第8話 のみすぎ、健康診断と聞いて焦る
げんなりする気持ちを引きずりながら、
会議室を出て階段を下りて左にあるじゅうたんの部屋に移った。
集会室らしい。
「皆さん全員揃いましたか?今から簡単にですが健康診断をします。」
えっと…そういう事は事前に連絡しようね!
昨日は飲んでてなんかいろいろ面倒くさくなったから
まぁ明日でいいや☆
って化粧すら落とさずにベッドにダイブして
朝起きて化粧落とし忘れてたことに気付いて愕然として
しかも寝坊してその上から適当に化粧直して来たんだけど!
おまけに脱がないからいいや☆
ってムダ毛処理してないんだけど!脇とか!!腕とか!!!脚とか!!!!
やり場のない怒りを持て余し、知らぬうちに小さい声で唸ってしまったみたいで
前の人が振り向いてガン見してきた。
さっきの覆面クレーマーだった!
案の定全裸だった。
会議室で感じたような殺気は全くなく、普通の変態だった。
したり顔をされた上にウインクされた。
いや違うから。
「この中で30歳以上の受講者の方はいらっしゃいますか?
いらっしゃいましたら前のほうに集まってください。」
見た目は20代って言われるからそっと黙っておこう
いやいやここは王宮兼役所だから住民票からイッパツで年齢バレて…
「お姉さんもこっちだろ、ほら一緒にいこうぜ!」
肌色、またお前か!
妙に馴れ馴れしい上にどうして私の年齢がバレたのだろうか。
この変態、できる。(確信)
いや、そうじゃない、私。
「30歳以上の方は成人病検査もありますので、これから別室にご案内いたします。」
なんか思ったより人数多いな。みんなくたびれた顔をしている。
普通冒険者って、10代のもっと夢がキラキラ的な
恋も青春も野望も友情も!とか
限りない未来に向かってジャンプ☆とか
俺たちの旅は始まったばかりだ!とか
ありったけの夢をかき集めた○賊王とかそういうものだと思ってたよ。
オールがキツかったりとか、
筋肉痛が2日後にくるのを怯えていたりとか
一人暮らしなのに枕から実家の父親の臭いがしたりとか
油物を食べると次の日胃もたれしたりとか
明日会社に行きたくないし月曜日来ないで欲しいとかこんな
なんか、なんか…うん。違うよね。
現実って、せつない。
そんなことをボンヤリ考えていたら自分の順番が来たようだ。
入り口の名簿で照合を済ませる。
どうやらここも最後だったようだ。
「みなさん揃いましたので検査の説明に移らせていただきます。
まず身長と体重、視力、聴力、尿検査、血液検査の後、
最後にバリウムの検査となっております。
こちらに検査着を用意しましたので着替えて順にお進みください。
着替えの場所ですが、男性はこの部屋、女性は隣の検査準備室をお使いください。」
簡単とか言ってたのに随分本格的だな。
いいけど。
「服を着ると俺の素早さが下がってしまうんだが。」
「検査に必要なものは清潔さと正確さですので素早さは必要ありません。
着用ください。」
「SHINOBIたるもの速さこそ命。」
自称忍者の覆面全裸男と検査担当の職員が検査着を押し付け合いながら睨み合っている。
見なかったことにして準備室に移動しようそうしよう。
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