第17話野菜娘
蜂のサナギは擬人化しても、寝袋に入った状態だった。小麦のようなクリーム色の髪は寝癖で爆発している。
あと複眼という特徴をかけているのか、メガネをしている。度が強いと横から見た時に、目が増えたようになるからな。
ところで……寝袋は服に入るのか?
エプロンやネクタイは何となくわかるが。
水着や裸ワイシャツの類い、と思っておくべきか。
「んあー、何か用?」
「俺の作る畑で、働いて欲しい」
「ダルいなぁ。
「わかった。給金は現物支給の花粉や樹液でいいな?」
「巣を作るのに良い土も欲しいねー」
「用意しよう。そうだ、お前には女王蜂をやってもらう。名前はモッチーだ」
「働かなくてもいいのか。……オスはどこに?」
「この中に居ると思う」
スライム・ボックスの中に居る、サナギや芋虫達を見せる。
居る確率は、たぶん高いはず。
「おー。ショタや男の娘も居るかぁ。いいんじゃない?」
「摘まんで出してくれ。流石にわからん」
「んー。このサナギで、よろしくー」
「名前はどうする?」
「遺伝子が詰まっただけの奴に、名前なんていらないでしょ。すぐに追い出すしぃ」
辛辣と言いたいが、蜂の社会ではオスって、ただのプータローなんだっけ。
まぁいいや、コイツを隔離しておこう。
うっかり実験台にでもしたら、モッチーに刺されかねん。
壺毒で生き残った芋虫を擬人化させる。この子は蜂の芋虫で、メスだ。というか、女王蜂と働き蜂はメスがほとんどを占める。
モッチーと同じようなクリーム色の髪を、ボーイッシュにしている。服装は半袖短パンで男の子っぽいな。
「プロポリスという名前をやろう」
「蜂の巣に塗る抗菌作用の液体ですか。安直ですね」
「モッチー二号でもいいんだぞ?」
「あんな堕落したのが女王蜂ですか……あぁ~心がぴょんぴょんするんじゃ~」
「頑張り過ぎて、ちょっとおかしくなったか……」
夕立が居ない間、テリトリーの警護を任せよう。ポリスだけにな。
次の日、ブッキーに擬人化魔法を照射してみる。
服や髪をオートで作り出す術式があるので、衣服を作るよりも、はるかに安上がりだと気付いたのだ。
「私もセーラー服なんだ」
「夕立と同じっぽい」
「色が違うだけじゃなく、セーラー服の種類も違うんだが……」
服装用の魔法陣でも作っておこうかな。本人の魔力を具現化させているので、着たい服を思い描くだけで済み、早着替えも可能。そう、魔法陣の形をしたクローゼットである。
ふむ、エルフと交渉して、衣服や小物類のカタログを取り寄せるか。
芋を食べているブッキーを見て、芋の苗を擬人化してみようと思う。
他意はない。ほぼ茎だけだが、どこまで適用可能なのかを調べるためだ。
ゴーレムは出来た。石はある程度の大きさと、魔力が無いと出来なかった。
草花や木は、石よりもずっと簡単だ。魔力をほんの少しでも持っているからだろう。
大根や野いちご、タンポポやその種、ドクダミっぽい植物等は、きちんと擬人化してくれたし、野菜や果樹、根菜や竹、花とかの世話をしてくれている。
勿論、芋も擬人化させた。
その上で、ブッキーは焼きやがった。焚き火も擬人化に合わせて、デカくする念の入れようである。
断末魔は、あの世で食ってやるーっ! だそうだ。
それはそれは、壮絶な最後の表情をしていたので、正気度が下がったと思う。擬人化が解けた焼き芋は、中々に美味かったらしい。
山吹色なんかは、人参を擬人化した上で、お手製ノコギリにて、気絶すらさせずにぶつ切りにしやがる。
夕立は玉ねぎの擬人化した奴を、まるでボールのように、なぶり殺しにしている始末。
モッチーは、ブッキーと一緒に焼き芋を食べて、知らんぷりして寝てる。
プロポリスは、目ーターがゼロになり、立ったまま気絶中なう。からの、スヤァア……。
阿鼻叫喚の地獄絵図を体現した、プラント・テリトリー。
プラントをプラントするから、共食いは許容範囲だ。しかし、擬人化させる必要性は皆無である。
どうしてこうなった……。
芋の茎は擬人化した。まだ幼い女の子の姿だ。
それをきちんと確認する暇もなく、ブッキーがただのバットで神スイングし、一撃で葬り去る。
首から上は、体から離れた瞬間に茎の一部へ戻り、一拍遅れて体も残りの茎へと巻き戻る。
「あ、やっちまった。かすらせる程度にするつもりだったのに」
「おい、おいぃいい! 何してくれてんの!?」
「外周一食です」
テメェはどこの妖怪ボーキくれだ!
「ぽい。ブッキー、この大根が治療して欲しいっぽい」
「あら。よーし、この果実酒で消毒しましょうか」
ドSな笑顔を張り付けて、どこからか果実酒を蒸留させて作った、エタノールモドキが入った、スライム・ボックスを取り出す。
止めて、植物にそんな毒を毒で洗うような真似は!
毒の上書きは劇物にしかならんのだぞ!
毒を持って毒で制する事や、中和する事はムリだから!
「ひ、ひぎぃいいい!」
痛みからなのか、泡吹いて首から上が前に倒れる。
だが、ブッキーは気絶してなお擬人化中の、野菜な娘を張り手して叩き起こす。
その際に出た鼻血は、優しく止血してやるようだ。
けど、消毒という痛みを味合わせる事は、嫌がっても止めない。
む、酷い。いや、酷い……。大根に何の恨みがあるんだ。
山吹色に、擬人化した野菜を、生きたままというか、意識があるまま料理する意味を聞いてみた。
「野菜娘や果物娘が、我々に逆らわないようにするためだのう」
擬人化した野菜を野菜娘、果物なら果物娘、肉食や食虫植物はモン娘と呼称している。
ちなみに擬人化を解くには、擬人化状態での致命傷を負う以外にも、本人の魔力が切れるか、俺やブッキー、山吹色の誰かが解くか、第三者が解呪するしかない。
そして、大抵の野菜娘は、俺が最初のコミュニケーションで、命令に従わない場合の処罰を教えている。
だから、実演する意味がないのである。
そりゃあ、こうして見せしめにする事も必要だとは思うが、何も初っぱなから心を折りに行くのは、どうかと思うぞ。
お陰で他の野菜娘や果物娘達は、怯えきっている。次ないしは、明日は我が身だと思ってしまうのも、ムリからぬ事だろう。
焼き芋を作る際の煙は、テントと枝葉を交互に重ね合わせたモノを、五重くらいの層にして、円錐形の屋根で受け止め、煙が洩れにくくしてある。
料理される野菜娘やモン娘の絶叫は、微弱な防音の結界を、間隔を空けて展開させる事により、拡散しても聞こえにくくしている。
音は地面の中も真空にしないと、振動が地面を通して伝わってしまう。
盲人が使う白杖は、杖から伝わる衝撃と音で、点字ブロックの有無が分かると言う。
また、骨振動もあるので、単純に声や振動を消す装置を用いたとしても、例え盲目な剣士が相手だろうと、勝てるとは限らない。現代版座頭市な盲目の剣士は、僅かな振動をも見逃さず、相手の変化に対応していた事だし。
ま、僅かに洩れる音や煙を見掛けたとしても、近付いたらプラント・モンスターや、モン娘の餌食になる訳だが。
大根を根っこと葉っぱに別けて、それぞれ擬人化すると、根っこが幼く、葉っぱが大人びている姿をしている事が多い。
木を枝、葉、幹、根、果実、花、種と七つに別けたりもした。切り株は根っこに分類されている。
枝から切り離され、枯れかけた葉を擬人化したら、肌が土気色をしていたな。
丸太で作ったイスやテーブルも、きちんと擬人化した。
残念ながら、枯れた葉っぱや根っこ、草花は擬人化しなかった。
モンスターの死体や骨、毛皮に内臓は擬人化出来たのだが。
で、擬人化した者は魔力を自分で回復できなければ、体内の魔力が枯渇してしまい、擬人化できなくなる。そればかりか、品質が急激に劣化していく。
加工されたり、切り離されたりした擬人化キャラは、魔力を回復する機能が欠如しているので、擬人化していられる時間も短いし、枯渇してから魔力を外部より供給させようとも、二度と擬人化しなくなる。
植物の場合は、葉っぱと根っこが繋がっている擬人化キャラのみ、枯渇状態から魔力を供給すると、擬人化していた記憶を持ったまま、無事に復活出来た。ただし、品質は落ちるし、擬人化状態のスペックも下がるようだ。
切り離されたりした者に対し、途中で魔力を供給させても、擬人化は長続きしなかった。
まぁ、言い方は悪いが、クローンとオリジナルだと思えば、短命なのも納得出来る。
竹の擬人化キャラは、長身痩躯な女の子。小物に竹刀を持っていた。
栗の木はぽっちゃり体型の女の子。
杉の木は細マッチョ系で、スポーツ女子のようだ。
木には広葉樹や針葉樹という種類があり、体型はそれで決まっているのだろう。
紅葉や銀杏、桜の擬人化キャラは、四季彩豊かな髪とバリエーションがあった。まぁ、桜に似た植物だったり、季節外れだったりしていたが、流石に樹木となると大人びている。
栗や杉も大学生のような雰囲気の、擬人化キャラだったし。
ちなみに、種の擬人化キャラは、草花や樹木に関係なく、どれも赤ちゃんだった。
プラント・モンスターの擬人化キャラは、髪に養土型や釣り型の特徴が現れる。まぁ、これは野菜娘とかもそうなんだが。
ほとんどがブッキーの配下な事もあってか、手慣れた様子で、人間の肢体を器用に動かしていた。
しかも山吹色と俺に従順なのだ。
「もし裏切ったら、即座にブッキーへと身柄を引き渡す」
「ご冗談を。森の守護を担うお方の期待を、裏切る真似は致しません」
一応、念の為とはいえど、釘を刺しておくのも忘れない。
コイツ等が謀叛を起こしたら、俺はじり貧な戦闘を免れないな。
魔力の供給用兼搭載用として、岩や土のゴーレムが背部に、野菜娘や果物娘をマウントしておく。
ゴーレムには芋虫の動き方や、蜘蛛の歩き方を取り入れ、多脚歩行による重心移動を会得させておいた。
二足歩行のゴーレムよりも動きは遅いが、どんな場所でもバランスが取れる上、使い捨ての砲身から、油や種を発射したり、追尾や回避の為に、安定した旋回をする事が可能という利点がある。
二足歩行だと、重心が上半身に傾きやすく、転倒しやすいのだ。
とは言え、多脚のままでは怪しまれてしまう。普段は土や岩の隙間に、根を決めた通りに張り巡らせて、普通のゴーレムのように見せ掛けておく。これで見た目は多目的なキャリアーから、何処にでも居るようなゴーレムだ。
根を張る事で、土や岩が擦れて出来る砂利が強固になるため、頑強にもなる。
仲間である果物娘やモン娘も、植物同士の共生関係として、背中にマウント出来る。
そんなこんなで、俺とブッキーが主に動きつつ、擬人化キャラ同士を共食いさせたり、拷問とかで解体して肥料にしたり、野菜娘でも使えそうな武器を、モンスターや動物の骨、皮を用いて独自開発したりと、ここ数日間は何かと忙しかった。
まぁ、モン娘や果物娘とかのお陰で、装備品はねずみ算式に増えるから、最初の試作品を作るだけなんだが。
これからは種を植えたり、虫や鳥に受粉を手伝って貰ったり、ゴーレムで耕したりして、野菜娘や畑を増やしていこう。
その若葉や苗を守るのは、主にモン娘達が駆るゴーレム。武装は触手型と釣り型の植物の一部を、武器として使えるように変異したものを取り入れた。魔法陣を刻み、専門的な部分を組み換えてあるので、まったく違う型のモン娘でも扱える。
例えば触手型用の武器を、消化型が使えるのだ。
まず、釣り型で魅惑して誘き寄せ、触手型の棘胞にて毒を注入し、麻痺させて動けないようにしていく。こうする事で、野生動物や昆虫の素材が、ほぼ確実に手に入るようになる。
養土型や寄生型とは合わなかったので、生かしたまま捕縛する能力は無い。
遠距離は砲撃し、接近戦は竹槍にて突き刺す。
そう言えば、野菜の中には毒を持つモノがある。その毒の作用は実に様々で、症状によって薬の処方は当然違う。解毒魔法も万能に効く訳ではないので、睡眠作用の成分は解毒しないとか。
例えば、ジャガイモの芽と未成熟なユウガオでは、その毒性が人体に効くかどうかから違う。まず、ジャガイモの芽を食べると、必ず食中毒になる。だが、ユウガオは食中毒を起こす人と、起こさない人に別れてしまう。
竹槍に、そうした毒を塗り込んでおくのも、悪くないな。
野菜娘達の最大の天敵は、芋虫やバッタ等。
