甘酒婆、今日も行く。
@nabehito0816
第1話 ジャ〇アンから教わった! 眼鏡をかけた奴は虐げて良いと!
うわ、どうしよう、これ。
確かに非日常って自分でも心の中で、こう…… ちょっとは望んでたよ。
でも、これはなんというか、違うんだよな~~~。
彼女の目の前にいる男の手には包丁が握られていた。
眼鏡をかけた痩身の弱々しい印象の男には全く似つかわしくない。
包丁が似合う男は“も○みち”くらいだろうさ。
「愛してる! 愛してるんだ~~~!」なんていっぱい叫んでいるもんだから誰か歩行者が気づいてくれそうなものだが、そうもいかない。
よし大丈夫!
ここが路地裏で近くには民家もなくて、もうすっかり夜中だから周りの建物にも人の気配はない!
そんな中で変態に襲われるなんてよくある事さ!!
現代日本の闇をなめるんじゃあない。
それにこの男もなんだかプルプルと震えているし、やっぱり何だかんだで怖くて仕方がないのだろう。
うんうん。わかるよその気持ち!
私も好きな男子に告白する時はきっと緊張するもん! うんうん!(ちなみにそんな経験は私の人生で1秒たりともなかったけどね! はい、ここ笑うとこ!!)
だけど勇気を出したんだよね! 振り絞って、振り絞って、限界まで振り絞った挙句に何かがプッツンしちゃったんだよね!! うんうんうん!!!
結果的に、今現在のようなエキセントリックな告白が敢行されているのかと思うと、人の世はやっぱり人が作ってるんだと世界の巧妙さに驚くばかりですよ、お姉さんは!
よし! じゃあ本題に入ろう……。 まずはその包丁を降ろす事から始めないか? 女の子に告白するツールとして「包丁」というのはなんとも物騒じゃあないか♪
それはきっとお酒の力を借りて、女に近づく事よりもゲスいぜ?
ねっ?
えっ? イヤだ? なぜ?
君を殺して僕も死ぬ? そしていっしょに天国で一軒家を買ってそこで幸せな家庭を築こう?
いえいえ、そんな! 天国なんて今じゃ土地も馬鹿高いって聞きますよ!? いやこれホントに!
ちょっ! あの! そんなにじり寄られたら怖いんで、あんまり近づかないでくれません???
いや、これホントに!!!
えっ? 文面からして緊迫感が伝わってこない? 馬鹿おっしゃい! こちとら脂汗でギトギトですわ!
目の前の男は徐々に距離を詰めてくる。包丁に反射する月光がなんとも怪しげで、より一層不安になる。
彼女はまだ大学生になって数か月……。つまりピチピチである(えっ? これもう死語? そんな事は知りません!)。
そんなうら若き魅力に釣竿をギンギンに腫らすのも男としては当然である。
ただ……。
私の一人暮らしのアパートに無言電話とか、なんか変なカピカピのティッシュが箱詰めで送られてきたりとかあったし……。たぶんコイツの仕業なんだろうなあ~。
よし! こうなったら……。コイツぶっ倒そう♪
えっ? 警察? なにそれおいしいの?
警察に出すのはあとだ!!
まずは私の今までの苦しみの十分の一でも味あわせてやる!!
正直むかっ腹が立っているんだよねえ~~~~
無言電話は鬱陶しいし! カッピカピのティッシュとかもう見たくないし!
あぁ…… なんか、どんどん怒りが湧いてきたぁ…… フシュ~!
確かこんな時のために鞄に入れてたよね……。
タラタタッタタ~ テーザー銃~!(ネコ型ロボット風味の声)
彼女は国内では販売していないアメリカの警察官がよく使用するスタンガンを取り出した。(入手ルートはヒ・ミ・ツ❤)
よしよし! ビビってる! ガクガクと震えやがって。女を夜道で襲うなんて卑劣な奴だ!
女版ダーティー・ハリーここにあり!(ク○ント・イーストウッドさん! 見てる!? )
股間にでも当てて“ピー”にぶら下がる“ピー”の裏っかわを“ピー”して最終的に“ピー”が“ピー”をできなくしてピーピー言わせてやる!
……って、逃げるな! この卑劣漢め!
発射! ぱしゅ! ビリビリビリビリ!!!
ははッ! 他愛もない! 四つんばいになって股を抑えてやがる!
だがまだだぞ……。このまま警察に突き出してやる!
テクテクテクテク。もっと早く歩け! なに? 許してください? ふざけんじゃあないよ♪
ほおら、交番が見えてきた! お巡りさーーーん!
……ってあれ? いない? 明かりはついてるからどこか行ってるだけ? 全く、これだから警察組織の腐敗は見るに堪えない!
一般市民が奮起して一人の大ばか者を捕まえたというのに!
