白いクラウン

野鳥撮影を初めたのは、EOS7Dを購入してからとなる。

地元には有名な野鳥スポットは少ないので、

野鳥の専門家に聞いて、スポットを割り出して、

有名所に連れて行ってもらった。


早朝からカモフラージュをしたキャンプを貼り、

寒い中ホッカイロで体とバッテリーをあたため、

結露しないよう気をはってレンズとカメラを

管理していた。


野鳥撮影が終わったあと、1台の新車のように輝く

クラウンが停まり、中から、ヨンニッパに1D mark4をもった

老人がよっこらせっと降りてきた。


老人はジッツォの一脚に自由雲台をつけ、

ひたすら、白鳥を待っていた。

マシンガンを連射するが如く、とにかく撮っていた。

ひたすら撮ったあと、コーヒーを飲んで、タバコを吸って、

帰っていった。


なんだよアレって、思った。


スポットを教えてもらって以来、通うようになった。

いつも、撮影が終わると、優雅に白いクラウン。

コーヒー

タバコ

機材は一流なのに、撮影はヘタクソ。

写真も微妙で、ああ、さすがヨンニッパの描写ですね!とか言っておいた。

褒めると嬉しそうだった。


正直


マナーが無いジジイだなって思ってた。



野鳥仲間から電話があった、多分猛禽でも撮ろうとか言うんだろうと

思って、出なかった。


何日かして、メールをしたら、電話のことを咎められた。


クラウンのジーさん、死んだから、葬式くらい出ろよって。


癌だったそうだ。

末期の。

奥さんは既に他界してて、喪主の息子さんは東京で仕事をしてるそうで、

独居だったそうだ。


カメラの仲間で香典を出したそうだ。

その時息子さんが、カメラ仲間と言われても・・・と困っていたそうだ。


地元のカメラ店で立ち話をしている時、

超望遠レンズの話をした時、ヨンニッパの話題が出た。


「いやねぇ、こんな店でEF 400 2.8L IS USMなんて売れるわけないじゃないですか、でもねぇ、この前、変なお客さんがね、買ってたんよ、ヨンニッパ。すごく急いでてね、とりあえず●●●に手配して発注かけたから手に入ったけど。でもねぇ・・・

あんなのカメラ初めた初心者が買うもんじゃないよ、あんな痩せた年配の人がねぇ、鳥撮りたい、一番いいのでって言うからとりあえず揃えましたけどねぇ・・・

ハクチョウ撮りたいって、奥さん好きだったとかなんだったとか・・・もうねぇ・・・

定年退職されたかどうか知りませんけど、もっと軽くて、安いやつからでもいいじゃないかなあって、思うんですけどねぇ・・・。」



なす「いえ、最高のものを最高の機材で、最高の写真のために、いいじゃないですか、最後くらい贅沢したって。」

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