第24話 のみすぎ、カエルに会計を押し付ける
ケータイを弄っていると、マスターが突然声をかけてきた。
「ところで美杉、お前宿登録どうするんだ?」
「えっ、なにそれ?」
「お前講習寝てただろ。宿登録ってのはな、勇者候補となる冒険者は拠点となる
宿を必ず一つ決めなくちゃならないんだよ。
そこで仲間を募集したり、非公式の依頼で収入を得たりするからな。
要は身元引受先の登録だ。まー昔は自宅にして家族のところから通う奴も少しは
いたんだが、陰惨な事件が続いてな。最近は家族をトラブルに巻き込まないためにも大体は拠点宿に入って活動している。コードネーム制度と同じようなものだ。
お前は公式組だから給与の最低額は保障されているようだが、きぼうの太陽組なんかはこの非公式の依頼で糊口を凌いでいる。」
きぼうの太陽とは、この国の職業斡旋所のことだ。転職でお世話になったことはあるが、勇者候補向けの仕事も斡旋してたとは…。
「ウチは一応きぼうの太陽認定の宿だから色々融通は利くぞ。」
「まさに宿登録は冒険者の最初にして最後の砦ってやつだ。
ここにするのかい?嬢ちゃん。」
隣でちびちび塩をつまみに安酒を飲んでいた初老の男性が会話に割り込んできた。
なんだろうこの爺さん、ただものではない気配がする。
「お、徳さんがまた新人つかまえて俺のありがたい話をやってるよ。」
「あの人も懲りないなぁ。」
「まぁ、年寄りの楽しみなんだろうよ。そっとしといてやれよ。」
ドサクサに紛れてヒキニートが常連客の会話に混ざっている。
「違ぇねぇ。ペットなのに空気読めて偉いなお前。」
「ペ、ペットじゃないケロ!」
あいつペット扱いされて顔真っ赤になってる、ウケる。
どれここは爺さんの話を聞き流しつつそっと写真撮っておくか。
「おっと人間、俺様を撮るなら事務所の許可を得てくれケロ!」
くそ、気付いたか。
「お前ら仲いいな。」
「いや、よくないから!」
「酒飲む時だけだケロ!」
「わかったわかった。宿登録困ったらうちにこい。大したサービスはできないが歓迎してやる。」
5杯目のジョッキを空けたところで時計を見ると、22時を回ったところだった。
ヤバい!そろそろ帰らないと母がキレる。
家庭内の平和のためにも絶対にそれは避けたい。
「ヒキニート会計!かえるよ!」
「飲みすぎてギャグセンスがオヤジになったケロか?
つまらんこと言ってないでさっさとビールの追加を頼むケロよ。」
「時間迫ってるから会計して帰宅するんだよ!!!」
ヒキニートの口の両端を持って思いっきり引っ張った。
「もご、もごもごもご!!(伸びる、伸びるでケロ!!)」
涙目になりながらカエルがじたばたする。
「わかった?」
覗き込んでニカっと笑いながら両指を思いっきり離す。
べたん。
いい音をさせながら大の字で落下していった。
「マスター、会計お願い。合算で。あとはこいつが払ってくれるから。」
「まいどさん、帰り道気をつけろよ。また来いよー。」
レジ前のテーブルの上でうつ伏せになりながらピクピク震えているヒキニートを横目に、輝さんに笑顔で手を振って私は店を後にした。
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