次章予告と、もうひとつ――

それは、願いとともに投函された弾丸。

それは、出血とともに着弾する手紙――


真偽不明のメッセージに応えて、ガンフリント隊は飛ぶ。

経済軌道も何のその、プラズマドライブ全力噴射。


次章:「流星作戦(Mass Catcher)」




無慈悲で横暴な配達人ポストマン――その名は宇宙。


止まれ。そのバッグの中身をおいて行け!




         * * * * * * *





「さて、これからどうする?」


 グレッグ・マイヤー軍曹は、右耳の後ろを掻きながら通信機のマイクに向かって呼びかけた。

 

〈どうしたもんかな……タバコが吸えればよかったんだが〉


「よせよ、水虫に悪いぜ……それに酸素がもったいない」

〈酸素なんぞ、今さら気にしても――〉


 どうせ死ぬんだ、と言いたげな爺さんの声に、軍曹は苦笑した。

 

「いやいや、気にしてくれ。というのがな、どうやらさっきので、ここの隕石アリは打ち止めみたいなんだ。つまりその……庭師のチャンスチャンス・ザ・ガーデナーが無事なら、って条件付きだが、万に一つくらいは公社ステーションへ生還できるかもしれん」


〈おいおい、この老いぼれをまだ働かせるつもりか。それに、わしらが生きて帰ったら、マディソンはまるで……〉


 腹立たしげな声だが、わずかに震えている。多分爺さんも苦笑しているのだ。

 

「そいつはその、俺も気に病むとこだが……だがとりあえず艇にも燃料が少し残ってるし、ファブニールもまだ動ける。どうだ、あの子に『お帰り』を言ってやれるかどうか、もうちょっとあがいてみないか?」


〈そいつはまあ、悪くない提案だな〉


「ここを離床してもう一度ステーションにドッキング――おそらく一回試せるかどうか。ぎりぎりの賭けだが、ゼロじゃない。とにかく、発着場まで行ってみよう」


 悪あがきだ。だが、生き残ってしまった以上、座して死を待つ気にはならなかった。そうでなければ、体の半分近くを機械化してまで生きてはいない。

 

 シャッターの奥からライフルをかついで出てきたロイ・クレメンス爺さんに、軍曹はハッチを開け、精いっぱい威儀を正して敬礼した。





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