事件(事故)―side京子
ちょっとした事件、というか事故が起きたのは、入学式から一週間ほど過ぎた頃だった。いくら偏差値の高い学校とはいえ、ノリというもので生きる男はやはりどこにでもいるようで……。
「司城さん!お、おれと、付き合ってください!」
火曜日の昼休み、公開プロポーズという公開処刑が行われた。処刑と言った時点で察しているとは思うけど、このまま読んで欲しい。
告白したのは
そして、話は今日の朝に遡る。
「おい槇原、おまえの好きなタイプってどんな子?」
と野球部(ごめん、クラスで坊主が君だけだから頭で判断してる)の男子がそんな質問をした。
「俺は……司城さんみたいな人かな」
「ほうほう。おぬしは司城さんのような子がタイプと……よし、告白しろ」
「はぁ!?」
「タイプというか、もろ司城さんだろ?」
坊主がニタニタと笑う。それに対して槇原君は顔を赤くして何も言わない。
「図星だな。よし、おまえ今日の昼休みに告白しろ」
「なっ、何言ってんだよ!?」
「司城さんって彼氏いなさそうじゃん。あわよくば付き合えるかもしれねえぜ」
「絶対に彼氏いるよ!あんなに美人なんだし」
「男なんだから当たって砕けろ。昼休み、分かったか?根性見せろよ」
坊主の言うことなど耳を傾けなければいいのに槇原君はノリがいいから
「分かった。男の根性みせてやる!」
と大声で叫んでしまった。そのせいで、クラスの男子が槇原君の近くに集まり、坊主から話を聞くと「応援してるぞ」「お前ならいける」などとお祭り騒ぎになってしまった。その光景をあきれ顔で見ていると
「雪江さん、このことは司城さんに内緒で頼むよ」
と槇原君に言われてしまった。京子ちゃんに言ってしまおうと思ったが、槇原君があまりにも可哀想だったのでやめた。
「わたしがあなたと付き合う?」
そして現在に至る。
京子ちゃんはわたしに最初に向けた目を槇原君にもしていた。
「ひゃ、ひゃい!」
その眼光にビビる槇原君は声が裏返ってしまった。
「…………」
京子ちゃんは何も言わず、鋭い視線を槇原君に向けている。そしてそれを固唾を飲んで見守る男子諸君。わたしは呆れて席を立とうとした瞬間、
「わたし、彼氏いるんだよねー」
京子ちゃんがポツリと呟いた。静まり返る教室。
あぁー、カオスカオス。
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