パート3:2000文字_異世界の女子が恋するカラクリ!
異世界の女子って、なんか主人公に恋するじゃん。
普通の世界で全然モテないっていう設定なのに、環境が変わったくらいで突然モテ始めるなんてまずありえないんだよね。
でもさ、きっとこれから書く2000文字のような流れで主人公のことが大好きになっちゃっている可能性がある。
そう考えると、なんか納得せざるをえないのかもしれないね。
▼下記から本編(2000文字)
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私の名前はエリーナ。とあるギルドに登録している弓使いのハンターだ。
今日もいつものように、賞金首の獲物を狙いに森の中へと出向いたところ、偶然にも十代後半と思われる男が倒れているのを見つけ、すぐさまギルドの本部へと連れて帰るという出来事があった。
聞くところによると、奴はコーツージコ?というものに遭ってしまい、ここにたどり着いたらしい……呪文失敗か何かだろうか?
奴はグンマーという地方でニートの戦士としていて、夜間に"ついったぁ"という戦場でジョセーセイユーの動きを常に監視する仕事をしていたらしい。
筋肉も無く中肉中背という言葉がよく似合う男に見えるが、警備を仕事にしているということは、実は強者なのか……?
警備活動は実力と忍耐の両方を有している者でないと、すぐに敵に殺されてしまうから、あえて油断させるような身なりをしているの可能性もある。
敵を欺くにはまずは人間からという戦略を図っているとは、なかなか知的な思考を持っているようだな……
後日、ギルドは奴のリハビリに協力してほしいと私に依頼してきた。
実力も分からぬ奴だから、本当は遠くから様子を見ておきたいところであったが、特別報酬を乗せられてしまっては私も断りにくい。
警戒をしつつ、奴の実力を観察してみよう。
奴は出発前に『俺はただのニートだから無理だって!』と、泣きわめいていたらしいが、そんなに私のような弱者と仕事をしたくないのか?
ふん、ニートという戦士は、随分とプライドがお高いようだな。
ほら、前方五十メートル先にある森の入口で魔物が入り口を警備しているぞ。
見るからに下級と言わんばかりの竹槍を持つトカゲ型の魔物のようだ。
一般人が立ち向かえば、竹槍であらゆる部位を突き刺されてバラバラにされてしまうだろうが、ニートの貴様なら赤子の手を捻る程度だろう?
……なに、私が代わりに戦っていいって?
どうした、怖気づいたか? 奴の考えていることは分からん。
……まあいい、時間がない。私がさっさと始末してやろう。
私は一本の矢を取り出し、魔物の脳天に狙いを定めて矢を放つ。
バシュ…!という切り裂き音とともに魔物は膝をつき、一瞬で消滅した。
ふぅ、こんな雑魚に矢を一本使ってしまうなんてもったいな……ん?
なんだ、魔物が消えた付近に見慣れぬものがっ、も、もしやっ……!
特定の魔物から低確率でしか出現しない”悪魔玉”じゃないか。
数万体に一匹程度からしか剥ぎ取れない最上級レアの素材……
もしや、奴は私にこの素材を獲得させるためにワザと手を引いたというのか。
……いやいや、『知らなかった』なんてウソを付くんじゃない。
貴様、もしやレア素材を感知できる能力を有しているのか!
全く……私に好かれようとこんな事をするなんて、随分と洒落た真似をしてくれるじゃないか。
いいだろう、私は貴様を認めてやる。
最後まで一緒に戦おうじゃないか。
そう言って、私は奴と強い握手を交わ……ん?
な、なんだ……こいつの手……暖かくて、おっきい……
お、男の体に触れたことが無かったから知らなかったが、大きな体に触れるというのは良いものだな……
奴は私に気を使ってすぐに手を離してしまった。
そうだな、今はミッションをこなすのが先決。
奴に触れたからか分からないが、なんだか力が湧いてきた。
これが仲間という安心感というやつか……
それとも、仲間以上の……
……い、いかん。そんな、ニートの戦士と私なんかが釣り合うわけ……!
ドガァン……!
……な、なんだこいつは。突然、木の上から落ちてきて……!
右目の額に刺さった矢、三メートルほどの鳥型……そうか、こいつが今回の……
ドガァン……!
……くっ、魔物め……先端のクチバシを使って地面ごとえぐり取ってくるとは、ふざけた馬鹿力を持ち合わせているじゃないか。
ここは奴と連携し、一人を囮にもう一人が弱点を突いたほうが良さそうだ。
奴は既に体を丸めて無防備なふりを魔物にアピールしている。
私に囮は似合わないっていうことか……水筒の水を利用して小便を漏らすフリもするなんて、随分と本格的じゃないか。
いいだろう、ここは私がすぐに終わらせてやる。
ニートの戦士よ、これが私の……本気だっ……!
私は呪文を唱え、青白く輝く一本の矢を召喚する。
どんなに防御性能が高い敵でも、すべてを貫く特別な矢。
これで私が、終わらせてやるっ……!
バシュゥゥゥ……!
私が放った矢は魔物の全身を貫通し、悲鳴を上げる間もなく消滅した。
ふぅ、どうやら無事にミッションは完了なようだ。
もう立っていい、囮を任せてすまなかったな。
私は奴の右手を取り、立ち上がらせようとする。
……っ、すまない……また私の方から手を触ってしまった。
お前が遠慮していたというのに――って、い、いいのか……握り続けてもいいのか……?
そ、そうか……すまんな。
………
………
あ、あの……笑わないで聞いてほしいんだが……
私は、貴様のことが……好きなのかもしれない。
終わり
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