第8話 紋章決めと親衛隊
5歳から6歳になる直前。
周りはほんの少し騒がしいものの、双子は平和な1日を過ごしていた。
自習の合間の自由時間。
そこへ、「陛下」から呼び出しがあった。
「父」としてではなく、「国王」としての呼び出しのため、公的な物のため、周りには貴族もいる。
2人は外行きの服を身にまとい、謁見の間へと向かう。
「リーズ第一王女、キース第二王子はもうすぐ6の年を迎えることとなる。それに伴い、専属騎士と専属従者の親衛隊を配属し、紋決めの儀式を行うこととする。問題ないな?」
「「はい。」」
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王族には、1人1人の紋がある。
その紋に刻まれる花は自分で選ぶ事になっている。
試練の洞窟の奥に行き、紋花を選んで持って帰ってくる。
それが紋決めの儀式だ。
試練と言っても、ただ暗いだけの洞窟なのだが。
専属従者と騎士は「親衛隊」と呼ばれ、生まれや年齢は関係無しに実力と人格で選ばれる。
王族と長い年月を付き添うことになり、エリートコースとも言われる。
その一連の流れは6歳前後に行う。
兄はアネモネ、父は睡蓮を選んでいるため、その花は最初から除外だ。
『親衛隊って僕達より強い?』
『そもそも私達より強いのは転生者か化け物だけよ。』
二人共慢心しているように見えるが、自分たちは転生者であり化け物でもあると自覚しているだけだ。
「リーズ殿下、キース殿下、親衛隊を別室にお連れしました。」
「ん、今行きます。」
「リーズ、また後で。」
「うん、後でね。」
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リーズの親衛隊が集まっている部屋。
複数の気配がして、咄嗟に発動した空間把握では6名の気配が察知出来ている。
コンコンッ
扉を開けて入ると、騎士が5名と同じ年頃の少女1名が跪く。
(あぁ、そういえば王族だった…普通こうなるのか。)
「楽にして下さい。」
一番強そうな騎士が1歩前に出て、目線を合わせるように膝を付いた。
「リーズ殿下、本日から親衛隊隊長となりましたジークフリード・エストと申します。ジークとお呼び下さい。宜しくお願いします。」
クリーム色の髪にブラウンの瞳の優しそうな50歳前後のおじ様。甘い物が好きそう。
「宜しくお願いしますね、ジーク。」
騎士達も隊長に続き、自己紹介を始める。
「僕はヴォルフ・ゲースと言います。宜しくお願いします。」
灰色の髪にブルーグレーの瞳。優しそうな人ではあるが、王族を前にする緊張からか、体に力が入っている。1番目を引くのは頭に生えた狼の耳と尻尾だろうか。
歳はリーズより年上だろう。8~10歳に見える。
恐らく、リーズが学校生活を送ることになる時の為に見習いの中でも一番の実力者─獣人は力が強く、動きも速い─を選んだのだろう。
「スーザン・エストと申します。父のジークフリート共々殿下をお守り致します。」
ジークと同じ色を持つ女騎士、スーザンは真面目そうな人だった。
「ユースと言います。宜しくお願いします。」
青紫色の髪に水色の瞳。つり目がちの目は潔癖の様な印象を与える。
苗字がないと言うことは平民から
努力家なのだろう。
また、この騎士もヴォルフと同じ年頃なので、同じく学校生活の為だろう。
「バースト・コーナーです。殿下は花のように美しい…将来が楽しみです。」
碧の髪に同色の瞳。遊び人の雰囲気だが、本当にそれだけなら若い内からここには配属されないだろう。
「き、今日からリーズ殿下の従者となります、メーティスと申します。宜しくお願いします。」
紺色の髪に水色の瞳。
地球での智の女神と同じ名の少女は、緊張で固くなった声で挨拶をした。
同じ年頃の従者を配属し、友として心のサポートも務めるのだろう。
「宜しくね、メーティス。」
「は、はい!」
「紋決めの儀式がもう少しで始まります。洞窟へ向かいましょう。」
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キースが部屋に入った途端、跪いた6人の男達。
「楽にせよ。」
(俺、マジで何様…いや、王子様だったわ。)
一番強そうなリーダー的な騎士が目線を合わせて自己紹介を始めた。
「キース殿下親衛隊隊長になりました、ビーク・モードンと申します。これから宜しくお願いします。」
紺色の髪のオッサンの第一印象は、暑苦しい。
ただただ暑苦しく、部屋の気温が2℃程上がっているのではと思うほどであった。
「ん、宜しくな。」
「トーマスと申します。宜しくお願いします。」
平民か…努力したんだろうな…この世界って成り上がりが難しそうだよな。
「ピータン・バンドートといいます。」
あれ?この子って…男の娘?男装女子?どっちだろう?俺より2~3歳年上の可愛い女の子って感じなのに、近くにいる女性騎士と制服が違う…ていうか、男性用の制服を着ている。
…あれ?
「ラルフ・バンドートと言います。ピータンとは双子でお供させていただきます。宜しくお願いします。」
双子キターッ!
因みにこの子も性別不明。二人揃って性別不明って…。
「ビームス・ユリウスと申します。」
the・お姉様な女騎士。
ウッフンとか言いそう。言わないだろうけど。
「今日からキース殿下付きの従者となりました、アレスと申します。宜しくお願いします。」
執事だ…同じ年頃の執事だ…眼鏡かけて神経質そうな見た目なのに軍神の名前って…。
「みんな、宜しくな。」
「では、儀式が始まるため、洞窟へ向かいましょう。」
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