第17話 魔とは何か3

 それからリーベスさんとの魔力交換の日々が始まった。


お互いの魔力の質を気味悪るがり、騒いでいたが、回数を重ねていく内に段々と慣れていった。


コップの水を半分程、一度に動かせるようになり、毎日の特訓が生きている。

勿論時間をかけて慎重に操作してそれだが。


 いつもの朝になり、外に出て朝日を浴びる。


今日はリーベスさんが窓から伺えなかったので残念だ。


 「おお小童、朝の修行は取りやめじゃ。村へ行くぞ。」


オーマが声をかける、いつものプラモの箱ではなく、杖と木刀を携えていた。


 「修行は無いのに何でそれ持っているんです?」


いぶかし気に木刀を指差す。


 「これか?ワシからの贈り物じゃ、もう使わんしの。」


そう呟くと剣をこちらに渡す、よく見ると木刀ではなさそうだ。

贈り物には鞘が付きている。


 「……抜いてみても?」 「構わんよ。」


ごくりと唾をのみ、鞘からゆっくりと剣を引き抜く。


無骨だが洗礼された刀身が顔を覗かせる、所々に小さな傷があり、長く使われていたのだろうか。


武器について全くの素人だが、素晴らしい物だと分かる。


剣の長ささはいつも使っている木刀より短いが、ずっしりとした重みがあり、威圧感がある。刃の幅と表すのだろうか、腹は太めで片刃しか付いていない。切っ先だけは両刃になり鋭く尖っていた。


確か剣は両刃で、刀は片刃だったか、手に持った刀について夢中になって考える。


 「とりあえず身を守る道具じゃ。道中余程の事は無いとは思うが、念の為な。村から帰ってから使い方を教えてやろう。」


 「あ……ありがとうございます師匠!」


どんどん魔法使いから離れている気がするが、些細な問題である。


魔法剣士とか響きが最高に素敵ではないか。


 「では行くぞ、飯を食ってから出発じゃ。おおそうじゃ、帯革も準備せんとな、一度地下室へ戻るぞ。」


 「はい!」


地下室でオーマが帯革を見つけ、最初はつけてもろう。普通のを二重にしたような帯革だった。


 「そうだ師匠、ちょっと待っててください。」


 「ん、なんじゃ?」


 「向こうに置いてある売れそうな物とってきます!」


返事も聞かず門に飛び込む。




思いつきすぐ行動したので、刀とベルトを付けたまま戻ってきてしまった。


家族に見られたら事なので急いで荷物を運ぶ。


急いでいたがついでに刀の事について調べよう、向こうはどうせ時間経過しないし。


 「……この形だと……ファルシオン?が近いのか……」


似たような刀は沢山あり、よく分からなかったが。なんとなく目星をつける。


適当に納得し、段ボールを抱え再び異世界に向かった。




 「急になんじゃ、忙しい奴だのう。」


 「うっしょと、とりあえず、これ。」


売れそうな物とは別に新しいプラモを渡す。

前のがまだ完成してないがまあいいだろう。


 「おほぉ、ありがたい。あと少しで今のが終わってしまうからの、また作れるのは嬉しいのう!」


 「そして、今回売ろうと思っているのは、これです。」


ゆっくりと茶色い箱を下し、中を見せる。


満開の笑顔だったオーマの顔が強張った、気がした。


 「これは、ガラスか。」


 「ええそうですよ、触媒の説明でガラスも相性がいいって教えてくれたので。」


箱の中に手を突っ込み、色とりどりのガラス玉をジャラジャラと鳴らす。


 「この前リーベスさんに一つ分けたら凄く喜んでて。これなら良い値段で売れません?」


 「これは、いくつ入ってるんじゃ?」


 「えっと、確か2000個、数えてませんが注文通りなら。」


少し値が張ったが、彼女の反応を見るに、かなり期待できる。


プラモでもよかったのだが、やっぱりこっちだ。


 「……」


 「これならいい値段で交換できるんじゃないですか?ただ運ぶのが大変そうだなぁ。」


 「駄目じゃ。」 「え?」


 「これは、売ってはいけない。」


 「いやだって……」


 「絶対に、駄目じゃ!!!」

 

 「うわっ!?」


突然オーマが声を張り上げる、何がいけなかったのだろうか?


 「あの……師匠……?」


 「すまないがこれは売れる代物ではない。……ここに置いておけ。金が欲しいのならワシが何とかする。」


 「師匠が欲しいだけじゃ……そんな事ないですよねうん。」


雰囲気がいつもの師匠ではない、何か得体の知れない生き物に感じる。


 「行くぞ、リズと飯の準備をせんかい。」


 「はい……」


後ろ髪を引かれつつ、渋々と上に向かう。途中で刀を引っ掛け落ちそうになった。


そんな様子を気にする事もなくオーマは思案していた。


 「まったく、よくもこんな面倒な物を、しかしこれなら……止めるのは無理でも伸ばす事は出来るやも知れん。」


イーの真似をし手を突っ込み、ゆっくりとガラス玉をかき混ぜた。

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