第一話二部 異形
「はぁはぁ」
今宵の満月は雲一つもない空に浮かんでいたのだった。
「誰か助けて……」
狼男になればそれはなっている間凶暴性が増すことを意味していた。
「うわぁぁぁぁぁ」
その声は狼男の鳴き声に変わっていく
「むしゃくしゃする……」
頭を抱えその場でナックスは縮こまっていた。
「能力まだうまく使えないんだね」
みすぼらしい服を着た若い青年がいた。
「そのうち満月とか関係なく能力を制御できるようになるよ」
その話を聞いてナックスはすぐに起き上がった。
「本当!?」
ナックスのむしゃくしゃとした気持ちは今この男の知るその方法への興味へと変わった。
「自分をしっかり持って、何回も変身を繰り返すことだよ」
その男が言うには、変身を自力で解除する方法があるらしかった。
ナックスはその男と会話し、その技術を伝授してもらった。
その男の名はレイブンといった。
ナックスはレイブンのことは知らなかったがレイブンはナックスに優しかった。
特訓は次の日の晩まで続いた。
レイブンは食べ物をどこからかもって来てはナックスに分け与えた。
ナックスはレイブンに会えたことを非常に幸運に思った。
「僕レイブンさんみたいな、かっこいい大人になりたいなぁ」
ナックスはそうこぼした。
「ふふ、なれるさ、今から腕を試してみないか、この村を襲撃するところでね」
レイブンはそう言い人狼と化した。
「ちょっと待ってよ!?」
ナックスはレイブンに言った。
「そんなの絶対おかしいよ!」
レイブンは少し下を向いた。
「分かり合えないんだ、人間とはね、君も人間と戦うんだ」
レイブンは言った。
「やだよ、戦いたくない」
ナックスがそういうとレイブンは何か諦めたかのようにため息をつき広場へ走っていった。
ナックスが広場に来ると人々は世にも気味の悪いものを見たといった表情をして陰口をしていた。
ナックスが大きく吠えると、人々は驚き衛兵が駆けつけた。
「貴様、街中で吠えるとは何事だ、魔人は殺してもいいんだったな」
衛兵は剣を構えた。
しかし、そのとき人狼の群れが街へ迫ってきたのだ。
「敵襲!」
衛兵達がそう叫ぶが次々と衛兵は殺されていく。
「やめてよ!みんな……」
ナックスがそう叫ぶが、戦争は既に始まっていた。
「どっちにつく?」
レイブンは言った。
「戦争を止める!」
ナックスは人狼と化し衛兵と人狼が戦っているところに割り込む。
爪を出さずに衛兵と人狼を殴り吹き飛ばす。
「お前は人狼だろ、何をしているっ」
殴りとばされた人狼が言った。
「こんなのまちがってる!」
そのときだった、ナックスの腹に異物感が……。
「もう少し賢い子だったらよかったんだがな、君なんていらない」
爪を刺したのはレイブンだった。
「れいぶん……さんな……んで」
ナックスはその場で倒れた。
辺りにナックスの血が流れる。
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