第2話名前のおかしなミノタウロスだって良いじゃない! ポンチ感が無くたって良いじゃない!!


 甘酒婆?


 これどこかで聞いた事ある! たしか実家の青山で小さい頃におばあちゃんから名前だけ聞いた。

 妖怪(?)の名前だったような……。

 大学に進学するために大阪に来たが、大阪でもこの名を聞いた事があるから何か縁のある妖怪なのかな?


 うん! てゆーか今そんなのどうでもいい♪


 これどうする!? 

 待ってよ待って!! 超展開すぎる!!

 まさかこれが世に蔓延る『異世界転生』というやつか!!? そうなのか!!? そうなんだな!?? 教えてください先生!!


 小説とかアニメだったらさらっと状況飲み込んでるけど、そんなこと全然ないじゃん!!

 ダメだ。引きずるよ~。お姉さん引きずるよ~。

あッ! 今はおばあちゃんか♪ アハハハ!(← ※顔は笑っていますが心は泣いています)


 本当マジでカンベン!! 

何ッでこんなッ、くっそ“#$%&‘(‘*?>!!!!(←精神が崩壊しかけている)


 でもちょっとタンマ! あれ? もしかして……。あれあれ?


 わかった!! 解決策がわかった!! 

これさえすれば、人間にも戻れて、家にも帰れる! 




 これってさ…… 寝ちゃえば良いんでしょ? (← ※本気で言ってます)




 今までのストーカーとか、頭に響いた声とか、洞窟とか、おばあちゃんになっちゃった事とかも全部忘れるためには……。


 これ寝ちゃえば良いんでしょ? (← ※本気の本気で言ってます)


 やった名案! 超名案! よし、ではさっそく!


 (@ ̄ρ ̄@)zzzzZZZZZZZZZZZZZZZZZZ・・・・・・。


 ぐーすかぴー。ぐーすかぴー。鼻提灯パチン! うん! おはよう!!


 よし顔でも洗いますか。水で顔パッシャン。さてさて悪い夢から醒めて元の丁度いいブス顔に戻ってるかなあ♪

 水面ひょこり。




 『甘酒婆 LV1 種族“妖怪”』




 ジーーザスッ!!!!!


 もうどうしようもねえ! なす術がねえ! 死にてぇッ!!


 んッ? なにか…… 音がする……。

 ドスンドスンってなんだこの音?


 この通路の奥からだ。


 テクテクテクテク。うん? アレは……。


 ウソ…… いやいや! あんな、あんな…… あんな化け物がいるの!!?

 冗談でしょ!!? ゲームとか中学生くらいまでしかやってないからもう詳しくはないけど、アイツの名前くらい知ってるわよ!!


 ミ、ミノ、ミノタウロスじゃないいいいい!!


 ど、ど、ど、ど、どうするのよ!? どうすれば!!?


 って、あれ? あのミノタウロス、こっち見てない? あれ、気のせいかな? 目が合ってるような? んんん? 


 これ詰んだ? 死んだ? 終わった?


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 ミノタウロスは叫んだ。


イイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!


「おいおい、なんだ見かけねえ顔だな? どこのファミリーのモンだ?」


 はい? あれあれ、何か普通に喋る?


「てかお前なんて種族の魔物だ? 人間じゃねえよな? “恩恵者”って訳でもねえし……」


 いや、あの、はい……。すいません、自分でも何がなんだかなんで分からないんです。はい……。


「わかんない!? ははあ、お前もしかして偶にダンジョンに現れる“変わり者”だな? だったら何にも分からんのも無理はないか…… まあここであったのも何かの縁だ。ちょっと待ってろ。『コレ』を片付けにゃならんからな……」


 はい……。それにしてもさっきからあなたの足元に転がっているそれは…… な、に。


 うん? うん!!?


「この人間を細切れにしたら、ポンゴク横丁まで送ってやるからなあ」


 人間をミンチにしとるう~~~~~~!!

 ぬはッ! なんてスプラッターの光景! 


 ちょッちょッ!! その手に持ってる斧でどうするつもりですか?

 いや、ちょっと……


 ちょっと待ってええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 どよ~~ん。


 チシブキ、イッパイ。ウデ、トブ。アタマ、コロコロ。

 ふへへ……。 ふへへへへへへへへッ!!


