第4話:始まりの裏側
今回は3話の後半のカズマ視点バージョンです。
俺たちはつい先程、新しいパーティーメンバーであるめぐみんを連れてジャイアントトードのクエストを終えてきたところだ。
後ろではアクアが泣いていて、俺の背中の中ではめぐみんが知りたくもない知識を教えてくれていた。
ヌメヌメしてるけどスゲーいい匂い。なんで女の子ってみんないい匂いするんだろうな?
まあそんな事は置いといて、問題は爆裂魔法だ。
あれは一度使ってしまったら全ての魔力を使い切って倒れてしまうらしい。
今後は別の魔法で戦ってもらおう。
爆裂魔法は緊急の時だけにしよう。
「今後、爆裂魔法は緊急の時以外禁止だな。これからは、他の魔法で頑張ってくれよ、めぐみん」
そう言うとめぐみんの肩を掴む手が少し強くなった気がした。
「………使えません」
「………は?何が使えないんだ?」
思わず聞き返してしまった。
でも、理解できないのだから仕方がない。
今の流れからして一個だけ思いつく事はあったが、流石にそれは無いだろう。
と思っているとさらにいっそう、めぐみんの肩を掴む手に力が入った。
「……私は、爆裂魔法しか使えないんです。
他には一切の魔法が使えません」
「……マジか」
「……マジです」
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
しかし、どうしたものか。
まさか爆裂魔法しか使えないとは。
………しかし、爆裂魔法だけか。
………はっきり言うと、使えない。
あんなどっかの国の最終兵器みたいな魔法、確かに、どんな相手でも一撃で倒せるかもしれない。
しかし、オーバーキル過ぎる。
しかも、範囲が広いから敵が近いと使えない。
あの威力では、下手したら味方も巻き込んで大事故になってしまう事もあるかもしれない。
利益に対しての不利益が大き過ぎる。
と、まあこれが普通の人なら速攻追い出すだろう。
しかしこの子はめぐみんなのだ。俺の、人生初の一目惚れの相手である。
そんな相手を俺が、このカズマさんが手放すわけないだろうが。
めぐみんが『こんなパーティー嫌だ!』と言おうが俺は絶対手放さない。
などと考えていると、これが口に出てしまっていたようだ。
危ない危ない。前半部分ならまだしも、後半部分はまだ聞かれたくないしな。
てか、今からでも他の魔法を覚えればいいんじゃないか?
めぐみんは爆裂魔法にぞっこんぽいから無理かもしれないけど、一応聞いてみるか。
別に爆裂魔法しか使えなくてもウチのパーティーの最終兵器にすればいいだけだし。
「なあ、他の魔法を覚える気は……」
「ありません。私は爆裂魔法をこよなく愛するアークウィザード。どんなことがあっても爆裂魔法以外の魔法を覚える気はありません。」
「お、おう。……そっか。」
やっぱりダメか。
でもまあ可愛いから許す!それにいい匂いだし!それに可愛いし!爆裂魔法使った後にはおんぶできるし!それに何と言っても可愛いし!
「まあいっか!これからよろしくな!めぐみん!」
「いやです!見捨て……え?いいんですか?このままパーティーにいても?」
まあ、予想通りの反応だな。
ここで俺が優しくてかっこいい言葉をかけてやれば、もうめぐみんは落ちたも同然だろ!
よし!ここは一発決めてやるぜ!
「ああ、いいよ。最初こそは爆裂魔法しか使えないなんてどうかな、とも思ったけれどさ。
でも、逆にその歳でそんな荊の道を突き進んでるんだって考えれば、凄えなって思ったんだよ。どうせ他のパーティーでは追い出されてきたんだろ?いいよ。俺がこれから、面倒見てやるよ」
フッ…。決まった…。
これでめぐみんは落ちたな。
そして明日からはめぐみんからの猛アタックが始まるだろう!
……なんだ?背中に『子供の時に、夢でお風呂に入った後に起きる大惨事』と同じ様な温かみが……。
その温かみを不思議に思い、肩越しにめぐみんを見てみると……
「うっ……うぐっ……ぐすっ……」
めぐみんが泣いていた。
あれ⁉︎なんで⁉︎そこは頬を赤らめて上目遣いで、『ありがとうございます。カズマは優しいんですね』とか言ってちょっと強めに抱きしめて来たりするところだろ!
「お、おい!なんで泣いてるんだ?待ってくれよ!周りからの視線が痛いんだよ!」
そう。カズマ達は今、はたから見ればすごい光景なのだ。
男一人と女二人の三人組のうち、女二人は得体の知れない粘液まみれ。
そのうちの一人は男におぶられ泣いているのだ。
それを見た近くで歩いていたおばさん達が、
「見て!あの男、女の子二人をヌメヌメにしたあげく泣かせてるわよ。クズね!」
「うわー。しかも泣いてる女の子はまだ14歳なってないんじゃないの?カスね!」
などと言っている。
違うんです!ヌメヌメはカエルのせいなんです!
めぐみん泣いてるのは俺のせいだけど!
心の中で届かない弁解をしていると隣から、
「あー!カズマさんたら女の子泣かせたわ!つい最近まで引きニートだったくせに!」
俺は何故かこいつから言われるのだけは許せなく
「うっさい!黙れ駄女神!」
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