第2話 接触2

 「アレは、おぬしがやったのか?」


俺を引きずり込んだ相手が静かに、重く尋ねる


 「違いますあれは多分電池が爆発……というか貴方、達?がやったんじゃないんですか?!」


少しだけ老人の威圧感が下がった、ような気がする。さっきから何が起こっているのかさっぱり分からない。


 「お、俺は危害を加える気は無いです!いきなり引っ張ったのは貴方でしょ!?」


 「そうよお爺ちゃん、この人をこちら側に連れてきたのはお爺ちゃんじゃない!」


 少女がやっと喋ってくれた、しかも俺をフォローしてくれるらしい。意思の強そうな凛とした声で助けてくれた。


 「うむむ……確かに、突然申し訳ない、とりあえず上から退いてくれないかの」


 「いえこちらこそ、お怪我はありませんか?」 


 万力のような老人の手から解放され、お互いに謝りながら立ち上がった。とりあえず助かった、のか?さっきの威圧も無くなり、ようやくゆっくりと話せそうだ。


 「さて、いきなり引っこ抜いて悪かったの、ん……小童」


 「なっ……」


小童って……確かに体つきも顔立ちも弱そうだけど……小童って……、まあこの際無視しておこう、そんな事より大事なが沢山ある。


 「……ここは何処なんでしょうか?俺は自宅で勉強していた筈ですが、いきなり門みたいのが現れて、もしかしてドッキリですか?」


 「さっきから分からん単語をようけ使うのう、流石は別世界の住人じゃ、しかに世界が違えど人語は同じとは、驚いたのう」


 え?今なんて言ったこの人、別、世界?


 「あーやっぱりドッキリかぁ!そりゃおかしいですよね日本語ペラペラだし突然門は生えてくるはスマホは……爆発、するわ……ちょっとやり過ぎじゃないですか。」


 「スマホさっきからよく言っておるが、やはりアレの事らしいの、アレはお前が放った魔法ではないのか?」


 「魔法なんて使える訳がないでしょう!むしろ突然門が生えてくる方がよっぽど魔法だ!!」


 「だって魔法じゃもん。」


頭がおかしくなりそうだ、この仕掛け人は魔法が使える設定なのか。それにしても演出や衣装、規模が大きい。


 「貴方は、えーっと、魔法使い?ですか。んじゃ後ろの子もそうなんです?」


知らない女の子をジロジロ見るのは失礼かと思うが、この際しっかり見しておこう。

少し癖の入った栗色の髪を肩まで伸ばし、衣装は老人と同じようなフード付きのローブ、結構カワイイ。


 「え、私?ええそうよ私も魔術師!」 「まだヒヨコもいい処じゃがの」 「お爺ちゃんは黙って!」


ふむふむ、師匠と弟子って感じかな?仲良く言い合いしている。


 「なるほど、魔術師ねえ、分かりましたのでとりあえず帰っていいですか?あ、ちゃんとスマホ弁償してくださいね。」


 「いやちょっと待ってくれ長年の研究成果の一部なんじゃ待ってくれ!」


俺が門を通ろうとすると老人が縋りつく、本当に力が強い、俺と背格好は大差ないのに、熊にじゃれつかれてるみたいだ。


 「と、とりあえずお茶でもどうですか?立ち話も何ですし。」


例えドッキリの中でも、女の子にお茶に誘われるなんて生涯初めての事、余計な老人が引っ付いて居ても、断るのは勿体ないと思う。



---ここで素直に引き返してたらどうなっていただろうか、後悔しただろうか、それとも幸せだったのだろうか---

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