第20話 のみすぎ、飲み屋へ向かう

「おまわりさんこっちです。」

影が薄くなっていたあいつが、ぬっと顔を出した。

あれ?変態マスク、お前帰ったんじゃないかったの!?

というかおまわりさんいるなら一緒に逮捕されてしまえ。

「えっ、なんで?」

呆気に取られながらもなんとか声を絞り出した。

「ハゲマンお前気付けよ!もうそんな年齢じゃないだろ!」

「だから何さ?」

「俺に説明させるつもりか?」


「あ…あー!!あーーーーーー!!!!そういうこと!!」

思わず顔が赤くなる。茹で蛸のようだ。

「まったく、王じゃなければ変態として通報してたぞ。」

「今更だけどドサクサに紛れてさりげなく年齢をdisるな。」

「やれやれ、年増のくせにカマトトぶるからいけないケロよ。」

スカしたポーズを取りながらヒキニートが会話に割り込んでくる。

「お前もドサクサに紛れて入ってきてるんじゃねーよ!」

ムギュっと首根っこを掴む。

「し、締まるケロ!これ以上は封印されし我が力が…ガクッ。」

静かになった、やれやれ。

真のやれやれ系キャラの座はお前には渡さん。


「コホン。あー。色々盛りだくさんじゃったが、

わしそろそろ本気で出なきゃいけない時間なので

最後にこの国に代々伝わる冒険者の送り出し方で激励しようではないか。」


巻いてきたな。まぁよかろう。

その伝統の送り方とやらを見せてもらおうではないか。

場合によっては飲み屋でこのあとネタにさせてもらうぞ。

王にバレないようにそっとドヤ顔でニヤついてから「おねがいします!」と言った。


「風邪引くなヨ!馬車に気をつけろヨ!!もう戻ってくるなヨ!!!」


某お笑い番組のBGMが聞こえてきそうなリズムで王が見送ってくれた。

あのー、、さりげなく本音混ぜないでください。

「本当に伝統の送り方なのかこれ?」

下半身を忍んでいない忍者がぼそりとつぶやいた。

奇遇だよ、私も同じことを思ったのだよ。

口に出して伝えたらウザ絡みされそうだったので、そっと横目で見るだけにしておいた。



送り出しの儀も終わり、王宮を後にする。

あの肌色の奴は逆方向だったらしく、ついてこなかったようだ。

よかったよかった。

なんかもう疲れたし突っ込む気も起きないや。

家帰る前にどこかで酒飲んで帰ろう。

ビールがいいわ。ビール飲んで落ちた気分をアゲよう。

今日はいつもの居酒屋海峡が閉まってるからどこにするかなー。

ハッピーアワー半額のBAR・不毛地帯でも行くか。

「よし終わったな、酒だ酒だー♪」

カエルが服の間から顔を出す。

酒の気配を感じ取って復活してきたのか。魔族も酒には弱いんだなぁ。

「あー、ここからちょっと歩くから。15分くらい。」

「俺様が転移の魔法でも使うケロか?暑いし早く飲みたい。」

「まぁ待てって。この15分の我慢がビールを最高に美味くするんだよ。」

「俺様皮膚がカサカサになりそう。」

そう言ってヒキニートは再び服の中に潜り込んだ。

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