第三十七話
大審院火器と西堂尾汽笛そしてドリームランド柳生一名の計三人を単独で始末したコンスタンティンは、自身も重傷を負い、北朝西軍の謎の忍者とともに
この間、二時間半である。
さらにここを北上すれば
錦城高校はそこよりもっと遠い。
「きゃー、変態よ、変態がいるわ。」
「まっ待て、一般人よ。これには訳があるのです。」
さて、
「てめえらっ男二人が全裸で街を歩くとは変態野郎がっ!」
「待てと言っておろう。これには深すぎる訳がある。」
謎の忍者は全裸。そしてコンスタンティンもまた藤武蔵に全裸にひん剥かれたままである。
そのことを忘れた二人は、鍾乳洞を観光しようとして、通りすがりの一般人達に出くわしたのだ。
「俺たち二人はこの近くの温泉から道を間違ってこの辺りまで来てしまったのだ。」
「なんだそうだったのか。警察に通報してやる。」
一般人は賢いので簡単な嘘など通用しなかった。
さて、一方でお春はずっと考え事をしていた。
自分の祖父のことだ。
西大寺千秋の祖父、西大寺冬実は千秋が生まれる前に行方不明になった。
その為、お春は勿論、千秋も祖父との面識は無いのだが、父や母の口ぶりからすると、かなり苦労させられることが多かったという。
そんな千秋の祖父が、忍杯戦争に関わってる可能性が高くなってきた。
始まりは、
その差出人は千秋の祖父とのことだそうだが、十数年も人前に姿を現していない人間が、そう都合よく連絡をよこすだろうか。
同じ放浪癖を受け継いだ千秋の父は、突然ふらっとどこかへ消えては、或る日突然帰ってくる。その間は手紙の一枚も出さず、全く音沙汰が無いのが普通だ。
なので、千秋やお春の感覚としては西大寺家の人間が行方不明になる時は証拠の一つもどこにも残さないのが普通なので、面識の無い祖父といえど、こんなところで孫娘に足取りの一端を掴ませることなどしないのである。
そんな訳で、アレは感覚としては"意図的に"菅原さんの祖父、あるいは千秋やお春に向けた手紙と考えるのが筋である。
では、祖父は一度も会ったことの無い孫娘の動向を逐一把握しているような気の利いた人間なのだろうか?
父を見ている経験上、見ず知らずの祖父がそんな人間だとはとても思えない。
では、あの手紙はやはり本来の差出人、菅原さんの祖父に宛てた手紙なのだろうか?
千秋の祖父は誰に何をさせようとしているのか?
そんなことを考えているうちに、コンスタンティンと謎のスケスケ忍者は一般人に連れて行かれそうになっていた。
「お春殿っ!助けてくれお春殿っ!ヘルプミー!!」
「ちくしょう!この変態野郎、自転車に話しかけてやがるからちくしょう!自転車に気持ち悪い生首が生えてるしちくしょう!」
大ピンチのその時、一台の黒塗りの高級車が一般人達を跳ね飛ばした。
「ギャギャギャギャギャーーー!!」
一般人は高級車に跳ね飛ばされ、口から火を吐き出しながら空の彼方へと飛翔していった。そういうタイプのアレだったのだ。
「危ないところでしたな。スケスケの。田舎では気を付けられよ。」
「おお、お前達は。」
お春殿もまた高級車から降り立った者達に見覚えがあった。
高級車から降り立ったのは黒服を着た三人のいかつい男達。
「お前達はっ!室生寺で遊牧民に襲われてはぐれたヤクザ達じゃ無いか。」
「そういうことだお春殿。ヤクザ連合のうち、
謎のスケスケ忍者はどのようにしたか、ヤクザ
正直絡みも少ない怖い人たちなので、この事実はお春にとってわりとショックでは無かった。
「あの…スケスケさん、こんな一般人を味方につけて役に立つんですか?」
「あのね、お春殿さん。よく見てごらんなさい。私は全裸なんですよ?どう考えても、日常生活をする為の協力者が必要ですよね?」
「えっ…あっはい。そうですね。」
「それにね。彼らはただの一般人ではなく、それぞれ特殊能力を備えているのですよ。」
極道能力。
忍者が特殊な環境下で血統、才能、修行など複合的な要因を極限まで極めることで、常人には到達不可能な領域まで己が技能を高めしめた、この結果を忍法と呼ぶならば。
