱きかかえながら起こしてもらう。

「お前なんでこんな所夜遅くに一人でふらついてるんだよ。

今日はたまたま俺がいたからいいけれど、これから冒険に出る奴が

そんな心構えじゃすぐにやられるぞ。」

ただの変態だと思っていたが、思いの外紳士な態度だったので

一瞬だけときめいてしまった。

危険なところに助けに来てくれるとかポイント高いよね。

微かに残っていた乙女心が反応し、ほんの少しウットリした目で忍者を見たら

第三の足がさっきの振動でぶるんぶるんしていた。

あばれん棒とはこのようなものを指すのであろうか。


…見なかったことにしよう。

というかときめきを返せ!


そんなことを考えながら介抱されていると、向こう側の路地の方から怒声が聞こえてきた。


「この食い逃げ野郎見つけたぞ!待てー!」

「まずい逃げるぞ!!」

「食い逃げって、えっなんで私まで…!!」


全裸忍者を追いかけてきたラーメン屋のオヤジに追われて

なぜか私までダッシュすることになった。

なんとか巻いたけど。

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