ひとのこと、ことのひと
# main.au < cat >>> EOT
ArtificialUterus < include ArtificialUterus
std < include StandardInterface
injector < include injector
actibityTracker < include actibityTracker
const uterusConf:String < std::fs::open('/etc/artificial_uterus/human.default.conf', 'r')
const uterus:ArtificialUterus::humanModule < new ArtificialUterus(uterusConf)
const geneConf:String < std::fs::open('/etc/artificial_uterus/gene_presets/gene.default.conf', 'r')
uterus::gene << injector::inject(geneConf:String)
uterus::gene << injector::inject(actibityTracker)
while (uterus::wasBorn == false)
uterus::process()
std::console::print << uterus::activityLog()
std::sleep(1)
process.exit(0)
EOT
# doctor genes build -2b -c --name=immortals main.au
# doctor human logs immortals
```activity-log:
子供を作るという行為が本来は生物的な行為であることを知ったのは随分後になってからだ。
私が生きていた時代は、人が生まれるということが滅多になくなっていて、個人の間で子供を作ることは一部の物好きの道楽と捉えられていた。そもそも、男も女もみんな去勢されているも同じだったから、本当に特別なケースを除いて、自然生殖で子供なんて作るなんてことは叶わなかった。
性ホルモンは、特別な薬で完全に制御され、男も女もそれ以外も、みんな同じように成長したし、例外はなく同じように育った。だから、本来は自然な生殖が可能なはずの異性間でも生まれることがない。なぜなら、二次性徴はないから。月経は始まらないし、胸も膨らまないし、ペニスは大きくならないし、睾丸は小さいまま。
男でも女でもない。生殖機能も持たない。だから、相手に恋をするとかそういう気持ちを持つことも稀だった。
相手との子供を作りたいという気持ちが元から存在していないのだから、なんらかの個人的な考えを除けば、作る理由はなかった。
子供を作る。
それは、神託機械が決定することだ。
必要に応じて、子供を作るかどうかを神託機械が決定する。
神託機械。それは人工知能が作った人工知能が作った人工知能が作った人工知能。
膨大な電気と問題を食べて熱と正しい答えを出力する装置。
神託機械が選んだ遺伝子に若干の改良を加えて、卵子と精子を万能細胞で作り出して、それを人工子宮に着床させて8ヶ月で出産。それが今の人類の繁殖方法だ。
「神託機械は、人の量を一定に保つようにする傾向がある。だから、子供を作るという行為は、誰かが死んだからその補充のために行われるんだよ」
そう、私は学校で習った。
だから、私は誰かの不幸な事故の元に生まれたことになる。私の誕生は誰かが死んだことを意味しているのだ。
「何も心配しないでも、神託機械が全てをやってくれる。だから私たちは、物事を楽しむことに必要な最低限の教養だけ身につけておけばいい。教養は必要。だから学校は今でも残されてる。神託機械がそう決めたんだから」
神託機械は、その出力する結果の複雑さに比べて、行動原理は意外にも単純だ。今いる人類の、最大多数の最大幸福の達成。
あの有名な、電車が5人を殺すことになるか、1人を殺すことになるかを選べという問題も、人の価値が等しく同じだと捉える神託機械は確実に1人を殺すことを選択する。
私が生まれるきっかけになった事故も、そのように選択されたのだそうだ。
5人か1人かを殺す、究極の選択。
神託機械は5人を選んだ。
そして私が生まれた。
人が死ぬには脳髄の構造を完全に破壊しなければならない。焼く、潰す、切り刻む。小さな怪我は体に埋め込まれたマイクロマシンが直す。だから死ぬには多大な苦痛と努力が必要になる。首を締めてもマイクロマシンが脳に酸素を供給するから死ねない。飛び降り自殺もできない。飛び降りても電磁ネットが優しく受け止めてくれる。爆死なら可能性があるかも、爆薬を得ることが難しいのだけれども。
病気もこの世界では無くなっている。ウィルスもマイクロマシンが分解する。寿命の原因となる細胞の劣化も、全部マイクロマシンが自動的に修復する。ガンも脳出血も肝硬変も半身不随も無縁だ。全てが自動的に治療される。
いつか焼かれたり、潰されたり、切り刻まれたりしない限り、ずっと私たちは生き続けることができる。
私を産むことになった、あの人はどのようにして死んだのだろうか。私はよく、想像する。脳髄が一瞬で完全に破壊されて、修復できないぐらいぐっちゃぐちゃになってしまったはずだ。一体どうやって死んだのだろうか。
私たちは神託機械に、ただ幸福でいることだけを望まれている。神託機械から提供される娯楽を見て、ただ笑い喜び泣き悲しみ怖がっていればいい。それを安全に味わえるということこそ幸せということだ。
市民、幸福は義務。
幸福な私たちが不死の果てに見るものは何なのだろうか。
```
# shutdown -h now
sessh: connect to host ooso7ahYaoc8suo port 8F67: Connection timed out
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