第19話 のみすぎ、王様にアイテムの交換を申し出る

チラリとヒキニートの方を見る。まだ伸びているようだ。


「先程のお話からしますと、戦闘の度にあの小汚い物体を揉むか

こいつを揉むかってことじゃないですか!嫌ですよそんなの。

失礼ついでに全部言いますが、このカエルごとお返ししますので

今から別のアイテムに変えることはできませんでしょうか?」

「王様から貰ったものを嫌なので交換してくださいとかいう奴初めて見たぜすげー。」

頭を隠して尻を隠さない男が横から茶々を入れてくる。

「だってさぁ」

「だってじゃないだろ。」

「あるにはあるんじゃが…これはわしのお気に入りだからのう。」

「そこをなんとか!」

王は渋々と懐から手鏡を出した。

小ぶりでホワイトゴールドの地金に繊細な細工が施された女性らしいデザインだ。

「わぁ鏡とか超女子っぽいじゃないですか!

これで姿を映して変身とかできちゃったりしたら最高。

なんていうか女の子のロマンですよね。私こっちがいいです!」

『オーケー姿を映せブラザー。』

なんかいい声が聞こえた気がするんだけどなんだろう。

鏡を見ると、中でブーメランパンツ一丁のマッチョが歯茎を出しながら

ニカっと微笑んでいた。

『おっとお嬢さんか。筋肉を欲するものに性別は関係ない。

マ神の前に全ては平等なのだよ。』

マ神とは何か。あぁ、そうかマッスル神か。

理解してしまった自分にふらふらしながら、無言で王に奪った鏡を裏にして返した。

「筋肉は、いいぞ。」

王がニカッと歯茎を出して微笑んだ。

ふ栗を渡した奴に、もしかしたらと淡い期待をした私がバカだったよ。


「話は聞かせてもらったぞ人間よ。ククク精霊の力が宿った…だと。

これも俺様の強大な魔力に呼び寄せられたケロか。

手始めにこの力を使ってここの人間共を殲滅してく…」

もう復活したのか。

ぞうきんを絞るように左手に胴体を持って右手で軽くカエルの首をひねってみた。

「まだだ、まだ終わらんぞ…ガクッ」


静かになった。


「続けていいかの?」

「どうぞ。」


「では続けるぞ。その精霊、ふ栗の精(ふぐりのせい)は生命の根源を司り、

高位の術者であれば新しい生命を創り出すことも可能になると言われておる。」


倒れているヒキニートの口から吐き出された白い靄が固まって、

オタマジャクシのような形に変化した。


「おおっ、なんと神々しい。俺様のためだけにピュアな身でいてくれたかのような

純白の体!じゃじゃ馬のような元気な尻尾!俺様の天使ちゃん!!」

復活早いなさすが自称魔族。


「おかしいのぅ。もっと伝説で聞く天使のような神々しい姿であると

聞いたはずじゃがのう。どうやら術者の強く望んだ姿に変化するようじゃ。うむ。」

王がなにやら納得している。


お前のせいか。

空間に浮いているオタマジャクシよりも際立つ白さをした目でカエルの方を見た。


ヒキニートはシャイな中学生のように

もじもじしながらデレデレしていた。

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