この物語の舞台となる神室町。人口一万人にも満たないこの町での父の死と隠蔽のような形跡、そして行方不明事件。小さな町で起こる不気味な謎を巡ってのサスペンスから、事態は大きく移り変わります。 主人公である兄の常一と妹の円理。二人の禁断の愛と宿命、そして、この町が抱える冒涜的な所業。すべてが引き返せないところまでたどり着いたとき、二人の兄妹の運命が浮かび上がります。 静かなストーリーからの盛り上がりがドラマチックで、壮大なテーマに行き着いたとき、常一の運命に対する決意に心震わされました。
世界は円(まわ)る。 愛という名の銃弾でサヨナラを告げながら。 禁忌の果て、兄と妹の結末。 それが理だというのなら、なんと切ない。 背徳的で冒涜的で壮大なスケール。 殺し続けること、産まれ堕ちること。 生と死の繰り返しが、やがて世界にも浸水していくストーリー。 ああ、終わりを望んでいるのか? それともやり直すために、終わらなければならないのか? その身に宿る命は、新しい世界なのか。
山奥の村に言い伝えられる人魚伝説、主人公に宿った暗黒の力。そうした伝奇的なストーリーの骨子となるのは、親子の、そして兄妹の血の因縁。許されざる感情、繰り返そうとする悲劇。どこか甘美ですらある毒が、この物語の重要な核として織り込まれています。終始一貫して漂う、切々と心に募っていくような仄暗いものが、一気に浄化されるようなラストは圧巻でした。ダークヒーロー、禁断の愛、かっこいいお姉さんが好きなあなた、そしておっぱい派のあなたにも大変おすすめです。
最初はしっとりとしたホラー作品かと思っていたのですが、エロスの香りに満ち溢れる濃厚な伝奇バトルでした。 兄と妹の禁忌の愛情を密に描きながらも、己の正義に苦悩するダークヒーローの凄絶な戦いが展開する。最終的にはこの二つが一つのストーリーラインの上で混じり合い、世界を左右する壮大なスケールの神話が語られます。 個人的には第八話の廃病院に向かう話からが本格的に盛り上がってくると思うので、是非そこまで読んでみて下さい。 損はしません。
ミステリー調に進む序盤と、主役を含めた人々と舞台の謎が膨らむ中盤、畳み掛ける後半と、独特な余韻を残すエンディング。現代ファンタジー、特にクトゥルフ関連のお話が好きな人に向いているかもしれません。ファンタジーならば何でもあり、ではなく異能の力は強いものの、軍や現代兵器の大量投入には勝てず、苦戦するという点がリアリティを感じさせ個人的に好みです。「兄弟同士の一線を越えた愛」には賛否あるかもしれませんが、決していやらしくなく、物語の骨子であり、なおかつスパイスとして成り立っていると思います。