第一話四部 捨てられた先で

「アレックス、この子倒れてる」

倒れた少年を見たリリイは言った。

「助けれるか」

アレックスは言った。

リリイは頷き魔法を詠唱した。

倒れた少年がぴくりと動き出す。


「ここは……」

ナックスは目を開けた。

「……!」

アレックスは剣を取って突きつけた。

「人狼の目をしてる!」

「やめてよ!」

リリイは止めにはいった。

「どうして止める、こいつは人狼だ!人を殺してるかもしれない」

アレックスは言った。

「この子はまだ子供よ?」

リリイは敵意を持った眼差しでアレックスを見た。

「……どうしてそんな目で俺を見る!魔人は人類の敵だ」

リリイはそれに対して納得はしてなかった。

「あなたがもしこの子を殺すというなら私はあなたのパーティを抜けるわ」

リリイはその言葉を発してしまった。


「調子に乗るな!」

アレックスはリリイを殴ろうと拳を振り上げた。

「危ない!」

ナックスはアレックスを押し倒した。

「前々から思ってたけど、あんた最低……」

リリイは言った。

「何を言う、俺は勇者候補なんだぞ!?」

アレックスは叫んだ。

「あなたが選ばれたのは何かのミスよ、村の為とはいえこれ以上付き合えない」

リリイはそう言い放ち歩いていった。

「君も二度とアレックスみたいな人間に合わないよう気をつけることね」

その言葉にアレックスは憤怒した。

が、アレックスは追わなかった。

追っても彼女の心を今は得ることができないのだから。


「君のおかげで目が覚めたよ」

アレックスは俯きながら笑った。

「一人で勇者を目指すよ、悪かったな君にはこれを」

そういってアレックスは鞄から何かを取り出そうとした。

「なにもいりません……あの行っていいですか?」

ナックスは怯えていた。

アレックスは何かを取り出すとそれを振り下ろした。

「!?」

体中に激痛が走る。


「銀剣だ……痛いだろ? 悪い奴からは早めに離れろって教わらなかったか?」

銀剣は魔人に対して強力な効果を発揮する。

「殺してやる……お前がいなかったら彼女は俺の傍に今もいたんだ!」

その時ナックスは死の恐怖また再確認した。

ナックスは人狼に変化していった。


「みんな……怖い……近づかないで!」

そう言いながら爪でアレックスを引っかいた。

アレックスの顔に大きな爪の傷ができる。


「きさまぁぁぁ!」

そのときだった、通りすがりの冒険者達がそれを見て取り押さえに来た。

「人狼か!」

「とりあえず捕まえてからご沙汰を聞こう」

その冒険者達は穏便だった、ナックスはその場ではなんとか殺されずに近くの大きな街に運ばれたのだ。


「違う……あの人から先に……」

銀の剣でできた傷が燃え滾るように痛かった。

今から自分は処刑されるのではないか、そう思った。

もう逃げ遅れるのはたくさんだ。


「ごめんなさい!」

ナックスは火事場の馬鹿力で紐と拘束を破り森の方へ走っていった。

「くそ!逃げたぞ」

「あとで森の偵察団に手配書を送ろう」

ナックスは森の中で走り続けた。


「誰にも会いたくない……怖い……」

ナックスは森のどこまできたかわからない場所でずっと座り込み頭を抱えていた。

何時間も……。


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