鳥はその為に100マイル飛びます

志木冬

くたびれた紙

 白い光の中で鳥の声を聴いた。目を閉じても、光は蝕んでくる。ひどい憎しみに苛まれることがあって、それは丸い石が降ってくるためにそうなってしまう。

 今は少し暑くて、白い土から塩が上昇していく。小さい粒子のそれは水の小さい穴から吹き出していて、冷たい。運動のある粒。計算のない流動。放り出された空気。変な匂いはない。

 紙を持って西へ行く。できるだけ疑問のない意志だけを持って、僕は青い空の光を浴びながら鳥の声を聴いて歩いている。運動のある靴。計算のない躍動。放り出された体。それらを持って歩いている。

 遠い西には喜びがあって、黄色い色があるらしい。それは朝日のようだと言うし、砕けた皮の表面に浮かぶ油が弾く水のように、きらきらしているらしい。

 白い大地に電柱が立ち、電線が伝っている。意味のない通信だけが繰り返されている。レシーバーを捨てて、より確かなものだけを持っていきたい僕は紙を持って西へ行って、運動のある朝、計算のない夜、放り出された白昼に乾いた底のない靴を履いて歩いている。芝居がかったものを捨てて、なるだけ痒くならないようにして、冷たい塩の呼吸を受けて涼み、空の青さと白さを受けている。

 意味のないことを確かめるように手を握って開いてをして、地球の底からの冷ややかな目を受けて、ぞくぞくした笑みが浮かび、こらえ、笑ってこらえている。

 靴には底がないので大変熱いが、日によってはそうでもない。この靴を履くのは僕だけで、底が見えない。運動のある日、計算のない年、放り出された一生。開いた口の歯をなぞる、噛む。

 

 P.S.最近やっと西が見えてきたので、冷ややかな目を受けながら、それを確かめようとしている。白い土もそのまま、空もそのまま、鳥もそのまま、光もそのまま、紙のそのまま、鳥はそのために100マイル飛ぶので、僕もそのままである。心底きらきらしたものを見てみたいし、その逆があるかもしれず、僕はあなたに招待されたいのです。

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鳥はその為に100マイル飛びます 志木冬 @sikitou

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