第2話 のみすぎ、家族からも冒険者になることを推される
「ただいまー。」
「あら、遅かったじゃない。どこで寄り道してきたのよ。」
「おかえり、どこにいってきたんだ?」
「姉ちゃん今日はシチューだよ。」
家に戻ると既に17時を過ぎていた。
地味に長かったんだなぁあの謁見タイム。
ということにしておこう。
あの後むしゃくしゃしたので敢えて回り道して
コンビニの駐車場でワンカップ買って
ヤンキー座りしながら煽ってたなんて口が裂けても言えない。
「あ、お父さんも帰ってたんだ。おかえり。ん、ちょっと謁見に時間がかかって。
はー、すっごいこと言われたよ。勇者になって魔王倒してきて、って言われた。」
「アンタ即座に回答しなかったでしょうね。王様に言われたからってすぐ調子にのってハイとか言わなかったわよね?」
母の顔が急に険しくなる。
「いやいや、今の仕事あるし地元離れなきゃいけなくなるし考えさせてくださいって断った。断ったけどさ、ゴリ押しされて断りきれなさそう。」
「結構大きな問題だから、嫌なものはイヤとハッキリ言うんだぞ。
勇者は自由意志でなるもの、と法律でも言っているからな。最悪死ぬかもしれない危険な仕事だ。」
父ナイス。
「ダメよ。ウチ年金開始まであと4年あるんだから、お父さんの再就職先これでチラつかせてきなさい。」
母そこかよ!
「ごめんな、美杉…(泣)」
父粘れよ!
「姉ちゃん、家のことは俺に任せていってきなよ!
姉ちゃんブラック企業経験値かなり高いけどさー、今回は勇者とかマジウケる。」
最後のサムズアップはなんだ。弟、あとで殺す。
若干ブルーになっている私を尻目に、家族は盛り上がりながら食事を進めていく。
「アンタ食欲ないけどどうしたの?そんなに冒険者になることがショックだったのかい?」
母が滅多に見せない優しさを見せてきた。
「美杉、ちょっと酒臭いぞ。」
父よ。
思わず私の父に対する視線が鋭くなる。
「姉ちゃんさては何かうまいもの買い食いしてきたんだな。」
弟、その援護射撃はなんだ。
男ども、正解だけどここで肯定したら母がキレて
食卓が一気にお白州になりかねないから勘弁してくれ。
「お父さんシチューに焼酎合わせるとかマジキモい。」
苦し紛れに父をdisる。
「俺、今日は米を食べない日だからいいんだもん!カロリー的に大丈夫だもん!」
意外に女子力の高い返事が戻ってきたぞ。
「酒の臭いはお父さんでしょ。既に酔っぱらって何言ってるの。
美杉が真面目な話題してるのに茶化して!」
「俺、茶化してないもん…。」
急に父がしおらしくなる。
これは切り上げて部屋に戻るいいチャンスだ。
「お母さんありがとう。もう部屋に戻るね。」
鍋のシチューの残量をそっと確認してから、そそくさと部屋に戻った。
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