現代に於いて鳴りを潜めた忍者達よりも、より広範囲に渡って活動する極道者の方が、同じ結果を得やすい、というのは考えてみれば当たり前である。
彼ら暴力団員達は、法に規制され、時には国境すら渡って反社会的行為を成すことで、その中で自然と特殊能力に目覚める者達が一部発生したのである。
裏社会にこれを、忍法にあやかって極道能力という。
極道能力は殆どが組の仕事の為の能力なので、かなり暴力的だと言われている。
「俺は
壷坂鬼勝は金髪でサングラスをかけたチャラそうな若いヤクザだった。
「俺は前裁金之助。極道能力は指を詰めることで電話相手の最も望む人間に返信し、声や記憶すらも真似することができる振込詐欺専用の能力さ。」
前裁金之助はボウズにソリコミの入った三十代後半くらいのベイビィフェイスの怖いお兄ちゃんだった。両手の指が既に全て無かった。
「儂は
二階堂三四郎はスキンヘッドに大柄な熊みたいなおじさんだった。
「こいつらの能力、クソの役にも立ちそうにねぇ〜!」
謎のスケスケ忍者は突然泣き出した。
「おっ落ち着かんかいボゲァァァ(馬鹿者という意味)。そないなとこで蹲って泣いても始まらないでしょうがい!」
「うっさいわボゲァァァ(馬鹿者という意味)!お前らの能力が戦いの役に立つんか!言ってみい!」
この罵倒に怒った
「ほならスケスケの忍者さんよう。儂らがその実力を示す為に、西大寺衆にカチコミをかけてやるさかい。みときぃや。」
「ぴよぴよ。」
こうして高級車で走り出した
「なっ何もんじゃワレェ!」
「忍法『刀いらず』。」
車の眼前には刀狩署の川上
「貴様ら!なぜ俺たちの居場所がわかった!」
「説明不要。お前達は逮捕する。」
川上署長が刀を振るうと、高級車は爆発して炎上した。
「がああああああ!!」
「忍道会と
極道能力者達が車の爆発などで死ぬはずはなく、大の字になって空中浮遊しながら回転しつつ口に長ドスを加えて川上署長に襲いかかった。
「儂の極道能力をくらええええええ。」
「それが警視庁捜査ファイルに載っていたコワモテで極道能力を無効化する能力か。来い!」
極道能力者二名は口に長ドスを加えて空中で大回転浮遊しながら、両手から大量に軍手を発射して川上署長にぶつけ出した。
「ぐああああ軍手が。」
「
その時、林の茂みから宴の祭器達の『山月記』と『白鹿』が姿を現した。
「川上署長殿。スケスケ忍者とコンスタンティンの相手は任せられよ。」
「我らは他の三人と違い、国を持たぬ身。如何様に野菜王国に返還されようとも構わぬ所存。」
『山月記』が衣を脱ぐと、そこには黒い肌に金髪の野性味と知性が同居したようなイケメンが現れた。
「貴様…どこの国の者だ?『大審院』はローマだったようだが。」
コンスタンティンが訝しむと、『山月記』は愉快そうに笑った。
「俺は国を持たぬ。『大審院』は
『山月記』は即座にコンスタンティンに詰め寄ると、その首筋に噛み付いた。
その姿はみるみるうちに獰猛な虎の姿へと変化していく。
「忍法『
ポリネシア人だった。
つづく
☆【大和編】忍杯戦争関係者一覧☆
○西大寺衆
・千秋とお春一行
西大寺千秋
宝蔵院お春
西大寺冬次
薬師博士
太乃
十津川勇蔵
・根来衆
・伊賀組
・胡姫禁中宴の祭器達
(のこり四名)
・ドリームランド公国
(のこり二名)
・裏正倉院
・和歌病県警刀狩署無刀課刀係
ニャース
川上
・シャンヤーハイアン
×織衛不要人
山田金烏
×西堂尾汽笛
ヨハン・ソン(尊孫王)
ジェット・
○忍法西軍
謎のスケスケ忍者
コンスタンティン・龍(尊龍王)
×シャオ・イェン(小燕)(尊燕王)
・神兵衛南郎組傘下有門組
×壺阪鬼勝
前裁金之助
二階堂三四郎
○忍法東軍
・南郎組傘下忍道会
鬼子母妖子
岡寺マリオ
犬飼万葉
・南郎組傘下鶴詠会
平端華文
畿央いそみ
天理雲中丸
忍杯戦争参加者一覧
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お
以上十四名
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