第22話 のみすぎ、カエルにちょっとした悪戯をする

1杯目のビールがそれぞれなくなる頃、

「できたぞ。枝豆ともろきゅうと、例の唐揚げ。」

「ありがとう。」

唐揚げをひとつ取ってヒキニートに渡す。

「随分形が違うケロ。細長くてシュッとして、これは何の肉ケロか?」

「ほらほら、こういうのはあったかいうちに食べないとおいしさが半減するよ!」

「女、スルーするなケロよ!」

パクッ。食べるところは少ないけど、淡白でプリプリした身がほろりと取れてきておいしい。

私の様子を観察して大丈夫だと判断したのか、ヒキニートも唐揚げに勢いよくかぶりつく。

「これうまいケロなぁ。お前のことだから俺様におかしなものを盛るかとヒヤヒヤしていたでケロ。こら人間、俺様の分も残しておくケロよ!」

食べる手を止めて、カエルをニヤニヤしながら見つめる。

「どうしたケロか。おかしい顔はやめるケロよ。」

「マスター、ヒキニートが唐揚げおいしいって!」

カウンターの向こう側にいる輝さんに向かって声を張る。

「マスター、この肉何ケロかぁ?」

ヒキニートも負けずにカウンターに向かって大声を出す。

「おう、気に入って貰えてなによりだ。それはな、カエルの唐揚げだぞー!」


「フ、ファーーーー!?」

テーブルの上のヒキニートが飛び上がってしりもちをつきながら素っ頓狂な声を上げた。

「この外道が!だからこんな高貴な俺様には似つかわしくない汚い店には来たくなかったケロよぉ…。」

カエルがよよと泣き崩れた。

「う・そ☆」

悲壮感に打ちひしがれるヒキニートにその声は届いていないようだ。

まさかこんなに凹むとは…やりすぎたかな。流石にいたたまれなくなり謝ることにした。

「ちょっとした悪戯だったんだよ、ごめんね。」

「本当にそう思っているケロか?」

「うんうん!そりゃぁもう深く反省しているであります!ほら、このとーり!!」

カエルに向かって90度の角度で頭を下げる。

「誠意が見えないでケロ…。悪いと思っているならこの席は貴様のおごりにするでケロ!」

「それとこれとは別だ」

「クソッ!」


不貞腐れてるヒキニートを尻目に、輝さんとおしゃべりをする。

「で、お前今日はどうしたんだよ。何かあったのか?」

「輝さん!聞いて!今日お母さんの代わりに王宮行ったら流れで冒険者登録することになっちゃってさーおまけに変な奴に会って、そいつのせいで変な名前でカード登録されちゃった。もー最悪!」

「そうかそうか、で、なんて名前なんだ?」

マスターがひょいと私の手から冒険者カードを取り上げてじろじろと見た。


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