収穫の秋
3年後。なぜ『3年』なのか?と言いますと「さぁ開墾せよ!!」と奨励したところで、そこは未開の荒れ野原。焼き払ったのち。ランダムに伸びてくる作物の中から食べることの出来るものを見繕うのであればいざ知らず。育てようとしているのは『おコメ』。それ相応の猶予期間を設けなければいけませんので3年の免租。タックスヘイブンの地を土佐国内各所に設け、コメの増産活動を促すことにしました。必ずしも豊かではない我が長谷部家からも入植者が自立することの出来るまでの繋ぎ資金など
(……3年待てば……)
と辛抱に辛抱を積み重ね、やっと収穫の時。年貢として我が長谷部家の蔵を潤してくれることになる3年目の秋を迎えることになったのでありました。その結果……
(以前よりも年貢の量が減っていた……。)
(……なぜ?)
徴税官が3年と言う免租の期間を忘れてしまっているのか?もしくは徴税官共が自らの懐の中にしまい込んでしまっているのか?調べてみたが、いや違う。それどころか開墾を奨励する以前よりも年貢の量が少なくなってしまっている。いったい何故なのだ……?この原因を探るべく私は、土佐国内で長年に渡り、コメ作りに携わって来たスペシャリスト吾作のもとを訪ねるのでありました。吾作曰く、
「そりゃお前さん。あんなところに田んぼ作ったら駄目だわさ。見た感じ平たく拡がっているからすぐにでも田んぼになるような場所だけどさ。そんな場所がこれまで田んぼにならなかったのにはそれなりの理由があるんだよ。お前さん何だと思う?」
問われ首を捻るばかりの私に対し吾作は
「あそこに流れている川。あるだろ?ちょろちょろとしか流れていない。今はそんな感じだけど。梅雨の長雨になると一気に水かさが増して来て、ちょうどお前さんが奨励した田んぼの全てを呑み込んでしまうんだわさ。だからワシらこれまで手を出して来なかったんだべ。やりたくても出来なかったんだべ。そのギリギリのところが。これまでの田んぼのあったところなんだべ。」
(新田開発がうまく行っていないのはそう言うことであったのか……。)
と独り言ちする私。しかし何故推奨以前より年貢の量が減ってしまったのかについての答えが見つかっていないことについて再び吾作に尋ねてみると
「お前さんら。新田開発を進める時に、元々の住民から『この砂地はいじってはならない。』などとこれまで言い伝えられて来たところにまで。お前さんらは手を付けてはおらぬか?」
確かに特に用途もなく無駄な空き地とも思われるところを幾つも手を付けたを伝えると
「それがいけない。その無駄とも思える場所をそのままにしておくことによって、水の害から田んぼを守ってくれる天然の堤となっていたんだべ。そこに手を付けたことによって今まで想定もしていなかったところから水が溢れ出し、田んぼを荒らしてしまったことが。お前さんのところに納められた年貢の量に表れてしまっているのではないかな?よく戒律とか祟りとか恐怖で持って人の行動を制約することがあるだろう。一見、なんで!?と思われる。わけがわからないことでも。と言うことがお前さんにもあるだろう。しかしそれには全て理由があってな。それをおかしてしまうと思わぬ時に思わぬしっぺ返しが以前その場所であったから。……恐怖心を植え付けることによって人を縛り付けているんだよ。ただ恐怖で縛り過ぎてしまったため、本来の理由がわからなくなってしまうこともあるのではあるがな……。そこをお前さんはいじってしまった。その結果が……。わからぬがな……。」
では私はどのようにすれば良いのでありますか?この問いに対し吾作曰く、
「水を治めることじゃよ。水を鎮めることが出来れば、田んぼから収穫を得ることが出来、生活することが出来るようになるから我が子を間引かずとも済むようになる。娘をヨソに出さなくても済むようになる。そうすれば国の礎となる人を増やすことが出来るようになる。そのためにも必要となるのが田んぼを守ること。つまり水を治めることじゃよ。ただ田んぼを。それも危険な場所にまで広げてしまった手前。これまで通りとはいかぬがな。そこがお前さんの腕の見せ所なんじゃないかな……。」
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