父親


俺を撮るなって言ってるやろ!!




披露宴撮影だった。



小さなレストランウェディング、式撮影は済み、

集合写真も終わり、30名ほどの小さな披露宴だった。



円卓形式。ごく一般的な披露宴。


料理が運ばれ、和やかに、披露宴は進行していく、

高砂には新郎新婦、ネイビータキシードに、シックなネイビードレス。

ジューンブライドに向けて、新郎さんはタキシードを自前で買ってしまったそうだ。


ともかく、そんな、何事もない、普通の結婚式披露宴。


順調に進み、酒つぎが始まる。



おかしい


ここで、気づいた。

新婦側のお父さんが酒つぎをしていないのだ、

片方だけ撮るわけにはいかんしなぁ。・・・とか思いながら、

とりあえずお母さんがついでる写真を撮っていた。


お父さんの写真をどこかで撮っておかないと、と思いながら、

スナップを続けていた。


どうもおかしい。

明らかにお父さんが不機嫌だ。


ただ、どこかで、撮らないと・・・

アルバム的に、不釣り合いになって、後々クレームになるのは・・と

思いながら、お父さんを半ば盗撮するがごとく撮っていた。





怒られた。



そこまで大きい声ではなかったが、怒られた。


すみません、申し訳ないです。ってとりあえず言った。


スタッフさんが「あーこりゃ、訳ありッスねぇ」

と、推察。「僕もそう思ったんですよねェ、なんか変で。」


支配人にもすぐに話しが回ったみたいで、

ウラでゴニョゴニョやっていた。


あー、やらかしたな、俺、やらかしたなって。思った。


情けない気持ちで、撮影は続けた。



手紙が始まった、いつものシーン、

いつもの舐めの写真、

全身、

手紙のアップ

顔のアップ、

新郎舐めの新婦


あとは、両家のお父さんお母さんを撮って・・・


あー、撮らんとあかんのかな・・・。また怒られるんかな・・・。

でも撮らなあかんなって、思って、






俺を撮るなって言ってるやろ!!






会場が凍りついた



完全にやらかした。


俺終わったな、って思った。









大声で、お父さんが、

 


  「俺の写真撮っても笑ってないやろ!!●●がおらんくなるから

    寂しいのバレバレやろ!!泣いてるのわかってまうやんけ!!」

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