第12話:一つの作戦と爆裂デート

 今回はオリジナルの話です。



 デュラハンの襲撃から、3日が経ったある日の朝。


「『エクスプロージョン』ッッ!」


 丘の上の廃城に、めぐみんの爆裂魔法が炸裂する。


「うーん。今日のはイマイチだな。

 音は合格点をあげられるいい出来だったが、爆風が物足りない。前回の方が全身を優しく包み込んでくれるようないい爆風だったぞ。合格まではいかないから、今回は70点ってとこか」


「そうですね。今回の爆裂魔法は、私も少し物足りませんでした」


 めぐみんは倒れながら、カズマに返事をする。


 俺たちはあれからも、しっかりと爆裂散歩を続けていた。


 なんでって?

 いい雰囲気になったところを邪魔されたし、爆裂散歩と言いながらめぐみんと二人きりになれるからな!


 この後は、あのデュラハンを無視してデートしてた時にウィズに教えて貰った『ドレインタッチ』でめぐみんに体力を分けて、またデートをする予定だ。


「よし。じゃぁそろそろ行くか」


 俺がそう言ってめぐみんに体力を分けようとすると、


「待ってくださいカズマ。今日は街に着いたら、体力を分けてください」


 と言ってきた。


「ん?なんでだ?」


 俺が不思議に思い聞き返すと、


「いえ、ここ最近はカズマに体力を分けて貰って歩いて帰っていたので、カズマの背中が恋しくなってしまいまして。なので今日は久しぶりに、おんぶして欲しいなと思ったのです」


 そんな事を言ってきた。


 もう!めぐみんたらいきなりそんな事を言って来るなんて!

 いや、俺も久しぶりにおんぶ出来るならそれはそれでいい事なんだけどね?

 でも、いきなりこんな事言われたらやばいじゃん!

 キュンキュンしちゃうじゃん!


「お、おう。そうか、わかったよ。なら今日はおんぶで行くからな。」


 そんな事を思いながらも、俺はめぐみんを抱え、おんぶする。


「ありがとうございます。ふふっ。照れているカズマは可愛いですね」


「お、おい。あんまりからかうと、ここに置いて行くぞ?」


「そんな事、カズマに出来るんですか?」


「うっ……」


 めぐみんがイタズラをするような顔で言って来る。


 くそっ!可愛いなもう!

 でもなんだか最近手玉に取られてる気がする。MMKめぐみんマジ小悪魔!って感じ。

 あれ?これは他のところのやつか。


 そんな事を考えていると、


「そういえばカズマ。今日もあの城に爆裂魔法を撃ち込んでやりましたが、大丈夫なのですか?またあのデュラハンが攻め込んで来るのではないですか?」


「ん?ああ、大丈夫だよ。

 俺もそれなりに作戦は考えてあるし、いざとなったらウチには対アンデット専用の自称女神アクアがいるからな。またあいつがきた時には、俺が先陣切って倒してやるから安心しろって」


 俺は男の子なのだから、好きな子の前ではカッコつけたいし、ちゃんと作戦もあるのだから。

 とそうめぐみんに伝えると、


「ふふっ。そうですか。では、頼りにしてますよ、カズマ」


 そう言って、後ろから強く抱きしめてくる。


 よし!今回は俺の作戦通り!めぐみんの温もりが背中に感じられるぜ!

 それにやっぱりいい匂い!


 なんでだ?大衆浴場にあるシャンプーは、男性用と女性用では違うものを使ってるのか?

 でも、アクアとはなんか違う匂いなんだよなあ。


 ………………。


 違うからね?

 アクアのはわざと嗅いだわけじゃないからね?

 すぐ隣に寝てたから匂ってきただけだからね?

 本当だから!俺はあんな駄女神に欲情したりしないから!


「……カズマ。なぜさっきから変な顔をしているのですか?」


「あ。い、いや。少し考え事をな」


「彼女をおぶっている時に、別のことを考えていたのですか?」


 ヤバい。悲しませてしまったのだろうか?

 なんか声のトーンがいつもより暗い気がする。


「い、いや別に!そういう訳じゃ……」


「ふふっ。嘘ですよ。カズマは本当に騙されやすいですね。やっぱり可愛いです」


「な、なんだよ。本当にやめてくれ。心臓がもたないんだよ」


「なぜもたないのですか?」


 めぐみんがまたもや、イタズラをするような顔で聞いてくる。


 なぜもたないって、1回目のようなからかい方されるとドキドキして心臓が持たないし、2回目のようなからかい方されると嫌われたかと思って心臓が持たないし。

 なんて本人に言える訳ないだろ!


 そう思って口をムニムニさせていると街の入り口が見えてきた。


「ほ、ほら。街の入り口が見えてきたぞ。もうその話は終わりだ。そろそろ体力を分けてやるから、デート始めようぜ」


「むう。話題をそらしましたね。でもまあいいでしょう。ささ、早くデートを始めましょう!」


 よかった。

 今回は許してくれるようだ。

 でもまたこの話題になったらどうしよう。

 次からはなるべくこの話題にならないように心がけよう。

 そう思いながら、めぐみんに体力を分けてやる。



 しかしこの次の日、やはりめぐみんにこの話題にされてしまい、全てを伝える。

 するとまたいい意味で、カズマがめぐみんにからかわれ続けるのは、また別の話。



 その後は、二人でご飯を食べたり、公園で話をしたり、バイトしているアクアをからかいに行ったり、楽しい時間を過ごした。






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「カズマ。また明日も、爆裂デートに行きましょうね。」


 俺の腕を枕にしながら、めぐみんが爆裂散歩とデートを合体した爆裂デートを、明日も行こうと誘ってくる。


「そうだな。明日もまだ、ダクネスは実家で筋トレをしてるらしいしな」


 アクアは夜遅くまでバイトをしているので、二人きりの馬小屋で、明日のデートの約束をする。


「では今日はそろそろ寝ますか。明日もまた、デートがありますしね」


 めぐみんが楽しそうな顔をして言う。


「そうだな。じゃあおやすみ、めぐみん」


「はい、おやすみなさい。カズマ」


 そう言って二人で夜の挨拶を交わした後、口付けをして眠りにつく。


 こんな幸せな日々を二人は過ごしていた。

 もう少しでまた、騒がしい日々が戻ってくるが、そんなうるさ過ぎるような日々も、二人にとっては幸せな日々だった。








 





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