だが、まあいい…… 今回は許してやろう。なんたって今夜の私はすこぶる機嫌が良い!
さてさて、お巡りさんの帰りをこれから待つとして…… じゃあお前はどうしようか?
ウフフフフフ♪
ん? なんだって? もう許してください? こんな事は二度としません? 神に誓って、だと?
バぁカ野郎!
たとえアンタが神に誓おうが、マリアに祈ろうが、ブッダに願おうが、ゾロアスターに縋ろうが骨の髄まで恐怖を染み込ませてやるよォ!
これは決定事項だ! 確定だ! もう逃れることはできん! フッハハハ!!!
(あれ? なんか楽しくなってきたな♪ というか傍から見たら私が犯罪者かな?)
まあ…… そんな事どうだっていいか! うんうん! それにコイツ眼鏡だし! 眼鏡キャラは存在ごと否定しても良いって“ジャ○アン”から教わったもん! うんうんうん! よし調子出てきた!
とりあえずもう一発スタンガンを打ち込んでやろう!
案ずるな。命までは取りはしない(笑)。
ただ死ぬより辛いかもだけど❤ てへぺろ。
ぬな!? 私がサイコパス!? アンタに言われたくないわ!!!
この野郎…… こうなったら陰嚢の一つでも痺れさせて……。
「「「「「 お前、見どころあんな…… 」」」」」
は?
「「「「「 もうお前でええわ。はい、決定~ 」」」」」
なに? この頭に響く関西弁は。ちょっと待ってよ、なんか怖いよ……(ブルブル)。
「「「「「 お前は何に生まれ変わるんやろうなあ? ホンマちょっとだけ楽しみやわ…… 」」」」」
次の瞬間だった。彼女の存在が“世界”から消失したのだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パチッ! う~ん…… ここどこ?
洞窟? へッ? ウソ! もしかして――。
私誘拐された?
た、たしか…… ストーカーを交番まで連れて行って、そこで何か変な声を聞いて……。
関西弁、だったよね。
聞いたことない声だった。
男だったよね? うん! たしかそうだった!
いやいやいやいや……。
待ってよ待ってよ! なんで私を誘拐!? はっきり言って私そんな魅力的な容姿はしてないよ!?
はい? ストーカーされてたじゃんって? アハハハ!(笑) あんな酔狂な男は那由多に一人のある意味逸材!(自分で言うとものすごく寂しいな……)
とか言ってる場合じゃない! とにかくまずは警察に!
……って携帯な~~~~~い♪
鞄ごと交番に置いてきたのか。どうしよう……。
まあでも手足が縛られてないのは幸運だよね。
こうなったら自力で脱出を!
あれ? なんか歩きにくいな……
草履? なんでこんなの履いてるの?
ていうか目線がいつもより低い……。急に背が低くなった?
肩もやけに重い。というかなんか甘ったるい匂いがする。私の匂い?
というかここホントにどこ?
日本なの? こんなゴツゴツした洞窟があとどれくらい続くのかしら。
うん? あれは水溜り? 良かった! ちょうど喉乾いてたんだ!
ゴクゴク♪ ぷはー おいちー!
顔もべたべた…… うへー 洗っとこっと。
って、あれ?
この水面に映る奴はだれ? このおばあちゃんはだれ? 白髪でジブリ映画に出てくる湯婆○のような髪型。こんな人ホントにこの世の中にいるもんなの?
うん? というか、水面? 水面に映る顔の持ち主なんてたった一人じゃなくない?
あッ! そっかー。この顔私のだ! なんだなんだ、いつもの自分の顔とは全く違ったから気づかなかったー。
アハハハハハ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
うん。よし。えーとッ。まずは、うんうん。よし。お腹に力を込めて。
皆さんもご一緒に、せーの――。
なんじゃこりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
えッ!!? なにこれ!!? ふひょ~~~!!!!!
わた、わた、わたしィィィ! 顔が! 顔が! おばあちゃんになっとるやないかい! ワナワナ! ブルブル!
うん! まずは落ち着こう。って落ち着けるか~~~~~~~~い!
いやいや! やはりはまずは呼吸を整えて、状況を整理しよう! うん! まず、ようするに……。
今の私はめちゃめちゃおかしい。状況整理完了。
結局変わらんやないか~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~い!
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしい!
ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ!
んんん!? あれ…… なんか私の頭の上に…… 文字が……
水面に映る自分の顔に視線を集中させると、なんか……
『甘酒婆 LV1 種族“妖怪”』
あま、ざけ、ばばあ?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
甘酒婆あまざけばばあ、青森県や宮城県などに伝わる老婆の姿をした妖怪。
彼女がいるのはダンジョン『ナヴィア』。魔物が数多く生息する異世界の迷宮。
彼女は異世界に飛ばされ、違う生命として転生した。
彼女は甘酒婆という妖怪に転生したらしい。
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