第8話 知と身と心2

 オーマ達に今体験した事を伝える。自分の世界では、既に2日経過してると。


 「時間が止まってる?いくら何でも冗談でしょ?」


 「いや、しかし……うぅむぅ、転移、座標、を……で、消費を考えるに……」


オーマはうんうんと唸っている。普通に考えれば、リーベスさんが正しい。

だが、異なる空間を繫いでいる門が生えているのだ、当人達も理解出来ていない。


 「とりあえず小僧の戯言を信じよう、門を通ると片方の時が止まると。」


 「そんな簡単に信用して大丈夫なの?まだ門の向こう側に見た事も無いのに。」


 「俺はどうすればいいですかね……?」


自室に待機しても時間は進まない、戻って待っても繰り返しになってしまう。


 「まあなんだ、飯でも食いながら話し合うではないか、小童も食え。」


 「あ、ありがとうございます。」


 「……別に、1人増える位なら、準備は大丈夫ですけど。」


相変わらずちょっと冷たいなリーベスさん、本当に悪かったって。


持ってきた荷物を、お土産、生活用品と分けていたと、

2人が何やらヒソヒソと話し合っていいる。


俺のこれからを相談しているのだろうか?爆発したゲーム機に別れを告げ、

俺達は1階に向かった。


 オーマと俺は椅子に腰かけ、リーベスさんは料理の準備をしている。


 「所でなんで地下室なのに、ある程度灯りがあったんです?火は使われてないと思うんですが。」


 「あれは夜光石じゃよ、地下室と言っても、完全に締め切っている訳ではない。天井付近に穴が開いておる、そこから日の光と空気を入れているのじゃ。んで穴周辺に夜光石を埋め込んである。」


 「夜光石ですか?それにしては明るかった様な……」


 「石に魔力を流し込んで、光を強くしておる。物には微量の魔力が宿っており、それを強くすると、より大きな力に代わる、魔法の初歩的な術じゃな。そんなに技量も要らん。」


こっちにも夜光石はあったハズ、よく子供用の寝間着に使われている光る奴だ、

石自体も人工物で、勿論魔力で強く光る事は無いが。


 「魔力を物に込め、使用するのは初歩でも魔法行使の基本。触媒に力を貯め、

魔法の規模を上げる基本だが重要な事じゃ、良く覚えておけ。」


 「はい、師匠!」


 「フン、小童に師匠呼ばわりされても嬉しくないわい!」


その割には笑顔ですね師匠。


 「触媒ってなんです師匠?」


 「先ほど述べた様に、魔法の基本。何でも良いが、宝石、鉱石、ガラス等が好まれるな。小さな物も貯め易く、漏れにくい。だから……おっと、続きは今度な、飯が来たわい……」


 オーマも授業は中断し、夕食の時間になる。リーベスさんは食器を運ん来た。


 「手伝いますよ。」 「いいわ座ってて。」 ちょっと悲しい。


 運ばれてきたのは、茶色い手のひらサイズの、パンの様な食べ物、

緑色の臭いがキツイスープ、黒っぽい塊。


思い出せば、ここは異世界、食べ物がちゃんと俺に合ってるのか、

謎の菌とか食ったらヤバい物は無いのか。


猛烈に不安になる、お茶の時はドッキリと、言い聞かせたから普通に食べれたが、今思うとかなり危険だったんじゃないだろうか。


お茶は大丈夫だった美味しかったと言い聞かせ、

未知に挑む。食卓は緊張に包まれた。


オームとリーベスさんが料理に口を付ける、俺も覚悟を決めた。


 「いただき、ます!」


勇気を振り絞り、一番大丈夫そうなパンに齧りついた、

ちょっと硬いが普通にパンっぽい、よく租借し飲み込む。


おかしな味はしなかった、まだ飲み込んだばかりだが、腹の調子も平気。

第一関門突破だ!


次は、緑の沼と深淵からの贈り物、パンで喜んでたのは空元気だ。


手元の道具を確認する、ナイフとスプーン、これは知ってる形だ。

恐る恐る沼にスプーンを沈める。


かなり重い手ごたえを感じながら、上部をすくう、臭いが強くなった。


鼓動が速くなり、冷や汗が眉に貯まる。イーよ、出された料理はしっかり食べる。長年の誓いを果たすのは今。


----苦い----


なんこれ苦い、何かの草かな苦い凄く苦いニガいキツイ。顔に出してはいけない。

目を閉じろ、味わうフリをしろ。長い時間をかけ、飲み込む。

胃が、不思議と受け付ける、体に力が流れる、なんだこれは。


驚愕していると、リーベスさんが訪ねてくる。


 「……お口にあったかしら?」


 「え?あぁ、食べた事ない味で驚いてます。何か急に調子が良くなった様な、

不思議な感じです。」


 「そう、それなら良かった。」 いいのか。


体は求めてるけど頭は拒んでる、不思議な料理だ。一度あの苦味を知れば、

次は大丈夫だろう。もう一回沼を口に運ぶ。また目を閉じた。


沼を半分程吸い上げ、次は深淵に挑む。飲み込まれる黒の色したそれは、

静かに挑戦者を待ち構える。


先手必勝、深淵の端にナイフで切りかかる。どうやら深淵の正体は、

良く焼けた肉だった。


黒いのはコゲか、少し安心する。コゲなら大丈夫、すぐには死なない。


行儀が悪いと思いながらナイフを握り直し、

深淵の護衛達をそぎ落としていく、次から次えと主を守る深淵達。


これなら生焼けの心配はないだろう。


これ以上、無抵抗の護衛を倒す理由は無い、鋭い視線がイーを射抜く。

畜生いただきます!


やっぱり苦い、苦いが美味なのかこの世界は、

魔法を習得する前からこんな試練があるなんて。


やっぱり体に力が溢れてくる、もう意味分からん。


 「小僧、さっきからなんだ、孫の料理に文句があるのか!?」


 「いえそんな事ないです!ただ食べなれてないだけ、

お……驚いているだけです!!!」


吠えるオーマに慌てて訂正する。だがしかし、イーは見た。怒るオーマの目には、悲しみが溢れている事に。


 「静かにして。……ごはんなんて、ちゃんと食べれて栄養になればいいでしょ。」


 「そうじゃな、その通りじゃな……突然怒鳴ってすまんの小童。」


 「ええ、良いんです。こっちこそ、ごめんなさい。」


 

異世界で食べては駄目な物とか、忘れ去られる程の味、

リーベスさんは、料理が得意ではなかったのだ。





 



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