第3話 接触3
どうやら門の先は地下室だったらしい、通りで薄暗い訳だ、女の子が案内をしながら教えてくれた。普段は倉庫として使ってるが、魔法の実験でも、この場所でする事があるらしい。もし事故が起こっても地上に被害が出ないようにと。
いや倉庫に被害が出ては駄目だろうに……そこら辺はドッキリの穴なのかな?
しかし手が込んでいる、一瞬で自宅から地下室にワープした気分だ。何か眠らせてからここに運ばれたのだろう、あの門を潜った時の奇妙な感覚はそれかも知れない。
案内されるままに梯子を上り、次の階に到着。爺さんも普通に梯子をひょいひょいと上り、その次に女の子、
そして俺、上を見ないように梯子を上るのは大変だった。自分を褒めてやりたいが、少しだけ後悔した。
「今からお茶を入れるから、少し待っていてくださいね。」
部屋の中を見渡すと、風通しの良さそうな窓から日差しが降り注ぐ、小奇麗な小屋だった。内壁は白い粘土、
変わった木製の背が高いチェストがもたれ掛かり、中央には2人で使うには丁度良さそうなテーブルと椅子2組が置いてある。奥には厨房の様な場所があり、そこで女の子が何やら作業している。
「ああどうぞ座っていてください、お客様が来る事が少ないもので」
「ええ、お構いなく……」
厨房からこちらを気遣う声が聞こえる、とりあえず相変わらず謎の爺さんと一緒に席につく、輝いた目が戻っていた。
そわそわと部屋を見渡していると、女の子が戻ってきた。お茶の入ったコップとお菓子がテーブルに並べられる、
何処からか丸椅子も運び込まれ、ようやく3人揃ってテーブルを囲う。
お茶も茶菓子も見た事ない品だった、なにやらコップの底に一枚の葉っぱと小さな木の実が点々と沈められており、
琥珀色の甘いというか酸っぱいというか嗅いだことのない香りがした。
お茶菓子の方は、クッキー、かな?歪な形をした茶色い物体が皿の中に転がっていた。
お茶を恐る恐る口を付けてみると、香り同様にほのかな果実のな味が広がり、最後には葉っぱの効果であろう
チリリとした苦味で後味良くまとまっていた。
クッキーはまだ食べるべきではない、そう感じた。少し女の子方面から視線を感じたが気にしない。
「さてと、一息つけた事じゃし、話そうではないか!」
謎の爺さんから張り切っている、はてさて何を聞かされてるのか、ちょっと楽しみになってきた。
「まずは自己紹介かの、ワシはオーマ、風車小屋のオーマで通っておる。そして孫のリーベス。」
オーマから紹介されたリーベスと会釈しあう。
「私は」 あれ 「私は……」 俺は 「私は……俺は誰、だ」
名前が、思い出せない。
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