第12話 のみすぎ、魔界のカエルと出会う
目の前に少し大きめのカエルがいた。
「正直者のお主にはこれを全部…チッ。
BBAに用は無いんだよ、帰った帰った。ケロ。」
「厄年前だよ!!!」
反射的に殴ったらメメタァという音がした。
うぅ、ぬめぬめする…。
急いで洗面所で手を洗う。石鹸ないんだったここ!
しっかり2度洗いしてタオルで水気を拭いていると、
後ろからぐぇという呻き声が聞こえてきた。
とりあえずもういっちょ踏んでおくか。
こういうのはゴミ箱からでてきちゃいけないから、
ティッシュで包んで捨てる前にきっちりとどめ刺しておかないと安心できないしね♪
あぁ、でも玉どうすっかなー。
踏んでとどめ刺した後にどこかの肉片と混ざった中から拾って水洗いとか
考えたら凹むわ。
やっぱ玉を返させてから潰したほうがいいかなー。
だけど逃げられたら安心できないから悩むなー。
うーんうーんと唸っていると、下の方から何かが聞こえてきた。
耳をすませてみると、
「あのぉ、無視しないでケロ…。助けるケロ。」
弱々しい声でカエルが何か言っている。
思ったよりしぶといなこいつ。
とりあえず排水溝に嵌っていたカエルの足を持って引っこ抜いた。
うぅ、やっぱぬめぬめする…キモいよぉ。ソッコーで手洗おう。
「人間、俺様の足を早く離すケロ。」
何も言わずに洗面台に落下させた。ボタっという音がした。
「顔面から落ちたケロ!
俺様のプリティな顔に傷が付いたら末代まで呪ってやるケロ!」
ガン無視を決め込んだ。
視界の端でカエルが薄くうろたえていた。
「で、ないの?」
ニコニコしながらカエルに質問する。
「さっきお前が殴った時に呑み込んじゃったみたいケロ☆」
「逆さに持って振ったら出てくるんじゃないかな。手伝おうか?」
カエルの脚を掴もうと笑顔でそっと指を近づける。
あ、避けた。
「お、おれ、ヒキガエルのニート。ゲコゲコ動画の超人気生主やってるケロ。
ヨロシク!」
無駄にかっこいいポーズをキメてきた。が、脚が震えているようだ。
「普通こういう時って、お前に名乗る名などない!!とか言わないの?」
「俺様は常に強いものの味方だケロ!長いものに巻かれるのは大自然の摂理だケロ!
ということでこれからやっかいになるでケロ☆」
う、うぜぇ…。
しっかしヒキガエルのニートかぁ…。
ヒキニート!ヤバい、ツボる!!
顔を真っ赤にして肩を震わせていると、ヒキニートが続けて言ってきた。
「なにがおかしい!」
「いや、だって、ヒキニートって…ぷぷー!」
思わず笑いが漏れる。
「俺様の高貴な名前、ニートは魔界で『無垢な魂を持つ者』
という崇高な意味があるのだ。人間風情が気安く呼ぶでないケロ!」
「家から出なかったら確かにピュアよねー。
まぁ、そういうのって世間知らずっていうんですけど。ぷふー。」
ニヤニヤしながら煽ってやった。
「に、人間よ、俺様が余裕のある大人の対応をしていたら調子に乗りやがって…
俺様を怒らせると後が怖いケロ!!」
後ずさりしながらファイティングポーズを取っている。
「やる気か。おもしろい。」
私は用具入れを開けてピンクのゴム手を取り出しそっと嵌めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます