ステージ・オブ・ミッドナイトウルブス

加奈子:それではそろそろ、わたしたちの暮らすこの世界について、いろいろ解説させていただきます。


純:プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」とは、ちょっとだけ違う世界なんですよね~


加奈子:そうです。この世界には、プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」にはない自治体や企業、山や川や峠がありますし、プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」にある自治体や企業、山や川や峠がなかったりもします。でも、そこで使われている法律や技術、物理法則なんかには、ほとんど違いがありません。要するに、フィクションの世界でよく見られる「架空の日本」という認識で問題はないということです。


純:な~るほど。


加奈子:ではまず、わたしたちの地元の自治体、「葦原県あしわらけん」についてお話ししますね。


純:おっけーです。


加奈子:わたしたちの住む「葦原県」は、プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」では、「長野県」の南信地方に当たります。具体的には、「長野県」にある「木曽」「諏訪」「上伊那」「下伊那」地域をまとめた範囲といったところです。


<i311212|8863>


純:でも、プレイヤーのみんなが知ってるその地方とは、全然別物なんですよね?


加奈子:そう。プレイヤーの皆さんが知っている該当地域とは、まったく違う行政区画と地理・地形とを持っているわ。


純:つまり、その地域に住んでいるプレイヤーのみんなにとっては、自分の地元がなくなっちゃうってことになっちゃうわけですか?


加奈子:ええ、残念ながら。そのことに関してはごめんなさいとしか言い様がないわね。


純:デザイナーに成り代わり、ごめんなさいを言わせてもらいます。


加奈子:では解説を続けさせてもらいます。「葦原県」は北側を「長野県」、西側を「岐阜県」、南側を「愛知県」と「静岡県」、東側を「山梨県」に面した内陸県です。山岳地や丘陵地が多いため、可住地面積は、それほど多くありません。県庁所在地は「武蔵ヶ丘市」です。「武蔵ヶ丘市」は、プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」においては「長野県」の「上伊那地域」に位置します。


純:あたしたちや壬生さんたちが暮らす街ですね。


加奈子:そして、この「武蔵ヶ丘市」に近隣しているのが、新興の産業都市として発展してきた「桜野市」 です。「桜野市」は、プレイヤーの皆さんが暮らす「日本」においては「長野県」の「下伊那地域」に位置します。


純:そして、そのふたつの市を結ぶのが、物語の舞台となる走り屋の聖地「八神街道」というわけです。


加奈子:「葦原県」は至るところに山があるので、鉄道による交通網が都会に比べて希薄です。そのため、主な交通手段は、バスやタクシー、自家用車ということになっています。クルマがなければとても不便な土地柄なので、この地方に住む若者は、取得可能年齢に達したら免許を取ってクルマを買うのが、ほぼ常識となっています。一家に一台どころか、一人に一台があたりまえと言っていい状態です。


純:通勤なんかは、自家用車が必須ですしね~


加奈子:そのおかげで、2000年代の初頭までは、いわゆる「やまの走り屋」が、それこそ至るところに生息していました。雰囲気的には、某有名漫画で描かれた「群馬県」のような感じでしょうか? ただ大都市圏に近いあの地域と違って「葦原県」は人口密度の少ない田舎で観光地でもなかったので、警察の取り締まりや路面対策などは、他県の有名スポットほど厳しいものではありませんでした。そのため、2010年代半ばを過ぎた現在でも、いくつかのスポットでは、まだ峠を走るロードレーサーたちをギャラリーすることが可能となっています。


純:言うまでもない違法行為なんですけどね(汗)


加奈子:葦原は、過疎化の進む貧乏県ですしね。キャッツアイとかセンターポールとかの路面対策に関しては、雪が降ったとき除雪の邪魔になるとか、費用対効果がよろしくないとか、いろいろと大人の事情があるんじゃないかしら。


純:作者の側のご都合設定だったりして──…


加奈子:シーッ! それは言わない約束よ。


純:はい……


加奈子:じゃあ続いて、作中に登場する主な峠の解説をしていきましょうか。まずは「大鳴山」から。


純:「カイザー」の本拠地ですね。


加奈子:ええ。「大鳴山」があるのは「諏訪地域」の南東部、「山梨県」との県境に近い場所です。コースの流れはヘアピンの連続。グリップにもドリフトにもぴったりで、夏になれば、ほとんど毎日、お祭りのようにギャラリーが集まるという話です。


純:でもその分、取り締まりもキビシーんですよね。


加奈子:そうね。夏の間は平日休日を問わず、パトカーが毎晩見回りに来るそうよ。


純:ふえー。


加奈子:走り屋の質は「玉石混合」 有名なクルマも常連のチームも数え上げたらきりがないレベルですが、そのかわり、マナーの悪い走り屋も結構いると聞いてます。初心者が独りで行くのはちょっと無謀かなって感じですね。なお、最速タイムの計測記録はありません。もっとも、チーム単位ではいろいろ記録があるみたいですけど。


純:了解です。


加奈子:続きましては、その南側にある「青田山」と「中西旧道」です。以後は、ふたつまとめて「青田山」と呼びます。


純:「SNK」の本拠地ですね。


加奈子:「青田山」があるのは、「上伊那地域」の北東部、「諏訪地域」との境目ぐらいの場所です。道幅の狭いワインディングロードでグリップがメインとなるコースですが、たまにドリフトするひとたちもいるようです。走り屋の質は「知る人ぞ知る」 あんまり目立たないスポットのせいか、ギャラリーどころか取り締まりのパトカーも来ません。有名なクルマや常連のチームなども一応はいるようですが、外ではほとんど耳にしませんね。その分走り屋のマナーも良く、どちらかといえば初心者向きのステージと言えます。最速タイムの計測記録はありません。こちらもまた、いくつか非公式タイムがあるようですが、はっきりしたことはわかりません。


純:遠征してみたくなりますね~


加奈子:さて次は、「pixiv走り屋」の舞台にもなった「火久士武ひくしぶ峠」です。


純:「コラボ作品」のステージになったところですね。


加奈子:そうね。興味のある方は、ぜひ「pixiv走り屋」のほうにも行ってみて欲しいわ。


純:あからさまな宣伝乙です。


加奈子:こほん。では解説を続けます。「火久士武峠」があるのは、「上伊那地域」の南東部、「静岡県」との県境付近です。ちょっときつめのコーナーと長いストレートが特徴で、峠としては道幅が広く、路面状態も比較的良好です。コースとしては、グリップもドリフトもどちらも楽しめるレイアウトじゃないでしょうか。


純:最近ではイチオシのステージなんですよね。


加奈子:ええ。走り屋の質は「まったり派」 いまのところ個人で走る常連はいても、チームその他はほとんど結成されてないようです。走り屋の戦場というよりは、クルマ好きのたまり場といった感じでしょうか。ですから警察の取り締まりも月に何度か見回りが来る程度で、たいしたものではありません。もちろん、最速タイムの計測記録などはありません。タイムを計るという思想自体がないみたいです。ただし、今後の展開次第ではどう転ぶかわからない微妙なステージでもあります。個性的なメンバーが増えてくると、一気にそちらへ振られるかもしれません。


純:ニューカマーの態度次第ってことですね。


加奈子:じゃあ最後に、走り屋の聖地「八神街道」の解説をします。


純:待ってました!


加奈子:わたしたちの地元「八神街道」があるのは、「上伊那地域」の南側から「下伊那地域」に至るあたりの丘陵地帯です。大小のコーナー&ストレートで構成された複合的なコースで、どういうわけだかドリフトはあまり盛んではありません。峠道というよりは文字どおりの街道なので、道幅も広く路面状態も良好です。走り屋の質は「ストイック」 聖地と呼ばれるだけあって有名なチームや実力派の常連も多く、いち時期は雑誌の取材なんかも来ていたそうです。タイムアタッカーがメインでドリフターの数が少ないため、週末のギャラリーに関しては一部コーナーにちらほらといったところでしょうか。警察の取り締まりもないわけではありませんが、いまのところは「忘れたころにやってくる」といったレベルです。


純:有名どころの割に取り締まりが緩いのは、ドリフトが盛んじゃないからなんですかね?


加奈子:そうね。ドリフトなしだとパフォーマンス目当てのギャラリーが集まらないし、警察としてはパトカーの定期巡回で事足りてるって評価なのかも。それにタイムアタックがメインとなると、走っているクルマの密度も粗くなるし。


純:それなりの時間真夜中になるまでは、結構交通量も多いですしね~


加奈子:なお、ドリフターが少ない分、サーキット並みとは言いませんけど、最速タイムの公式記録は詳細です。トップタイムだけでなく、ベスト10ぐらいまでは記録されてる感じですね。もっとも、わたしたちみたいな温めの走り屋にとっては、身内が絡まない限り、ほぼどうでもいい情報なんですけど。


純:ちなみに2015年開始時点でのタイトルホルダーは、「青い閃光シャイニング・ザ・ブルー」こと、我らがエース・三澤倫子です!


加奈子:壬生さんが本気で走ったら、それもどうなるかわかりませんけどね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る