第6話 天才児への最短距離
魔法にはランク付けがあり、EランクからSランクまでがある。
エリートの宮廷魔術師でやっとAランク魔法を使える…と言ったところ。
リーズが想像するのは、泥沼。
泥沼の魔法は、水+土。その分量により、粘度等が変わる。
ムラができたり範囲や深さを間違えたりしないようにバランスを考えて発動しなければならず、普通であれば難しいB級魔法だ。
その泥沼を簡単に展開、底なし沼にして、毒魔法を付与して毒沼に変化させた。
『なんか紫色でボコボコいってるんだけど…こえぇ。やっぱチートってずるいわ』
『…貴方ももってるでしょ…。』
簡単に毒沼を消し、呆れ顔のリーズ。
キースは目を閉じ、集中力を研ぎ澄ます。
その瞬間、キースの影が不自然に伸びていく。
そして、飛び立とうとしていた鳥を影で捕まえる。
キースが影を解いて解放すると、鳥は一目散に逃げていった。
『今の、報告してくれるかな?』
『さぁ、ね。』
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「リーズ、キース、突然呼び出して済まないね。」
部屋には2人の父、兄、母がいた。
「いいえ、大丈夫です。父上、なにか御用でしょうか。」
「…リーズとキースがとても難しい魔法を使ったって本当かい?」
「…はい。ごめんなさい。」
「大丈夫だ。魔法の発動方法は本で読んだの?」
「絵本で読んで、使いたいって思ったら使えたの!」
「む、無詠唱…。初めてで…私もCランクまでしか出来ないのに…。Bランクを…初めてで…」
「お父様、大丈夫?」
「あ、あぁ、大丈夫だ。2人は…将来、何になりたいとかあるのか?」
「「冒険者!」」
「…へっ?」
「お父様、今日、ユリスの冒険譚を読んだの。」
「そうだよ、僕達も強くなってSSSランク冒険者になりたいんだ~。」
(…2人なら簡単に出来てしまいそうで怖い。)
「でも、冒険者は危険がいっぱいだ。2人は…王位継承権第1位と第2位だ。危険だと分かっている所に簡単に連れていくことはできない。」
「大丈夫です。強くなって危険を減らしますし、継承権第1位はお兄様に譲ります。」
「なっ!」
「えっ、リーズ?キース?なんで?」
急に自分の話が出てきたノルンは、普段では考えられないほど動揺している。
「お兄様大好きだから…お兄様が王様になるのを一番近くで見たいのです。」
「そうだよ、お兄様。お兄様は、いい国王様になれると思うのです。それに、僕達は二人で一つだ。どちらかが王様なんて嫌だ。離れるなら王様なんて、なりたくない。お兄様が王様で、僕達が支える。」
「分かった。…どうしても冒険者になるのか?」
「うん。どうしても、なりたい。」
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「あの2人があんなに頑固だとは思わなかった…。」
「でも、賢王の素質を持っている兄に王位継承権第1位を渡すためでもある。賢いわね…。継承権〝破棄〟ではなく、〝順位交代〟。三歳にしてこんなにも頭が回るなんて…天才かもしれないわ。」
そう、周りも賢王の素質の持ち主であるノルンには国王の座について欲しいとは思っていた。
だが、立場やしがらみによって縛り付けられて動けない。
今回、子供でしがらみが無い2人の直談判により、王位継承権第1位の座はリーズからノルンへ移った。
城下町では、兄思いの双子と腹違いの兄妹を王になりたい気持ちに蓋をして可愛がった兄として美談になり、吟遊詩人が唄っている。
それは、あながち間違ってはいない。
双子は兄に懐いて、どこまでもついて行っていると言っても過言ではない。
ノルンは複雑な気持ちに蓋をして双子を可愛がる、優しい8歳の少年。
優しく、聡明な国王をSSS冒険者でもある二人が支える。
3人の父は、そんな未来を想像しながら眠りについた。
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