第3話 のみすぎ、一晩明けて城に回答を提出しに行く

あのあと部屋に戻ったものの結局眠れず、

いいことがあった時に飲もうと思って買っておいた

とっておきのウイスキーに手が伸びていた。

気付いた時には部屋がなんだか明るかった。

そして空瓶がベッドの脇に転がっていた。


ふぅ。


折角の連休が台無しだ。

なんか気持ち悪いし城行くのバックれちゃおうかなぁ…

あぁ、でも逃げると後が色々めんどいから一応顔だけ出しておくか。

とにかくまずは二度寝二度寝っと。


コンコン

誰かがドアをノックする音がしている。

無視だ無視、私は眠いんだよ。


ドンドン

さっきよりもノックの音が激しくなる。

あーもう!うるさい!

こっちは頭痛いんだって!!


ガチャガチャ

ドアを引っ張る音までしてきた。

「ほら美杉ー、起きなさい。もう昼前よー。

今日はアンタがお城に行く大事な日でしょ。」

母だった。


なんのRPGだよこれ。



「それで、引き受けてくれるじゃろうか?」

「条件があります。」

「最近の勇者候補は注文が多くてかなわんが、一応申してみよ。」

(多いんだ…こんな仕事ですもんねー)

「父の再就職先の斡旋をお願いいたしたく…」

「なんじゃ、その程度で良いのか。勇者法で勇者の家族には手当や特典があるのじゃが…。」

「そそそそれ詳しくお願いいたします!!!」

「国家試験の筆記免除、採用については何か国家資格をもっていれば実務経験0の年配者でも家族特典で優先採用じゃ。」

(えぇぇそんな制度あったの!?そういえばお父さん魔法危険物取扱の免許あるけど実務0で落とされてたな…)

「引き受けた場合、先立つものとか…」

「勇者の給与はサン銀行の指定口座に末締めの25日払で振込、夏冬3ヶ月ずつのボーナスと夏は冷房手当、冬は暖房手当全て非課税じゃ。

当人とそのパーティーに限るが、馬車等の交通費や宿代については上限はあるが、勇者パスを提示することによりこちらに支払がゆくようになっておる。

ランチは指定店舗のみワンコインでOKじゃ。有給は着任後半年ごとに7日付与とする。この条件でよければこちらにサインを。」

「肝心の給与額がありませんが…」

「最低保障は10万ピカリ、あとは出来高じゃ。」

(条件面だけ聞いていればなんかよさげだと思ったけど、あれっ?

この実家から出れないような微妙な金額設定、雇用保険ナシ、社保ナシ、残業手当ナシ、ブラック企業並だ…!)

「あともう一声…!」

しばらく考えた後、王は控えていた側近に向って命じた。

「例のものをこちらへ。」

「はっ」


例の物ってなんだろう。

まぁ、国の都合で危ない所に行くわけだしちょっといいものくれるんだろう。

やっぱ装備とか揃えるのに物入りになるから金塊とかかなぁ。

それとも小切手かしら。

小切手は振出が手間だからやっぱ現ナマがいいけど、

今日はカバンが小さめだからいきなり札束持ってこられても持っていけないし、

そもそも日曜だから銀行預けられないし、財布には大金持つの怖くて

普段から1万ピカリ以上入れられない私にはちょっと無理かも。

口座に振り込んで貰えるようにうまいこと言わないと。


二日酔いで働かない頭をフル動員し、現金を受け取る手順をなんとか考えるのだった。

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