ストロボは直射で

正直、クラブイベントの撮影は気乗りしなかった。

ただ、小遣い稼ぎにはちょうどよくて、一本1万だったので、

引き受けた、2カメで入ることになり、DJブースに

ベテランのほうが入って、雰囲気はなすが抑えることになった。


「やっぱねー!こういう?ハッピーな雰囲気でバウンスはねーよ!

  広角でバーン!と?魚眼とかつかっちゃってさァ!ストロボ?

     ストロボは直射で さァ!まあ?なに?クッキリ映るじゃん?

      自由にやっちゃってー!ハッピー!イエーイ!!」


明らかにアブない人だった。

酒と汗と、ウォッカと、ウイスキーと、タバコの臭いで充満した

200MAXのハコでの撮影は、疲れた。


ベテランさんは全く疲れてないみたいで、ノリノリでDJと話していた。

とりあえず、写真の話をして、納品スケジュールだけ話して帰った。


2〜3回同じ撮影で同じようなポジションだった。

自分は標準のニッパチズームで攻めてたが、彼は広角ばっかり、

DJブースだからこそできる技である。


いつ見ても危ない奴だった。


こっちを見かけると、モデリング発光でに三回パシパシっと

フラッシュで合図してくれる。

最高にハッピーな野郎だった。


国道●号線で、午前5時頃、乗用車と

トラックの正面衝突の事故の報。


飲酒運転でセンターラインをはみ出し…


いつものフレーズ、聞き飽きたニュース、


トラックの運転手は無傷…


聞きなれないのは、最高にハッピーな奴の名前。


即死だったそうだ。



警察は、ペンタックスのカメラを鑑識が使う。

鑑識のレンズは標準のニッパチズーム、ストロボは、直射で。

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