アリスと夢の黙示録〜アリスが描く饗宴録〜

幽谷澪埼〔Yukoku Reiki〕

第一節 「目が冴えた」

第一話『ユメはいつでも唐突に始まりを告げて』


***本編***

「だーかーらぁー、君のユメは不味いの! 物凄く! 反吐が出るくらいに!」

「そ、そこをなんとかぁぁぁ…」

「断る! 往生際の悪い、さっさとね!!」

「いたっ! 何す…へぶっ!」


べしっと扇子の先ではたかれる。その上分厚い辞書が顔面を直撃したため、痛いことこの上ない。


「良いからさっさと帰れ! 無駄なユメを喰らう暇なんて、自分は持ってない!」

「ひ、酷い…」

「もっかい欲しい?」


凄むような冷たい瞳で見据えられて、ゾクッと身体を震わせる。


「モ、モウイイデス…」

「うん、自分に相手して欲しいならもっと美味しいユメの話をする事だね」

「ええぇ……」

「まぁ無理だろうけど」

「うぅ……お邪魔しました…」


すごすごと背中を丸めて帰る男に着物姿の少年は、煙管をふぅ…ッと蒸した。


「……今も昔も、馬鹿なユメを所持する持つアホゥが居るんだねぇ…?」

「──ソレを喰らう事をアナタは極端に嫌がるじゃないですか、悪夢ならばともかくとして」

「なァんだ居たの?」

「──居ましたよ、随分前から」

「そ…聞いてた感想どーぞ?」

「──彼の友人が夢魔に取り憑かれてますね」

「へぇ…?」

「──行きますか?」


ガチャッ

手足の枷を揺らしながら、少年は立ち上がり、言った。


「──さぁアナタのユメは何色かな?」

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