第6話 接触6
リーベスさんの一撃から目覚めた後、謝罪も適当にし、慌ててオーマの居場所へ駆け上がった。まだ椅子に腰かけ、お茶を楽しんでいる。
「オーマさん!俺に魔法を教えて下さい!!!」
梯子上った勢いのまま、深々と頭を下げる。あと少しで頭突きの形になったが、先ほどの一件が幸いし、事故にはならなかった。
「今帰ったばかりだろうに、そんなに急いでどうしたんじゃ?」
「帰る途中、話を……そうさっきの話!魔法へのオーマさんの情熱、知識、に、改めて感銘を受けぜひ自分も信徒に加わりたいと!!!」
無茶苦茶な力説だったが、熱意とオーマ自身の武勇伝を褒めた事は伝わった。笑みを浮かべながら、口を開く。
「魔法は……素晴らしい能力じゃ、しかし、習得し、物にするには「お願いします!!!」ぅむ……」
必死だった、こんなチャンス滅多に、いや一生掛かっても無い。今、俺は軌跡を体験しておるのだ。
「むう……んー……そうじゃのう……まあ、いいじゃろ、教えてやらんでもない。」
「いいのお爺ちゃん!?まだどんな人かも知らないのに!?何かあったらどうするの!」
何せいきなりタックルし、ハアハア息を吐きながらのしかかる異世界人だ。
「そん時はワシがクシっとするから大丈夫じゃ。」 「あれはその、事故なんです、本当にすみませんでした!」
「んん?なんかあったのかの?まあ良い、ただし、教えるには条件がある、これを守れなければダメじゃ。」
やっぱり、魂とか捧げないとダメなのかな。少し怖気づいたがすぐ戻った。今更引いてなるものか、コクリと頷く。
「よし、第一に小童も持ってる、向こうの知識じゃ、知る限り全て!全部!」
これは普通に教えたり、こっちで調べて伝えれば大丈夫かな?……ある程度は厳選しないとは思うが。
「次に実験に付き合え、門を調査する実験じゃ、まだまだ謎が山の様にあるからの。」
そんな怪しいものを行き来してたのか俺は、まあちゃんと帰れたしいいか。
「三つ目は家事全般の手伝い、これはリズと一緒に行ってもらう。」
「よろしくおねがいしますリーベスさん!」
「……よろしく。」
やはりリズってのはリーベスさんの愛称だったらしい、トーンが下がり、愛想が激減してる彼女、イー君と名付けてくれた時が懐かしい。
簡単な調理は出来るし、掃除洗濯もある程度は出来る。どんな道具を使うのか不安だが。
「四つ目は魔術を教える対価、小童に金は期待せん、異世界の品を持ってこい、沢山持ってこい。」
これには自信がある、部屋を見渡した限り、文化のレベルはこちらが高いハズだ。
「そして最後、ワシの言葉は絶対じゃ、死ねは言わぬ、それ以外は絶対じゃ。」
「やはり、魂とか捧げるんですかね……?」
オーマとリーベスは顔を見合わせ、大笑いした。
「そんなばっちいもん、金払っても要らんわい、クッヒッヒッヒッ!」
「イー君、どこかのおまじないじゃないんだから……」
「生贄とか言われても困りますよ俺!本当!」
「まあワシらは使わんがの、んで、どうする?条件飲むか?」
「もちろん!OKです!」
「……?良いのか?分かった。……異世界のイー、汝、魔の技の信徒となりて、末席に加わり、理を見つめよ。力に溺れる事成らず、誰に寄るべぞ、己で見よ。」
良く分からないが、何か誓いの言葉を延べている、黙って真面目に耳を傾ける。
「これで、今から小童はワシの弟子じゃ。精進するのだぞ。」
「あ、はいッありがとうございます!」
「もう今晩は帰れ、前にも準備があるじゃろうて、明日から修練が始まる。心してかかれよ。」
「よろしく、おねがいします。」
思わず涙が込み上げてきたが、慌ててこらえる、泣くにはまだ早い。明日から想像しても、叶わなかったハズの毎日が送れる、こんな所で泣いていたら持たないだろう。
顔を隠すように、速足で異世界から離れた。
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