その対策として、野菜娘が一人でも操れる程度の、魔改造を重ねて小さくしたゴーレムで、駆除する方法を採った。
このゴーレム、石の擬人化キャラが参考になっている。
ちなみに、石が擬人化したキャラは、元となりそうなゴーレムとは、互換性が無くなるようなので、改修や予備パーツにならない。そこで、ゴーレムの整備員を担当してもらっている。
そんな小型に寄生するかの如く、野菜娘達は根っこをゴーレムの表面に張る事で、触覚モドキとしており、これによって繊細な作業や力加減が出来るのだ。
傷ついて土が足りない場合は、ミニ・ゴーレムのリペを、根っこによって可能であるし、ミニ・ゴーレムそのものを、普通の大きさなゴーレムの、修理用にも使えるだろう。
しかし、マウントする野菜娘や果物娘が多いと、核が大気や土に含む、魔力を吸収するより消費が上回る。
動ける擬人化キャラは四人まで乗せ、残りはそのまま背部に植えておくか。
ゴーレムは擬人化させると、土、泥、岩、共にスタイリッシュな体躯をしている。
容姿は人間に近く、それでいて人間離れしたパワーとスピードを持つ。もうこれオートマトンじゃね?
つーか、髪は背部に植えていた野菜だよな?
何もないと、スキンヘッドなのだろう。黒服着せて、ガードマンにしておこうかな。
「こちら、野菜と果物のミックス・ジュースです」
「うむ。苦しゅうないぞ」
「こちらは今朝採れ立てを使った、サラダでございます」
「おぉ、我とお前等で採ったヤツか」
黒服はいつの間にか、山吹色にかしづき、ホストと客っぽくなってらぁ。
元々が主従っぽい関係だったから、別にいいんだけどね? 確かに客分だし?
いつまで居座るつもりなんだ、このドラゴンは。
客分なのに働いてもらっている事だし、メイドなドラゴンとして、雇用した方がいいのか?
「ところで、山吹色はテリトリーを、ほったらかしなんじゃ。大丈夫なのか?」
「ここと合併させてある。ブッキーも異論ないようなので、巡回はゴーレム達がやってくれておるぞ」
客分じゃなかった。メイドなドラゴンと変わらないじゃん。見たかぎり、ここんところお仕着せ着てるし。
でもメイドの仕事はしていない。そもそも、屋敷とかキッチンとか無いからな。
ほとんどが魔法陣の集合体で賄える。
魔力を貯蓄するような結晶の球体も作ったし、それに連結する魔法陣を描き、一定の場所で擬人化キャラが、瞬時に魔力を回復出来るようにもした。
勿論、それとは別に擬人化キャラ達用の風呂として、変形させたゴーレムを魔法陣で焼き、煉瓦のゴーレムな五右衛門風呂を作った。
その過程でちょっと実験したら、、石の擬人化キャラが焼き物となったり、ソイツ等を量産したりもしている。
野菜娘達が入ると、鍋モノに見えてしまうのが、たまにキズだ。
ちなみに、連中が入った後の出汁、いやいや、残り湯は畑の水やりに使う。
土のゴーレムが擬人化したヤツも、問題なく入っていたので、ちょっと安心した。
そうそう、ゴーレムの擬人化キャラは麗人の女性だ。男装がよく似合っている。スキンヘッドなキャラもいるが、女の子なのだ。
しかしながら、凹凸はあっても、内臓等の中身までは、流石に再現されていなかった。
解剖して初めて分かったのだが、擬人化キャラは全て、骨格と筋肉のような部分が大半を占めている。
それ以外は核と魔力の貯蔵庫、魔力の生産をする部分のみ。頭部は髪、眼球、歯と舌、脳部分に予備の核だけ。予備が無い場合が多い。
飲み食いしても大丈夫なのは、筋肉部分が分解と吸収を行い、全て魔力に変換しているから。残りカスすら出ない仕様だ。
血飛沫の正体は、放出される魔力が、自動的に擬似血液へと変換されているので、血が流れているように見えるだけ。つまり、エフェクトだった。
致命的なダメージを負うと、元の姿に戻るのも、擬人化キャラの外殻部分が無くなるため。魔力で外見を取り繕っている以上、枯渇したらそれまでなのも頷けるというもの。
