新たな仲間?
「あなた、ここから出しなさいよ」
俺の前には、サキュバス?がいた。しかも簡単に捕まえられることができた。
「お前は何者だ?」
「私?私は魔王の一人娘のリリーよ!」
『まじか。今、自分で正体をばらしたよな?』
『ばらしましたね』
『しかも、魔王の一人娘って言ったよな?』
『言いました』
『馬鹿なのかな?』
『馬鹿でアホですね』
『シスさん。俺より辛辣じゃないですかね?』
『気のせいですよ』
うん。気のせいじゃない。
「ところで、魔王の一人娘がなんでこんなところにいるんだ?」
「実は、あなたの監視を頼まれているのよ」
『目的まで話したぞ?』
『さすがに救いようがなくなってきましたね』
『最初から、救う気なんてないだろ?』
『ありますよ』
シスさん。最初から罵倒してましたよね?
「そんなこと監視相手に言っていいのか?」
「あっ!」
『馬鹿ですね』
『やめろシス。笑いが堪えられなくなる』
「なに笑ってるんですか?」
『堪えられていないようですが?』
『うるさい』
「ごめん。それじゃ、リリーは俺の敵でいいんだな?」
「そうよ。見つかったならしょうがないわ。どこからでもかかってきなさい」
リリーは檻に入った状態でそう言った。
『シス?これは、ギャグなのか?笑ったほうがいいのか?』
『ギャグですね。盛大に笑ってください』
「わっはっはっは」
俺は、盛大に笑うことにした。
「なにが可笑しいのよ!」
「だってお前…。自分の状況を見てみろよ」
笑いながらリリーに返事する。
「あっ」
『今気が付いたみたいですね』
「ちょっと、はやくここから出しなさいよ!」
「やだ」
「はぁー?それなら、私と勝負しなさいよ!」
「いいぜ」
笑うのを止めた俺は、そう言って剣を構える。
「えっ…。ちょっと、先に檻から出しなさいよ!」
何か叫んでいるが、俺は気にせずに斬りかかった。
「ちょっと…。卑怯よ…」
剣はリリーの立っているすぐ横の地面に突き刺さっていた。
リリーはそう言いながら、膝を地面に付ける。
「それなら、ゴートさんを拘束するために、妻を殺して脅すのはどうなんだ?」
「それは…」
「どうした?何も言えないのか?」
「うぅ」
俺はリリーを問い詰めると、リリーは泣き出してしまった。
『あーあ。泣かしちゃいましたね』
「……」
今度は、俺が無言になる。
「ごめんリリー。ちょっと言い過ぎた」
そう言ったが、リリーは泣き続ける。
「お腹空いてないか?何か食べ物でもだそうか?」
「えっ」
あっ泣き止んだ。
「とりあえず、これでいいか」
そう言って俺は、カップ麺を取り出す。
「何それ?」
「あぁ、これは俺の村で作っている携行食品みたいなものだ。食べてみろ、うまいぞ」
魔法を使ってお湯を入れた後、リリーに手渡した。
「毒とか入ってないでしょうね?」
「入れるわけ無いだろ」
それから自分の分も出して、一口食べる。
「うめー。久しぶりの味だな」
やっぱり普通のラーメンもいいけど、カップ麺も最高だな。
THE日本の味って感じだ。
俺が食べているのを見て耐えられなくなったのか、リリーもカップ麺を食べ始めた。
「おいしい!」
「だろ?」
「うん、おいしいよ!…決めた!私は、少年の仲間になるわ!」
「えっ?」
『おいシス、こいついまなんていった?』
『食事につられて仲間になるって言いました』
やっぱり仲間になるって言ったよな。
「俺たちは、敵同士じゃなかったのか?」
一応確認してみる。
「敵?知らないわよそんなの。どうせ魔王のところにいたって、トマト料理しか出さないもの」
魔王曰く、『人間を捕食』しているつもりらしい。
「私…。そもそもトマトそこまで好きじゃないの。少年といれば美味しいものには不自由しなそうだしね」
『マスター?仲間にしてもいいんじゃないでしょうか?』
『そうだな、魔王の一人娘って言うくらいだし。人質としても使えるだろ』
「いいぜ!ただし…。逃げたら殺すからな」
俺はリリーに威圧をこめてそう言った。
「逃げないよ!少年と敵対しても、全く勝てる気がしないもの」
「よし、とりあえず檻から開放するか」
そう言って俺は、リリーを檻から出す。
「ふっふっふ、騙されたわね。ここで死になさい」
『斬りかかってきましたよ?』
『あぁ、すぐに裏切ったな』
リリーの剣戟を、二本指で挟んで止める。
「…はっ?」
「これは裏切りでいいんだよな?」
「…これは、肩に虫がいたから…。それを狙っただけだよ」
「うん、そうか。信じよう。…って言うと思ったか」
そのまま、リリーの短剣をへし折る。
「あぁ、私の剣が…」
「自業自得だろ。それでどうするんだ?まだ敵対していたいか?」
「だから虫が…」
「…」
「すみません。もう敵対しません」
「分かればよし。最初から素直にそう言えばよかっただろ」
「はい」
『そう言えばシス。リリーを使って魔王のところに行けないか?』
『先ほど試してみたのですが、どうやら強力な結界が魔族領に張られているらしく、こちらからは移動することができませんでした』
『強力な結界だと?』
『おそらく邪神の魔法の類かと』
『邪神って…。さすがに神を超えることはできないってことか…』
『そういうことになりますね』
「とりあえず、ゴートさんの家に戻るか…。ってリリーは、その姿どうにかならないのか?」
さすがにサキュバスの格好だと目立つからな。
「尻尾とかだったら隠すことができるよ」
そう言ってリリーは、尻尾などを隠し始めた。
「なるほど…。人間みたいにもできるんだな」
「うん。それより少年の名前…。まだ聞いてなかったんだけど…」
「あぁ、俺か。俺は、ナオヤだ」
「ナオヤ…。これからよろしくね!」
こうして新たな仲間ができたのだった。
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