第6話 のみすぎ、適性検査で調子に乗って失敗する

どっと疲れる映像が終わり、明かりがまた点いた。


「みなさんおつかれさまでした。

これからの旅について理解は深まりましたでしょうか?

最後にですが、このテキストは15年程度一度も変更はありません。

大切な事というのはいつまで経ってもシンプルで変わらないものです。

なお、この冊子は機密保持のために回収させていただきます。」


なんかいいこと言ってるふうに聞こえるけど、ただの使いまわしだ…!


「続いて適正検査を行います、筆記用具と用紙をお配りしますので

受け取った方は一部ずつ取って後ろに回してください。」

A4の紙3枚程度がホチキス留めされた用紙と鉛筆が一斉に前から送られてくる。


マジかよ、聞いてないってそんなの。

テストなんて最後受けたの10年以上も前だって。

養成学校じゃないんだから、普通は講習だけで終わりだろふざけんな。

教室がざわざわとし始めた。


「みなさんお静かにお願いします。

適性検査と申しましても職業クラスの適正をみるための簡単なテストなので、

心理テストみたいなものと考えてください。

リラックスして受けていただいて結構です。

はじめという合図があるまで用紙は開かないようにしてください。

筆記用具と用紙は手許に揃いましたか?まだの方は挙手でお教えください。」


こんなの学校のテスト以来だ。あれ、そういえば入社試験もあったな。


「全員揃ったようですね。それでは始めてください。」


あの頃は就職氷河期も相まって辛かったなぁ…100社以上受けて全敗だもんなぁ。

そういえば受験の時も当日だけ振るわなくて志望校落ちたっけ。

練習だと割とバッチリできるのにいつも本番には弱いんだよな。

はー、思い出すとマジ涙出てきそうだ。いかんいかん。集中集中っと。


ぺらり。


5、7、8…ざっと見て1行あたり200字、15行程度の謎の数字の羅列があった。


適性検査:となりあう数字を足して、下1ケタの数字を隙間に記入していってね!


こ、これは…内○クレペリン!

全体の計算量と1分毎の計算量の変化・誤答量から性格診断をするという

就活メン泣かせの謎テスト!

就活時にやった時は全部キレイに計算列を揃えるのがイケてると思ってたよ…。

あとあと大企業に内定決まった友人から「列を揃えると診断結果で

コミュ障の烙印押されるからギザギザに解くのがよいんだよー」

と聞いて思わず「へぇ、そうなんだ」としか言えずに

内心のけぞりまくった苦い思い出が蘇った。


ふぅ。


1分経った。

確か1分経ったら止め!

って声掛かって次の行に移ってまた計算するテストよね、これ…。

全然声掛からないんだけど。

うーん、忘れてますよって指摘した方がいいのかなこれ。

でも自分だけ声掛けて悪目立ちして結果悪くなるのもアレだし

そっと次の行に移って再計算するか。

こちとら厳しい就職戦線生き残ってきたんだし、きっと大丈夫だ。

それにみんなも同じように計算するだろうし…!


---30分後---


「はい、計算やめ。後ろから前の人に渡していってください。回収します。」


ふぅ、3枚ともなかなかいい感じに波形が出ていてよくできてたんじゃないかな。

これで希望職種も選び放題で冒険者として幸先良さそう。

よくできた私にごほうびで、夜は寄り道してうまいもの食べて酒飲んでやろう。

とりあえずビールに枝豆かな、ふふふ。


お、結果が出たようだ。最近のテストは結果出るのが早いなぁ。


結果:若干コミュ障ぎみのところがありますね。

チームワークを密にとる職業(回復役など)にはあまり適正がないと思われます。

えっ、なんでなんで!?ちょー解けてた筈なのに、嘘ぉ!


よく見たら、○田クレポリンだった…チクショウ。


「だからあんたは詰めが甘いのよ!私があんたくらいの歳の時は(以下略」

母の妙に勝ち誇った声が頭の中で再生された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る