結論を言うと、擬人化の魔法陣は、幻術の類いだった。
人に見えるが、人間にあらず。
無機物は魂の変わりとしてか、魔力の消費量が多い。有機物は少なめだが、どちらも魔力がなければ擬人化しない。
細分化させても、合体機能とかは無く、その場かぎりの存在となる。
女王蜂のモッチー等、自我がある生物は、擬人化が定着しやすい。定着すると、好きな時に虫化や獣化が出来るようになる。
獣化や人化の他に、イスなどの物体化も存在するだろう。
アルウラネのブッキー等、人間の部分が元からある場合、より精密に作り変えられる。作り変えると言っても、本人を感知する相手の五感全てを、距離を問わず誤魔化している状態だ。これは擬人化した本人が、相手を認識するしないに関わらず、常にパッシブで狂わせている状態でもある。
そしてその欺瞞は、相手だけでなく、本人にも影響を及ぼしているようだ。
例えば、元の姿では尻尾がある夕立は、尻尾の存在すら忘れていたりしている。ブッキーも下半身の植物部分を、忘却したかのように戦闘を行い、触手を召喚したりすらしない。
自分も騙し、相手をも騙す。故に非常にバレにくい。
また、術式を少し弄るだけで、変装用にも使える。
大泥棒や怪盗の如く、顔を特殊メイクした感じになり、素顔を偽れるのだ。
欠点は、身の丈に合わない変装をすると、感覚に齟齬が生じやすくなり、動きがちぐはぐとなる。
これを分かりやすく例えるなら、VRMMOのキャラメイクだろう。
山吹色でも抵抗に失敗すれば、擬人化キャラの外殻と本人の姿を、見抜けなくなるとか。
魔力があっても擬人化しない場合は、抵抗されているか、無効となっているので、変化がないだけとなる。
まぁ、結界の種類によっては、効果が打ち消される事もあるだろうし、よくて半減となるかだな。
「擬人化キャラに女性が多いのは何故だ?」
「女性の方が、何かと便利だからであろう。関節が柔らかいとか、オシャレしやすいとか。男を騙しやすいとかもあるのう」
「何処かで聞いた事があるぞ、ソレ」
「魔法陣に性別を付け加えておけば、男の子も発生しやすくなるだろう」
「……それだ!」
蜂はメスが多いから仕方ない、植物はフタナリっぽいし。
でもゴーレムまで女性だったのは、魔法陣に性別の有無を付け加えていなかったからだ。
と言うか、無機物に性別もクソも無いが。
ほぼハーレムっぽいが、俺の肉体も女の子。残念!
「そうそう、ブッキーがお主を婿にしたいとか、寝言をほざいておったな。どっちも雌雄同位体だろうに」
「俺のケツが狙われている!?」
「貞操の間違いじゃろ。とか我は突っ込まんぞ」
「あ、そうだ。花粉だけ渡しておけば良くね?」
「モッチーの配下が略奪して、老子にブッキーが迫る。説得して宥めるまでがセットのループ・エンドか」
山吹色は努めて冷静に、起こりそうなフラグを挙げ連ねる。
「天丼って、実際に起こると怖いよな……」
「精神を病むか、押し倒されるか、触手で調教されるか?」
「ほぼ一択で固定されてるぞ。傍観してないで、助けて山吹モン!」
「先手必勝、やられる前にやるほか無い」
「なんでやねん!」
どうして交際を前提に、結婚しなければいけないんだよ!
手順が逆だろうが!
「老子よ、人間基準で考えるな。植物基準で考えるのだ」
「なんか騙されてしまいそうだが、それは一考の余地があるな」
「だろう?」
ここは直球勝負で、ブッキー本人に聞いてみよう。
たぶん、肝心な事は誰も喋らないんだろうし。
そういう流れなんだろうなぁ。
ラブコメって七転八倒からの、元鞘に戻るから面白いのであって、現実は勘違いのまますれ違って終わるもの。
あー、ヤダヤダ。恋愛経験ゼロの俺に、恋愛しろって無謀だよ。
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