第8話 『泥棒少女』

10階層のボスを倒した晴人のギルドは新たなる階層へと向かう。

だがボスを倒した直後──。


晴人が突然、倒れてしまった。


状況が把握できないロゼッタは晴人を背負い、12階層にある村へと向かうことにした。

そこには小さな村がありハンター達の休憩所としても使われている。

モンスターが現れない安全地帯だ。


ロゼッタは晴人の身体を見てもらえそうな所を探し回ることにした。

すると突然、奥の方から誰かが走ってくる──。


「退いた、退いたーー!!!」


徐々にロゼッタの方へと向かってくる。

周りの住人や街の人達は騒然としている中、猛スピードでやって来たのだ。


走ってきたのはベージュ色のショルダーバックを担ぎ、

中身はパンパンに入っている背が小さい少女だ。


「誰か、そいつを止めてくれー!」


クタクタになりながら叫んでいるおじさんが大声を出しながら走ってきた。

すると謎の少女はまるで忍者かのように家の壁や塀へいを走り回って逃げ去っていった──。


「参ったのー。これで3回目じゃ…」


「何かあったの?」


ロゼッタはクタクタのおじさんの話を聞くことに。

何があったかと言うと…


クタクタのおじさんは小さな家で病院を経営している。

患者の容体を見たり薬などの販売も行っている12階層の村の唯一の病院とのこと。

謎の少女は薬を奪い逃げ去って行った。

被害がこれで3回目らしい。


「あなた、医者なの?」


「そうじゃよ…」


「なら、こいつを見てもらえないかしら?」


ロゼッタは晴人の容体を見てもらう為、おじさんの家へと向かうことにした。

だがしかし──。


「うむ…。私にはわからない症状じゃな…」


見た感じ晴人の身体には症状が見当たらない。

ただ一つだけ気になることは顔にできた切り傷だけだ。


おじさんは18階層にある大きな街へすぐに行くことを勧めてきた。

そこには大きな病院があるらしく薬の数も豊富らしい。


ロゼッタは晴人を背負いながら18階層へと進み始める。


「あれ?さっきの子じゃ…。」


18階層に行こうと進んだ道中でショルダーバックの泥棒少女と会った。


「あなた村で会った泥棒少女ね…。」


「おいらは泥棒なんかじゃない。薬剤師だ。」


少女は泥棒の事を拒否し薬剤師と言ってきた。

実は彼女はソロで活動している薬剤師であり、数日前まではギルドに入っており突然裏切られて切り捨てられた少女なのだ。

お金が無くて生活ができなく、薬を奪ったりして他のハンター達に売りお金を稼いでいたとのこと。


「ねぇ、後ろの子…。麻毒まどく状態じゃん。」


「麻毒…?」


「麻痺状態の毒って意味。そんなのも知らないの?」


薬剤師と名乗る少女は解毒薬を晴人の頬に塗り始めた。

10階層で戦ったボスの壷には毒があり、割れた時にできた切り傷が身体に影響したらしい。


「んん…。うん…。」


すると晴人が目を覚ます──。


「んじゃ…。おいらはこれで…。」


少女は名前も言わず去って行こうとするがロゼッタは止める。


「あなた、私たちのギルドに入らない?」


少女は少し泣いていた。

嬉しかったのだ。


ソロハンターに薬を売った時にギルドを作ろうと誘うも断れる一方。

下層のハンター達は報酬を分け与えると取り分が少なくなると考える人が多くて、

なかなかギルドの成立が難しい。


そんな中、誘われて嬉し泣きをした。

泣いた顔をロゼッタに見られないように背中を見せたままにする──。


「おいらを雇っても役に立たないよ…。」


少女は入りたい気持ちを抑え、断るかのように言った。


「何むきになってるの?正直になりなよ。」


ロゼッタは優しく言葉を放つ──。

正直、少女は嬉しかった。


『──いいの…?』


そう言いながらロゼッタに顔を向けて抱きついて来る──。



『”仲間を救ってくれる奴に裏切りはないぜ。”』



晴人がギルドの加入を認め少女の名前を聞く。


「おいらの名はロコット。薬剤師だ。よろしくな!」


女の子にも関わらず喋り方が男の子っぽい少女。

こうして3人は新たなる階層へと進む──。

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