3-3

鍵屋に行く前に、高校の周辺も回りながら

生活上で、よく使いそうな店も把握し直すことにした

自転車を漕ぎながら、思ったことは、これから、あのクラスのテンションでやって

いくのかと思うとダルいの一言につきた


わずかな30分でさえ不満が多すぎたせいもあるけれど

一番厄介は、隣の席なのは確実だと思った


その後、スーパー、薬局、病院、駅、全て下見が終わり

最後の鍵屋についた頃には、昼近くになっていた


店の人間に聞いたところ、作るのに少し時間が掛かると言われたが

日をまたがずに出来るのならば、何よりだ


(今日中に出来るなら、待ってます、お願いします)


(解りました、引っ越されたばかりなら危ないですからね)


ここでも椅子に座って待つ事になった、店の店主はうちの母と同じくらいの年齢で

ニット帽子に、頬と顎の髭が繋がっている 

以下にも鍵屋っぽいというか、アトリエに居そうな容姿で


商品も昔ながらの南京錠もあり、振り子時計も店のアンティークな

雰囲気に合っていて、正直、かなり好みの空間だった


こんな喫茶店があれば行きたいくらいに思えた


(もう少しかな。)

待機をしてから一時間半が過ぎ

その間、思ったことは、和菓子屋に最初感じた時の

部屋と、気配がないような所が、そっくりだった


あのときは、たまたま人が居なかっただけかもしれないけど


この店は何というか生気が余り感じず

(うち、みたいだな)とつい声に出てしまった


人が少ないからそう感じたのかもしれないが

実際、俺以外の客は来ていなかった。。


(ただいまー、早退してきちゃった、 お父さん?)


アイスを片手に持った、男の子みたいな、だけど

聞き覚えと、見に覚えのある女の姿が、自分の前を横切った


噂の泥んこガールがそこには居た、けど、たしかに 五年前の

俺が告白した、あの女の顔も目の前に現れている


名字が相沢なのは、確認しているしさっきも耳にしている

アイツに似ているそっくりさんと、考えるのが普通なのに


俺は下の名前を声に出してみた、今の混乱を沈める為の

今の自分の武器で、支えはこれしかなかった。。


(愛?)


彼女はその声に体を反応させた


(わっ!人?お客さん?えっでもその制服、それになんでうちの名前知ってんの?)


反応した事へのショックと

そして、もう一度、この女に対して


(やっぱり。。覚えてない。。当然か)


心底軽蔑した。。その気持ちにも納得がいかなかった。。

 

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