走った





下ろしたての、トリッカーズだった。

ピッカピカに磨いた。ソールはコマンドソール。


カメラはD300S、ニコン渾身のDXフォーマットフラッグシップ。

レンズは17-70 11-24 70-200VR


行事は淡々と行われて、


学生は徒党と組んで、せっせと、綱やカラーコーンを運んでいる。

女子高生がカラーテープで作ったポンポンを持って、

走っていく。


走った


銃声と共に、

パァンと、火薬のニオイ、


モードをCh、AF-C

わけが分からなかった、

ファインダーの中で人が走ってくる、

瞬間が迫ってくる、怖くなった。


来る。


走って来る。


秒間8コマの高速連写で捉えた。





全部失敗だった。

全部アンダー写真だった



ショックだった。


アンダーで、打率2割。

とりあえず使えるか、は2枚。 それも大幅なトリミングを要するシロモノ。




走った




もうヒイヒイだった、高倍率ズームをつけた、先輩の老年カメラマンは、

楽しそうに、笑いながら撮っている。




走った




70−200だ、2.8だ

重い・・・、肩が痛い・・・、ストラップが、首にねじ込むみたいな、

とにかく痛かった。




走って、走った。






終わった、やっと、終わった。

時間にして6時間、初めての現場だった。


自分が甘かった。仕事で撮るってのはこんなにキツイんだって思った。


高校生の運動会だった。

天候は曇り晴れ、風は風速5M前後。

絶好の運動会びより


もう、何を撮ってるかわからなくなっていた。

とにかく緑のネームゼッケンをした学生を撮ってた。


下ろしたてのトリッカーズは、

砂にまみれて

傷ついて

歪んだ


なすは


なすは


写真がうまいね


っていわれてた、


ショックだった。


ぜんぜん!うまくないじゃないか!!

このヘタクソ!!


家に帰って泣いた。


足は血豆や、皮がむけたり、


血だらけだった。

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