第6話:初めてのスキル
「なあ、聞きたいんだがスキルの習得ってどうやるんだ?」
カエル討伐の翌日。
俺たちはギルド内の酒場で、昼食をとっていた。
俺の横では、金がなく、俺たちに会うまではろくな食べ物を食べられなかったらしいめぐみんが、口いっぱいに食べ物を含んでいた。
可愛い。リスみたい。ほっぺツンツンしたい。
そんなめぐみんはつい先ほど、俺が席に着いたときに、『この席だけは絶対に渡しませんよ!ここは私の聖地なのです!』とか言って俺の隣の席をアクアから死守していた。
なんだろう?この席に何か思い出でもあるのだろうか?
まあ、そのお陰でめぐみんの横顔を見て入られるので気にしてはいないが。むしろ感謝している。
そんなことを考えているとめぐみんが口に含んでいた食べ物をゴクリと飲み込み、
「スキルの習得ですか?そんなもの、カードに出ている、現在習得可能なスキルってところから……。ああ、カズマの職業は冒険者でしたね。初期職業と言われている冒険者は、誰かにスキルを教えてもらうのです。すると、カードに習得可能なスキルという項目が現れるので、ポイントを使ってそれを選べば習得完了です」
なるほど。
確か受付のお姉さんが、初期職業の冒険者は全てのスキルが習得可能だと言っていた。
という事は……。
「……つまりめぐみんに教えてもらえば、俺でも爆裂魔法が使えるようになるって事か?」
「その通りです!」
「うおっ!」
俺の何気ない一言に、意外な食いつきを見せるめぐみん。
「その通りですよカズマ!
まあ、習得に必要なポイントはバカみたいに食いますが、冒険者は、アークウィザード以外で唯一爆裂魔法が使える職業です。爆裂魔法を覚えたいなら幾らでも教えてあげましょう。というか、それ以外に覚える価値のあるスキルなんてありますか?いいえ、ありませんとも!さあ、私と一緒に爆裂道を歩もうじゃないですか!」
ちょ、顔近い!
やばい!このままでは俺の心臓が爆裂してしまう!
「ちょ、落ち、落ち着けってめぐみん!顔が近いから!
それに、俺まだスキルポイントは3ポイントしかないんだよ。それでも習得出来るもんなのか?」
めぐみんに興奮を悟られないように顔をそらし、アクアの方を向いて尋ねた。
一方めぐみんは、俺の言葉でハッ!と気付き顔を赤らめてうつむき、恥ずかしかったのか、そのあとは何も言わず、また黙々と食事を再開していた。
「冒険者が爆裂魔法を習得しようと思うなら、スキルポイントの10や20じゃきかないわよ。十年ぐらいかけてレベルを上げ続けて、一切ポイントを使わずに貯めれば、もしかしたら習得出来るかもね」
「待てるかそんなもん」
「……以外と肌はキレイなんですね……」
未だに顔を赤くしためぐみんは、何か独り言を言いながら食事を続けていた。
しかし、俺の就いている職業、冒険者は、全スキルを習得可能って所が唯一の利点なのだから、せっかくなら多彩なスキルを覚えていきたい。
「なあアクア。お前なら便利なスキルたくさん持ってるんじゃないか?何か、お手軽なスキルを教えてくれよ。習得にあまりスキルポイントを使わないで、それでいてお得な感じの」
「……しょうがないわねー。
言っとくけど、私のスキルは半端ないわよ?本来なら、誰にでもホイホイと教えるようなスキルじゃないんだからね?」
やたら勿体付けるアクアだが、教えてもらう立場なのでここは我慢だ。
「じゃあ、まずはこのコップを見ててね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちないように乗せる。ほら、やってみて?」
ちょっと人目が気になるが、俺はアクアに続いて同じように自分の頭にコップを乗せた。
すると、アクアはどこから取り出したのか、一粒の種をテーブルに置く。
「さあ、この種を指で弾いてコップに一発で入れるのよ。するとあら不思議!このコップの水を吸い上げた種はニョキニョキと……」
「誰が宴会芸スキルを教えろっつったこの駄女神!」
「ええーーーーー⁉︎」
なぜかショックを受けたらしいアクアも、未だに顔を赤くしているめぐみんと一緒に黙々と食事を再開する。
何を落ち込んでいるのかは知らないが、目立つから頭の上のコップを下ろしてからにして欲しい。
「あっはっは!面白いねキミ!
ねえ、キミがダクネスが入りたがってるパーティーの人?有用なスキルが欲しいんだろう?盗賊スキルなんてどうかな?」
それは、横からの突然の声。
見ればそこには二人の女性がいた。
一人は昨日俺に話しかけてきた金髪の女騎士。
もう一人は、スレンダーな体に銀髪、頰に小さな刀傷がある美少女が立っていた。
「えっと、盗賊スキル?どんなのがあるんでしょう?」
「よくぞ聞いてくれました。盗賊スキルは使えるよー。罠の解除に敵感知、潜伏に窃盗。持ってるだけでお得なスキルが盛りだくさんだよ。キミ、初期職業の冒険者なんだろ?盗賊のスキルは習得にかかるポイントも少ないしお得だよ?
どうだい?今ならクリムゾンビア一杯でいいよ?」
安いな!
「よし、お願いします!すいませーん、こっちの人に冷えたクリムゾンビアを一つ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この盗賊の女の子は、クリスと言うらしい。クリスはとても優しく親切で、今回は俺に《敵感知》と《潜伏》、《窃盗》のスキルを教えてくれた。
ちなみにあの女騎士はダクネスと言うらしい。
もちろん、みなさんご存知のあの事件も起きたので、俺の財布は今、それなりに潤っていた。
ギルドに戻ってきた俺とダクネスを、めぐみんが一番に出迎えてくれた。
クリスは俺に金を奪われたので、臨時の稼ぎのいいダンジョン探索に参加すると言って走って先に行ってしまった。
「おかえりなさいカズマ。それで?カズマは無事にスキルを覚えられたのですか?」
……ぐはっ!
……駆け寄りながらのおかえりなさいは、ろくに恋愛経験のない童貞にはキツすぎる!
「あ、ああ。難なく覚えられたぜ。なんなら見てみるか?」
「ええ、ぜひ見せてください。」
まあ、さっきはあんな事になったがさすがに連続ではならないだろう。
「ふふ、まあ見てろよ?いくぜ、『スティール』ッ!」
俺は叫び、めぐみんに右手を突き出すと、その手にはしっかりと黒い布が握られていた。
そう、ぱんつである。
「あ、あれっ⁉︎お、おかしーな、こんなはずじゃ……。ランダムで何かを奪い取るってスキルのはずなのに!」
自分でも自分の運の良さ?悪さ?にびっくりしていると、めぐみんがモジモジしながら……
「……そんなに私のぱんつが欲しかったのですか?……それなら言ってくれれば別にいくらでも……。」
「「「えっ⁉︎」」」
俺とアクア、ダクネスの声が重なる。
おそらく俺だけ、その言葉に込められた感情が違うが。
「な、何を言っているのよめぐみん。嘘よね?冗談なのよね?
あ!それともあれかしら?カズマさんにぱんつを持って行かせて警察に捕まえてもらおうって魂胆なのかしら?」
「そ、そのようだな。その瞳を見たところ紅魔族のようだし。さすがだな!この短時間でそこまで考えてしまうとは!」
「い、いえ。私は、…その。カズマのことが……!」
めぐみんが何かを言いかけた時、
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
町中に大音量のアナウンスが響き、めぐみんの声はかき消されてしまったのだった。
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