第5話 双子は王位継承権を下げたい
この世界に転生してから3年。
拙いながらも言葉を喋り、歩き回る事が出来るようになった。
2人で会話をしていたため暇を感じることはあまり無かったが、周囲に何も伝えられない、聞けない為に情報がないという事が2人の最大の悩みであった。
だが、成長して絵本を読みに行くという名目で図書館に行くことが出来るようになってからは仕入れる事が出来る情報が増えた。
『この国では女性も王位継承権がある…チッ。』
『おい、聞こえてっぞ。今めんどくせーなとか考えただろ。』
『なんでバレたし。』
『心の声が聞こえてきた。』
『ソッチはどう?順位を下げる方法はある?』
『あることにはある。だが…。』
『障害が多いわね。』
王族が統治をするに当たり、無視出来ない存在は貴族だ。
この国の貴族達は、小説で見るようなクズ貴族は滅多に存在しない。
そもそも、悪政を敷いているなら冒険者達が寄り付かなくなり、最悪冒険者ギルドが撤退する事になる。
冒険者達が寄り付かない街では、商人はもっと稼げる街へ移動してしまう為に商人も寄り付かなくなる。
連鎖的に人が居なくなっていく。
そんな事になれば、魔物に対処する事は難しい。
騎士は対人戦では強いものの、魔物主体の攻撃では無いために、苦戦を強いられるだろう。
地獄絵図とも言うべき事態は、悪政を敷かぬことである程度は避けられる。
だが、政争が無くなる筈はなく、第一王子派、第一王女派、第二王子派と派閥争いを繰り広げている。
現在の所の力関係は僅差で第一王女>第一王子>第二王子となっている。
『こうなったら
『そうね。』
『次は冒険譚でも読むかな。』
『私は魔物辞典。』
そんな念話をしている2人をこっそり見ている人影。
二人はそんな人影に気付か…ない筈もなく、〝空間把握〟のスキルで人影を確認、鑑定で調べる。
ヤコブ 22 人族 男
Lv:80
身分:平民
職業:影
称号:第一王女、第二王子付きの影 報告役
『危険人物では無いのか』
『恐らく動き回り始めた私達が暗殺されないように…って事ね。多分、読んでいる本も報告されるわよ。どうする?』
『あきらめる←
がんばる』
『…もうやだこの
『でもどうする?帝王学も何も学んでないけど…。本を読んでいるなんてバレたら気づいたら国王になってました、なんて事になるぞ。』
『国王を罰ゲームみたいに…。まぁ、その時は兄様大好き作戦と双子は二人で一人なの!作戦を同時進行ね。文字を読めるのは絵を見て独学で…とか、モンスターの絵を見ていたとかで誤魔化すわよ。』
『はぁ…めんどくせー。』
『どこかのNinjaマンガの影響でも受けたの?』
『そういう事じゃ無くてだな…。』
『そういえば、〝絶対コピー〟って前世のマンガとかアニメでもOKなのかな?』
『あー…どうなんだろ?試す?』
「ねぇ、おしゃんぽいこ?」
「うん。いっちょ、いくー。」
リーズの意図を読み取ったキース。
話を合わせ、手を握って歩いていく。
離れた所からヤコブが付いてきているが、問題ない。
そもそも、二人共天才児として成長する気満々なのだ。能力を隠すなんて最小限でいい。
『一番広い所ってここか?』
『そうだね。私達が現段階で行ける場所。』
『じゃあ、始めるか。天才児の第一歩。』
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