「大丈夫かお前? そんなんで大丈夫かよこの先? あんなの日常茶飯事だぞ?」


 ニチジョウサハンジ? 

 はいはいはいはい! 泣くよ? いいよね? そこそこの年齢だけど大泣きOKな事案だよね?


「今のは“冒険者”って言われる人間だ。ダンジョン内にいる俺たち魔物モンストールの体内にある利光石ピエトラやダンジョン内の恩恵者タリアトーレを狙ってくる人間たちだ。覚えとけよ」


 もんすと…… ぴえ…… 何? 


「まあ、詳しい事は“ポンゴク横丁”についたら全部わかっからよ。なにせ口で説明すんのがめんどくせーんだよ」


 そんな事を話す二匹はずんずんと奥に進んで行く。

 少し広いところに出た。

 何か、おかしな建造物が中央にある。


 なにコレ? 輪っかの形をした岩? 通り抜けたら良い事が起こるみたいな事なの?


「よし、ここだ潜れ。いっきに210階層のポンゴク横丁まで行ける」


 潜るたって、お兄さん(笑)。婆と牛が岩のオブジェを潜ってどうな、る……


 どぅえええええええええええええええええええええええええええええええッ!!


 ここどこ!!? あれ!? さっきまでゴツゴツした岩肌しかなかったのに……。

 あらあらあら。綺麗な街並みですこと。

 歩いてるのはやっぱり化け物だけど。

 地上に出たのか???


「ああ、ここは地上じゃないぞ。まだ“ダンジョン”の中だ。詳しい仕組みは知らねえがどこぞの奴が魔法で作ってる空だ」


 ・・・・・・・・・・・・???


 牛のお兄さん。今なんて言った? 魔法って言った!?

 今そう言ったよね? よね? 私の聞き間違いじゃあないよね?

だって今そう言ったもんね? ねッ? ねッ?


「いきなり元気になったな、お前。なんだよ当たり前だろ。魔法がなきゃ俺たちなんて冒険者に狩られるだけの存在だ」


 すると、ミノタウロスに話しかける声があった。

 スライムだ。


「よお“ムチムチポンチ”! なんだそいつは? お前のダチか?」


 うわー スライムだ。RPGみたいなデフォルメ体とはだいぶ印象が……。

 つーかクッサ!!

 こんな事を初対面の人に(というかスライムだけど)言うのは大変忍びないけど、ここからすぐに立ち去ってほしい!

 割りとマジで!


 んん? つーかなんか今変な単語が……。むちむち、ぽんち?


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 いや、牛さんの名前!!!!??

 “ムチムチポンチ”!!?


 かわいッ!! つーか似合わないwwwwwwwwwwwwwwwwww


 ムチムチ感はあるけど、ポンチ感はいずこwwwwwwwwwwwwww


 ああ…… いかいかん。この人は(というかミノタウロスだけど)私を助けてくれた親切な方だ。この方に出会わなければ、どうなっていたか……。


 失礼があってはいけない! この人は優しい。

 本当に親切だ。この…… ムチムチポンチさんは……。

クッ…… ダメだ。笑っちゃダメだ……。


「ちげーよ。ダンジョンでさっき会ったんだ。“変わり者”らしいからここまで連れてきた」


「ほほお~。あんた…… アマザケババア? 変わった名前だな。それにヨウカイなんて種族も聞かないな。初めて聞く名だ」


 いや甘酒婆が私の名前として確定なの? もっと自分で自由にできないのかな。この名前はイヤだなー。てかできるなら甘酒婆からも決別したい。どうせならエルフとかが良い!

 ジョブチェンジを希望したいです! ムチムチポンチ先生!!(← ※馬鹿にしている)


 というか、あれ? 今なんで私が甘酒婆ってわかったの?

 自己紹介とかしてないよね???


「目を凝らして、相手を見るんだ。そしたら焦点の合ったもんのステータスがわかるだろう? それだよ」


 ステータス???

 ああ! さっき水面を覗き込んだ時に見えた『甘酒婆 LV1 種族“妖怪”』という文字がそれか!!

 勉強になります! ムチムチポンチ先生!!(← ※馬鹿にしている)


「よし、着いたぞ。ここだ」


 うん? なんだここ? 




 『“変わり者”の教習、請け負います。エルフの営む“経験値更新所”』



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